知っておきたい!○○ハラ

近年では、パワハラ・セクハラだけでなく法改正により条文が新設されたマタハラや最近よく耳にするようになったパタハラ、そのほかにもモラハラ・スモハラ・テクハラなど実に多くのハラスメントが問題視されるようになってきました。
多様な人材が活躍する会社という組織においてこのような「ハラスメント」は課題の一つとして挙げられるようになり、多くの企業が対策を練っています。

1.知っておきたい○○ハラ

「パワハラ」・「セクハラ」という言葉は、ほとんどの方が一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 

・パワハラ(パワーハラスメント)
職場などで上司が自分の地位や権限を利用して部下に対していじめや嫌がらせなどの精神的苦痛を与えるような言動のことを言い、厚生労働省が平成24年に「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」を示しているハラスメントです。

 

・セクハラ(セクシャルハラスメント)
相手を不安にさせたり不快な思いをさせたりする性的な発言や行動のことを言い、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(均等法)第11条で定められているハラスメントです。

 

1-1.女性への「マタハラ」

内閣府の調査による育児のための所定労働時間の短縮措置の導入率は500人以上の事業所で99.6%であり、また女性の育児休暇取得率も72.3%と高い水準を示しています。そういった制度を利用する多くの女性に対して妊娠や出産を機に精神的・肉体的な嫌がらせや発言をする行為をマタハラ(マタニティハラスメント)といいます。
具体的な事例としては、「何日も休まれて迷惑」・「自己中」・「休めていいよね」など妊娠・出産で休んだ分の業務をカバーさせられる同僚からの嫌がらせや、「残業できないと他の人に迷惑」・「妊婦を雇う余裕はない」など妊娠を理由に退職を強要するような言動が挙げられます。

 

1-2. 男性への「パタハラ」

内閣府の調査による男性の育児休暇取得率の推移は、平成22年度で民間企業は1.38%、国家公務員は0.86%だったのが、翌年には民間企業が2.63%、国家公務員1.80%と少しではありますが、取得率が上がってきています。イクメンという言葉を耳にするようになり、このように育児休暇をとる男性社員も増えてきている中、そういった男性社員に対して理解の欠如から嫌がらせや差別的発言をする行為のことをパタハラ(パタニティハラスメント)といいます。
具体的な事例としては、「子育てのための制度利用を認めてもらえなかった」・「子育てのために制度利用を申請したら上司に“育児は母親の役割”、”育休をとればキャリアに傷がつく”などと言われた」・「子育てのための制度利用をしたら、嫌がらせをされた」などが挙げられます。

 

 2. 職場で起こりうる○○ハラ10選

① モラルハラスメント(モラハラ)
言葉や態度によって立場に関係なく精神的に追い込む行為のことです。
〈具体例〉

・孤立させる「○○には気を付けろ」
・仕事や情報を与えない「勝手なことをするな」
➣社内でいじめのような雰囲気のある部署はありませんか・・・?
➤社内でいじめのようなコミュニケーションをとっている管理職の方はいませんか・・・?

 

② ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
FacebookやTwitterなどソーシャルメディアの利用に伴い、職場の上下関係を背景に行われる精神的圧力や嫌がらせ行為のことです。
〈具体例〉

・友達申請を強いる「Facebookやっているなら友達申請ぐらいしろ」
・投稿に対する反応を強いる「投稿したら何かコメントしろよ」
➣社内で上司が部下へTwitterやFacebookなどのプライベートな投稿についての話題を持ち出している部署はありませんか・・・?
➤社内で部下や同僚のプライベートな投稿について過度に閲覧している管理職の方はいませんか・・・?

 

③ テクノロジーハラスメント(テクハラ)
パソコンやIT機器の扱いが苦手な人や操作の遅い人に対してのいじめ・嫌がらせ行為のことです。
〈具体例〉

・専門用語を多用する「こんな基本的な用語すらわからないのか」
・プレッシャーを与える「そんなに遅くちゃ仕事終わらないよ」
➣社内でパソコン業務に不慣れな部下にプレッシャーを与えるような雰囲気のある部署はありませんか・・・?
➤社内でパソコン業務の苦手な社員に対して故意に専門用語を多用している上司はいませんか・・・?

 

 ④ スメルハラスメント(スメハラ)
体臭・口臭・わきが臭・香水などの臭いによって周りの人を不快にさせるハラスメントのことです。
〈具体例〉

「隣のデスクの人の体臭がきつくて頭痛・吐き気がする」
➣社内で不快な臭いを我慢している社員はいませんか・・・?
➤社内で他の社員に不快感を与えるほど香水をつけすぎている管理職の方はいませんか・・・?

 

⑤ ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
「男らしさ・女らしさ」を求める言動のことで、画一的な基準から外れた行動・態度に対して非難する行為のことです。
〈具体例〉

・「男なら堂々としろ」「男のくせに泣くな」
・「女のくせに大食いだな」「女のくせに料理も出来ないのか」
➣社内で女性社員にお酌やお茶汲みを押し付けている部署はありませんか・・・?
➤社内で「男なら~」「女のくせに~」などの言葉を口にしている上司はいませんか・・・?

 

⑥ スモークハラスメント(スモハラ)
喫煙に関係したハラスメントのことです。
〈具体例〉

・上司などが部下に喫煙の許可を断らせにくい状況でとる
「タバコ吸っていいよな」
・非喫煙者に喫煙を強要する
「お前も吸えよ」
➣社内で受動喫煙に不快感を抱いている社員はいませんか・・・?
➤社内で非喫煙者に喫煙を強要している上司・管理職の方はいませんか・・・?

