社員に不正行為があれば、会社はすぐさま懲戒解雇ができるのか?

解雇は、使用者の一方的な意思表示による労働契約の解除です。労働者に退職する自由があるように(憲法第22条 職業選択の自由)、使用者には解雇権があります。しかし、使用者が解雇権を濫用したとされた場合にはその解雇は無効とされます。「社員に不正行為があったとき、会社は懲戒解雇ができますか?」という問い合わせは少なくありません。

今回は、その解雇について見ていきたいと思います。

1.解雇権濫用法理

民法では「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって、終了する(同法627条1項)。」とされていて、使用者側からの解雇も、所定の手続により自由になし得る旨を定めています。

しかし、最高裁判所の判例により「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」という解雇権濫用法理が確立しました(最判第2小昭50.4.25日本食塩事件等)

この解雇権濫用法理は、現在労働契約法の16条に以下のように規定されています。

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

解雇の有効性を判断するうえでは、解雇権の行使に及ぶまで、使用者に落ち度があるかないかが争点となります。

2.解雇予告

使用者が労働者を解雇しようとする場合は、30日前に予告するか、予告の代わりに30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。この場合、予告日数を平均賃金と換算することができます。なお、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は解雇予告が不要となりますが、その事由について所轄労働基準監督署長の認定が必要です。このことは、労働基準法第二十条で以下の通り規定されています。

 

(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
○2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
○3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

3.懲戒解雇の場合

たとえ「不正行為を行ったから」ということであろうとも、懲戒解雇が正当化されるわけではありません。懲戒解雇は通常、失業給付(基本手当)の受給制限を受け、退職金の全部または一部の不支給を伴うため、労働者の生活に著しい不利益をもたらします。そのため、懲戒解雇が有効とされるためには厳しい要件が必要とされています。したがって、不正行為があったからといって当然に懲戒解雇とされるわけではありません。懲戒解雇の要件は、予め就業規則に定められている必要があり、就業規則に定められていない要件を原因とする懲戒解雇は行うことができません。また、たとえ就業規則に定められていても、それが社内で周知されていない場合は就業規則の効力がないと判断され、懲戒解雇はできません。

また、懲戒解雇であっても、当然に解雇予告の手続きをせずに即時解雇できるわけではありません。通常の解雇同様、解雇予告が必要となります。解雇予告を行わずに即時解雇するには、労働基準監督署による解雇予告除外認定を受けることが必要です。(労働基準法第20条3項)

懲戒解雇は、最も重い処分だと判断されます。したがって、不正行為の内容により、懲戒解雇に値するかどうか慎重な判断が必要となります。就業規則や事由発生時の状況等を勘案し、本当に懲戒解雇が妥当なのかについて判断した上で行うべきでしょう。

 

 

4.懲戒解雇有効例

4.1 福岡高裁 平成17.9.14 福岡地裁久留米支部 平成16.12.17

久留米工業大学事件

教師が職場のパソコンで、平成10年9月から5年間に出会い系サイトに多量のメールを発信していた。私用メールは大体6割を占めて、その半分程度が勤務時間内の発信。これを知った学校は原告に事情聴取したが、上司に対し謝罪や反省を述べることもなく、学校側は原告を懲戒解雇した。

 

一審の判断

諸事情を総合勘案すると、もっとも重い懲戒解雇をもって臨むのは苛酷に過ぎるとし、解雇を無効とした。メールの内容は卑猥なものでなく、授業や就職関係の事務をおろそかにしたこともなく、実害もなかった。当時パソコンの使用規程もなかった。

 

二審の判断

被告の行為は服務規定に明確に反するものであり、被告の非違行為の程度及び被控訴人が教育者たる立場にあったことからすれば,本件懲戒解雇は誠にやむを得ないものであって これが不当に苛酷なものということもできないとして一審判決を取消。懲戒解雇は相当であるとした。

 

4.2池田高校事件 大阪地裁 平成2.8.10

教え子との男女関係を理由とする、妻子ある高校教諭に対する免職処分にかかわる裁判。

被告の行為は地方公務員法33条に規定された信用失墜行為に該当するものであり、懲戒事由に該当する原告の行為の性質、態様、影響などを考慮すると、本件処分が社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権を濫用したものと認めることはできないとして、懲戒解雇処分を有効とした。

 

5.懲戒解雇無効例

リンクシードシステム事件 東京地裁八王子支部 平成15.9.19

勤務中にインターネットによる株取引等を行っていたことが判明した事件。

明らかに規律違反だが、会社に損害が生じたとも認められていないこと。また、会社から注意を受けた後には問題とすべきアクセスがあったと認められないこと。以上二つの事情を斟酌すると、懲戒解雇処分を選択することが許されるとまではいえない、と判断されている。

 

6.まとめ

たとえ社員が会社に不利益なことをもたらしたとしても、会社はそれだけで直ちに懲戒解雇することができません。あらかじめ、解雇予告等の定められた手順・条件をクリアしなければならないのです。まず就業規則に定められた要件に該当するかどうか、その確認が第一に会社が行わなければならない手順といえるでしょう。

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