業務中の交通事故と労災申請

業務中に交通事故(追突事故)を起こして骨折し、現在も治療中です。自分が加害者側(過失大)の場合でも労災保険は使えますか?また、労基署や病院に提出すべき書類など教えてください。

回答

ご自身の過失が大きい追突事故であっても、業務中の事故(業務災害)であれば原則として労災保険は適用されます。労災保険には自動車保険のような「過失相殺」の仕組みがないためです。
以下に、追突事故でも労災が使える理由、必要書類と提出先、法的根拠、および実務上の注意点を一括して解説します。

1. 追突事故(自分の過失)でも労災が使える理由
労災保険法第12条の2の2(給付の制限)では、労働者が「故意」または「重大な過失」によって事故を起こした場合は給付を制限すると定めています。しかし、行政通達(昭和41年12月20日 基発1297号)等により、自動車運転中の一般的な前方不注意やブレーキの踏み遅れによる追突は「重大な過失」には当たらないと判断されます(無免許、著しい酒気帯び、著しい速度超過などが重大な過失に該当します)。したがって、通常の追突事故であれば制限なく支給されます。

2. 必要書類と提出先の一覧
被災状況(受診先や休業の有無)に応じた基本書類と、交通事故特有の「第三者行為災害」に関する書類が必要です。

 〔申請内容〕     〔提出する書類(様式)〕      〔提出先〕      
■治療費の支給     (労災指定病院)様式第5号      病院の窓口      
           (療養補償給付たる療養の給付請求書)
☆労災保険法 第13条労働基準法 第75条

■治療費の精算     (労災指定外の病院)様式第7号    労働基準監督署     
            (療養補償給付たる療養の費用請求書)※領収書を添付
☆労災保険法 第13条労働基準法 第75条

■休業補償の請求    (4日以上休む場合)様式第8号     労働基準監督署     
            (休業補償給付支給請求書)
☆労災保険法 第14条労働基準法 第76条

■交通事故特有の書類   第三者行為災害届           労働基準監督署
             念書(兼同意書)                  
             交通事故証明書
☆労災保険法 第12条の4/ 労災保険法施行規則 第22条

※本来、労働者が業務中に怪我をした場合、会社(使用者)が治療費や休業補償を全額負担する義務があります(労働基準法第75条・76条)。これを国が会社に代わって給付する仕組みが労災保険です。※会社側も、労働者が被災して4日以上休業した場合は「労働者死傷病報告」(労働安全衛生規則第97条)を遅滞なく労基署へ提出する義務があります(怠ると労災隠しとして罰せられます)。

3. 「第三者行為災害届」と「示談禁止(念書)」の根拠
交通事故のように相手(第三者)がいる事故では、労災保険と自動車保険による「賠償の二重取り」を防ぐため、また国が相手方に損害賠償を請求(求償)するために、労災保険法第12条の4に基づき以下のルールが定められています。
◎第1項(求償): 国(労災)が先に治療費などを給付した場合、国は給付した金額の限度で、被災者が相手方に対して持つ損害賠償請求権を取得し、後から相手方の保険会社へ請求を行います。
◎第2項(免責): 被災者が相手方の保険会社から先に治療費や示談金を受け取った場合、国はその金額の限度で労災保険の支給を免除されます。
【最重要】勝手な示談は絶対NG労基署に相談なく相手方と「これ以上の請求はしない」と示談を成立させてしまうと、国が相手方に請求する権利(求償権)まで消滅させることになり、それ以降の労災給付が一切受けられなくなるリスクがあります。そのため「勝手に示談しません」という誓約のための「念書」の提出が必要となります。

4. 実務上の注意点:健康保険の誤使用について
交通事故の直後、病院の窓口でうっかり「健康保険証」を使ってしまった場合は、速やかに受診した病院の窓口へ連絡し、「仕事中の事故なので労災へ切り替えたい」と申し出てください。
◆法的根拠(健康保険法 第55条):健康保険法第55条において、業務上の事由または通勤による災害については「保険給付を行わない」と明確に定められており、業務災害に健康保険を使用することは法律上認められていません。
◆月を跨いでしまった場合の対応:同月内であれば病院窓口で切り替えが可能ですが、月を跨いだ場合は、一度健康保険の自己負担分(3割など)を病院に返金し、全額(10割)を立て替えた上で、労基署へ「様式第7号」を使って直接請求(精算)する手続きが必要になります。
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