 

⑦ エイジハラスメント(エイハラ)
年齢に関わる嫌がらせや差別的言動や行為のことです。
〈具体例〉

・中高年社員をバカにする
「もう年なんですから、無理しない方が良いですよ」
・若い社員を見た目の良さの為に接待させる
「若くてキレイなんだから立っているだけでいいよ」
➣社内で若手社員が中高年社員を見下すような雰囲気がある部署はありませんか・・・・
➤社内で中高年社員をバカにするようなコミュニケーション・態度をとっている管理職の方はいませんか・・・?

 

⑧ カラオケハラスメント(カラハラ)
行きたくない、歌いたくない人を無理やり連れて行ったり歌わせたりする行為のことです。
〈具体例〉

・接待の為に強制的に連れていかれる
「接待も仕事なんだから来なさい」
・歌わないことに対して指摘をする
「契約をとるために歌の一つや二つは覚えておけ」
➣社内でカラオケに行くことが必須になっているような部署はありませんか・・・?
➤社内で同僚や部下を無理にカラオケに付き合わせている管理職の方はいませんか・・・?

 

⑨ アルコールハラスメント(アルハラ)
飲み会などアルコールに関係したハラスメントのことです。
〈具体例〉

・飲めない人に飲酒を強要する「俺の酒が飲めないのか」
・泥酔による迷惑行為「家まで送っていけ」
➣社内で若手社員が飲み会を楽しめていない部署はありませんか・・・?
➤飲み会で飲酒を強要している上司・管理職の方はいませんか・・・?

 

⑩ マリッジハラスメント(マリハラ)
独身者に対して行う軽率な発言、特に結婚に触れる言動のことです。
〈具体例〉

・結婚の予定をしつこく聞く
「まだ結婚しないの」
・独身であることをバカにした発言をする
「まだ結婚できていないのか」
➣社内で結婚の話題が多く、未婚社員が肩身の狭い思いをしている部署はありませんか・・・?
➤社内で過度に結婚の話題を持ち出す上司・管理職の方はいませんか・・・?

 

 3. 人事担当者のハラスメント認知度と対策

  • 人事担当者はどの程度ハラスメント事情を把握している・・・?
    エン人事のミカタ調査(ハラスメント対策)の結果を見ると、ハラスメント事情
    について把握している人事担当者は約6割の企業が「把握している」(4%)「だいたい把握している」(52%)ことが分かります。

 

  • 人事担当者が把握しているハラスメントとは・・・?
    圧倒的に多かったのは「パワーハラスメント」(83%)、次いで「セクシャルハラスメント」(51%)でした。近年法改定されて話題となっている「マタニティハラスメント」は2%でした。

  • この人事担当者の認知度がハラスメント対策にどう影響しているのか・・・?

ハラスメント事情を「把握している」「だいたい把握している」人事担当者のハラスメント対策
1.就業規則に規定を設ける(78%)
2.社内に相談窓口を設置(69%)
3.管理職向けの研修・講習会の実施(47%)

 

ハラスメント事情を「あまり把握していない」「把握していない」人事担当者のハラスメント対策
1.社内に相談窓口を設置(79%)
2.就業規則に規定を設ける(61%)
3.社外に相談窓口を設置(36%)

 

という結果になり、ハラスメント事情をある程度把握している人事担当者と把握していない人事担当者では実践している解決策に違いが生じていました。実際に社内で起こっているハラスメントについて人事担当者が把握している企業では、問題となっているハラスメントの種類やその原因が分かっているため、ハラスメントに対する対策についても原因を解消できるような的確な対策に取り組むことが出来ているように思われます。しかし、実際に社内で起こっているハラスメントについて人事担当者が把握していない企業では、どんな種類のハラスメントなのか、何が原因となっているのか等も不明のままなので、対策についても「相談機関を設置する」ことで止まってしまっているように思われます。

 

  しかし、社内で起こっているハラスメントを把握出来ても対応策が思いつかない・・・

 

4.  ハラスメントの起こりにくい環境を創るには・・・?

➣企業の実施しているハラスメント対策を集めてみました!

  • 株式会社 東芝
    ①「東芝グループ行動基準」改定
    →「人権の尊重」を第一項に新設
    ②ハラスメント教育
    →相談窓口担当者の研修を実施
    ③内部通報窓口を開設
    →「リスク相談ホットライン」で電子メール・電話などによる相談の受け付け
    ④「監査委員会ホットライン」開設
    →執行役社長の指揮命令を受けない監査委員会に対して直接通報できる

 

  • ソニー銀行株式会社
    ①自社の「コンプライアンス・ハンドブック」を毎日全員が携帯
    ②外部機関による相談窓口の新設
    →親会社・グループ単位の相談窓口、人事総務部・コンプライアンス部の相談窓口等多くの相談窓口を設置し、「社内に知られたくない」「親会社に知ってもらいたい」など、社員の様々なニーズへの対応
    ③「セクハラ・パワハラ・メンタルヘルスに関する実態調査」の実施

 

  • トヨタ自動車株式会社
    ①人事ワーキンググループを組織
    →人事・労働に関する各種施策の強化・見直しを実施
    ②「心身ともに健康な人づくり・職場づくり」
    →「健康チャレンジ8」を推進

5.  まとめ

まだまだ認知度が低くなかなか解決への兆しが見えないハラスメント問題ですが、こういった各企業の人事担当者の認知度を向上していくことで社内にハラスメントが起こりにくい環境を創っていくことが出来るのではないでしょうか。

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