退職者のデータ保管は期限が定められているのか?

当社に約20年前ほどに在籍していた方から採用応募がありました。選考を進める中で、社内の過去のデータから以前在籍していたことが判明したのですが、本人は履歴書等でその事実を申告していませんでした。その旨を本人へ確認したところ、「20年前の情報をまだ保管しているのか」「個人情報は削除していないのか」と言われてしまいました。
法律上、保管期間が定められている書類もありますが、退職者の情報について一定期間が経過した後で削除をしなければならない、というような事はあるのでしょうか?

回答

ご記載の通り、労働基準法や税法などには一定の書類について保存期間が定められています。もっとも、これらは少なくともその期間は保存しておかなければならないという保存期間の下限を定めたものですので、保存期間が経過したからといって、その後に「削除しなければならない」という義務が当然に生じるわけではありません。

今回のケースは法令で保存期間が定められている書類等の保存義務の問題ではなく、退職者に関する個人データの保有や管理の問題と考えられますので、個人情報保護法の観点から回答いたします。同法第22条に「個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。」と定められています。

この「利用する必要がなくなったとき」という点が、今回の件を考える一つのポイントとなります。この点について個人情報保護委員会のガイドラインでは、利用目的が達成され、当該目的との関係で当該データを保有する合理的な理由が存在しなくなった場合などを指すものと説明されています。

退職者に関する個人データについては、退職後の一定期間は利用する必要が生じる場面があります。例えば退職してすぐであれば、健康保険や雇用保険の喪失手続き、源泉徴収票の発行などに必要となりますし、退職のタイミングによっては次年度の年度更新や給与支払報告書等にも使用されます。また、ご本人から在職証明書の発行等を求められる場合もあります。
一方で、こうした利用の必要性がなくなったと考えられる場合には、先の条文のとおり遅滞なく消去するよう努めることが求められます。条文は「努めなければならない」という努力義務にとどまっており、消去しなかったことが直ちに違法となるという性質のものではありません。もっとも、これは保管し続けてよいという意味ではなく、利用する必要がなくなった個人データについては、消去に向けた対応を検討することが求められます。

したがって、会社としては退職者の個人データをどのような利用目的に基づいて保管しているのか、また現在も保有を継続する合理的な理由があるのかを整理し、本人などから問い合わせがあった際に説明できるようにしておくことが望ましいと言えます。なお過去の情報を保管し続けることは、情報漏えい等のリスクを伴うことにも留意が必要です。利用する必要がなくなった個人データについては、適切に整理していくことが望ましいでしょう。
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