二年連続!雇用保険料率引き下げ
平成28年に引き続き、今年の4月1日より雇用保険料率の引き下げが行われています。一般の事業では、雇用保険料率は11/1,000から0.2%減の、9/1,000となりました。内訳は、労働者負担が3/1,000、雇用者負担が6/1,000となっています。
もし引き下げに対応できていないと、雇用者からの保険料の過剰徴収が発生する恐れもあります。企業によってはもう新しい料率を用いた給与計算が行われていることかと思いますが、とても大事な変化ですので、改めて雇用保険と、その料率の改定について確認してみましょう。
雇用保険とは
雇用保険とは、次のような社会保障制度です。
「労働者が失業してその所得の源泉を喪失した場合、労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合及び労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に、生活及び雇用の安定と就職の促進のために失業等給付を支給失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図るためのニ事業を実施する、雇用に関する総合的機能を有する制度です。」
参考:ハローワークHP 雇用保険制度の概要
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_summary.html
要するに、労働者の雇用の安定や促進が目的の保険制度です。失業した場合に休職中に受け取る基本手当(失業給付)が代表的ですが、育児・介護休業給付、就業促進手当等、多様な給付があります。離職したときや就業が困難になった時など、就業したいのにできない状態にある人が困ったときの支えになってくれるのが雇用保険です。
平成29年4月1日より雇用保険料改定
その雇用保険の雇用保険料率が平成29年4月1日より改定されました。平成28年に引き続き、労働者負担・事業主負担のいずれも保険料の引き下げが行われています。
この雇用保険料率は、平成29年4月1日以降に確定した賃金に対して適用されます。例えば、
15日締め25日払いの企業なら、4月15日締め、4月25日支給の給与から
末日締め翌25日払いの企業なら、4月30日締め、5月25日支給の給与から
新しい保険料率が適用されることになります。給与が確定するタイミング、つまり締め日の日付が平成29年4月1日以降なのかで判断するとよいでしょう。もうご存知の方が多いかと思われますが、もう一度、雇用保険料率の設定を見直してみてください。
雇用保険料はなぜ変わる?
さて、先述の通り、雇用保険料は今年だけでなく昨年にも引き下げが行われました。過去を遡れば、平成21年、22年、24年にも改定が行われています。
では、なぜ雇用保険料率は不定期に改定されるのでしょうか。
その理由は、社会保険や年金と異なり、雇用保険は経済状況に左右されやすいためです。
例えば社会保険は、経済状況がよくても悪くても、健康が悪くなる人は常にいるため、経済状況の影響をやや受けにくいです。それに対し雇用保険は、景気の影響で収支が大きく増減します。失業者が増えれば雇用保険による支出が増え、失業者が少なければ雇用保険による支出は減ります。しかも、社会保険料と違って雇用保険料は毎月の給与に連動しているため、給与の支払状況がダイレクトに収支に反映されやすいのです。
この収支の目安となるのが、雇用保険積立金です。雇用保険積立金とは、特別会計に関する法律第103条第3項の規定によって、厚生労働省が雇用保険事業の失業等給付費に充てるために必要な金額を積立金として積み立てているものであり、雇用保険として払うことのできるお金がどのくらい残っているか、の指標になります。平成27年度末では、その積立金額は6兆2500億円以上に上り、過去最高を記録しています。そのため、雇用保険料を引き下げても十分制度が維持できると判断された結果、雇用保険料率が二年連続引き下げとなったのだと考えられます。
参考:厚生労働省HP 雇用保険制度における積立金等について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken06/
雇用保険料率の今後
では、雇用保険料率は今後どうなっていくのでしょうか。
前述の通り、現状は雇用保険料率を引き下げても制度が維持できるという予想の下に引き下げが行われています。ですが、雇用保険料率は景気の変化に左右されやすいものです。今後の景気の変化によってはまた引き上げが行われるかもしれません。雇用保険料率は現状、年一回、年度ごとに改定されています。厚生労働省やハローワークのHP等でも告知されるためチェックしておくといいでしょう。
雇用保険料率改定にどう対応すればいいか、手続きや申請・計算などにもしご不安がおありでしたら、当HPから無料労務相談が行えますのでご気軽にご相談ください。
川合
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