管理職研修を実施しても、現場の行動が変わらない理由とは?

管理職研修を毎年実施していますが、現場でのマネジメント行動がなかなか変わりません。

 

当社では、管理職向けに1on1、部下育成、評価面談、ハラスメント防止、心理的安全性などの研修を定期的に実施しています。研修直後のアンケートでは「参考になった」「明日から実践したい」という声も多く、満足度自体は決して低くありません。

しかし、数か月経つと、現場では以前とあまり変わらない状態に戻ってしまいます。

たとえば、部下に任せると言いながら細かく口を出してしまう、1on1が単なる進捗確認で終わってしまう、評価面談で部下の納得感を十分に得られない、忙しくなると育成よりも目先の業務処理を優先してしまう、といった状況があります。

人事としては、研修内容を変えるべきなのか、フォロー施策を増やすべきなのか、管理職本人の意識の問題なのか、判断に迷っています。

管理職の行動変容を本当に促すためには、どのような視点で育成を設計すればよいのでしょうか。

回答

管理職の行動が変わらない理由は、「知識不足」だけではなく、「その人が無意識に守っている前提」にあることが少なくありません。

管理職研修を実施しても現場行動が変わりにくいというお悩みは、多くの企業で見られます。
特に、1on1、部下育成、評価面談、心理的安全性といったテーマは、知識としては理解しやすい一方で、実際の行動として定着させることが難しい領域です。

なぜなら、これらは単なる「やり方」の問題ではなく、管理職自身のものの見方、感情の扱い方、責任感の持ち方、部下との距離感が深く関係するからです。

たとえば、「部下に任せることが大切」と分かっていても、実際には任せきれない管理職がいます。その背景には、「自分が確認しないと品質が落ちる」「失敗すると自分の評価に響く」「部下に任せるより自分でやった方が早い」といった考えがあるかもしれません。

また、「1on1では傾聴が大切」と理解していても、実際にはアドバイスや指示が中心になることがあります。
そこには、「上司である自分が答えを出さなければならない」「部下の話を聴くだけでは価値を出せていない気がする」という思いが隠れている場合があります。

ここで重要なのは、管理職本人が怠けているわけでも、研修内容を理解していないわけでもない、ということです。
むしろ多くの場合、本人は真面目に責任を果たそうとしています。
ただ、その責任感が強いからこそ、結果的に部下の主体性を奪ってしまったり、対話を急ぎすぎたり、失敗を許容しにくくなったりするのです。

この点は、人事担当者にとって非常に大切な視点・ポイントです。
管理職の行動変容を促すには、「正しいマネジメント手法を教える」だけでは不十分なことがあります。
必要なのは、その人がどのような前提で部下・仕事・自分の役割を見ているのかを扱うことです。

たとえば、研修設計では次のような問いを組み込むことが有効です。

・自分は、部下を「任せられる存在」として見ているか、それとも「管理しないと不安な存在」として見ているか
・自分が手放せない仕事には、どのような不安やこだわりがあるか
・失敗を防ぐことと、部下を成長させることのバランスをどう取っているか
・部下のためと言いながら、実は自分の安心のために先回りしていないか
・自分のマネジメントが、部下の考える力を高めているか、弱めているか
こうした問いは、管理職にとって少し耳の痛いものでもあります。
しかし、責めるためではなく、自分の行動の奥にあるパターンに気づくために扱うことが重要です。

行動変容が起きるときには、多くの場合、本人の中で「見えていなかった自分の癖」が見えるようになります。
たとえば、「自分は部下のために細かく確認していると思っていたが、実は自分が不安を避けるためだったのかもしれない」と気づく。
あるいは、「良かれと思って答えを与えていたが、部下が考える機会を奪っていたのかもしれない」と気づく。
このような気づきがあると、単なるスキルの実践ではなく、関わり方そのものが変わり始めます。

そのため、管理職育成では、研修当日の学習だけでなく、職場での実践と振り返りをセットにすることが欠かせません。
たとえば、研修で学んだあとに、実際の1on1や評価面談で一つだけ行動を変えてみる。その後、「何がうまくいったか」「どの場面で元の癖が出たか」「部下の反応はどう変わったか」を振り返る。
この小さな実践と内省の繰り返しが、行動の定着につながります。

また、人事としては、管理職に完璧な変化を求めすぎないことも大切です。
マネジメント行動は、一度の研修で劇的に変わるものではありません。
特に、長年の成功体験がある管理職ほど、自分のやり方を変えるには時間がかかります。だからこそ、「研修を受けたかどうか」ではなく、「現場でどのような行動が少しずつ増えているか」を見ていく必要があります。

具体的には、次のような変化を観察するとよいでしょう。

・部下に答えを教える前に、まず考えを聞く場面が増えたか
・1on1で業務進捗だけでなく、本人の考えや感情を扱えるようになったか
・評価面談で、一方的な説明ではなく、相互理解の時間を取れているか
・部下の失敗に対して、原因追及だけでなく学習につなげる対話ができているか
・自分のマネジメントを振り返り、改善点を言語化できているか
管理職の行動変容を本当に促すためには、「知識を入れる研修」から、「自分の見方に気づき、現場で試し、振り返る育成」へと設計を変えていくことが重要です。

人事施策としては、研修、1on1、評価制度、管理職会議、サーベイ、職場での対話機会を別々に運用するのではなく、管理職が自分のマネジメントを見直し続けられる仕組みとしてつなげていくことが効果的です。(インサイトとリフレクションの組み合わせ)

管理職が変わるとは、別人になることではありません。
自分の強みを活かしながら、これまで無意識に繰り返していた関わり方に気づき、よりよい選択肢を持てるようになることです。
その積み重ねが、部下の主体性、チームの信頼関係、組織全体の学習力を高めていきます。
The following two tabs change content below.

HALZ人事メディア

人事実務の専門家集団「社会保険労務士法人HALZグループ」のwebメディア。人事制度、採用、労務、HRtech、法改正など旬の人事ニュースを掲載。実務に役立つExcelツールも無料配信中!

最新記事 by HALZ人事メディア (全て見る)

公開日: 人事制度設計 人材育成・研修

PAGE TOP ↑