若手とベテランのスピード差を埋める~業務の「難しさ×支援量」を整えて、全員が進める設計に変える~

越境学習の最初のステップとして、様々な視点の気づきと醸成および人材育成の観点から、若手とベテランの組み合わせによる「部署横断プロジェクト」を始めたのですが、若手は戸惑い、ベテランは“今までのやり方”に固執してしまいます。両者のスピードが合わず、会議も空回りしがちです。どうすればメンバー全員が前に進めるようになりますか?

回答

●「人を変える」より先に、「仕事の形」を変えることで前に進みます。
このような問題は、本人のやる気や能力の問題に見えがちですが、実務的には、まずここが原因になりやすいです。
・仕事が大きすぎて、若手が「何から手をつければいいか分からない」
・ベテランは「今までのやり方なら確実」と感じ、変える理由が見えない
・“正解”が共有されておらず、議論が感想ばかりで進まない
・支援の仕方がバラバラで、結局、上司が全部介入して、手直しして終わる
そこで有効なのが、タスク(仕事)を分解して、段階ごとに“難しさ”と“支援”を設計することです。

以下、誰でも導入しやすい形で説明します。

①まずはタスクを「5段階」に分解して”前に進む道”を作る
プロジェクトの仕事を、ざっくりでもいいので、次の5段階に分けます。
(5段が難しければ3段でもOKです)
✅タスク分解の例(5段階)
1.情報集め(材料を集める)
2.骨子づくり(章立て・結論の仮置き)
3.たたき台作成(1枚資料・ドラフト化)
4.レビュー反映(修正・整える)
5.最終化(提出版に仕上げ)

(ポイント)
・若手が止まるのは「2.骨子」と「3.たたき台」が多いです。
ここを“先に形にする段階”として、支援を厚くします。
・ベテランは「1.情報集め」や「4.レビュー反映」で力を発揮しやすいです。
ここを任せると活躍の場ができます。

②次に「品質の目安」を置く(正解を一つにするのではなく“基準”を作る)
スピード差の原因は、能力差より「目指す品質が共有されていない」ことが多いです。
そこで、各段階に“最低ライン”を置きます。
✅品質の目安(例)
・骨子(2):A4 1枚、章立て3つ、各章の要点3行
・たたき台(3):スライド3枚以内、結論→根拠→次の打ち手の順
・レビュー反映(4):「指摘→修正内容→残課題」を表で整理

(ポイント)
・「完璧」を求めない。最初は“6割で出す”ルールにする(完璧を求めると進まずに、ここで止まってしまいます)
・“NG例”も1つだけ示す(例:結論がない、話が散らかっている等)
こうすると、若手は「何を作ればいいか」が明確になり、ベテランは「基準があるなら任せられる」となります。

③人ごとに「支援の厚み」を変える(若手に厚く、ベテランは枠だけ)
同じ仕事でも、支援の仕方は揃えなくてOKです。
時間がかかりそうですが、むしろ、人に合わせて支援を変える方がプロジェクトは速いです。
✅若手に効く支援(“早めに、小さく”)
・着手2日以内に10分レビュー(実施が早いほど迷いが減る)
・まずは「骨子だけ」「図だけ」など小さな提出をさせる
・「何を聞けばいいか分からない」を防ぐため、質問テンプレを渡す
 例:「目的は?」「優先順位は?」「この資料は誰が見る?」
✅ベテランに効く支援(“枠だけ渡して任せる”、細かい口出し等は反発とやる気を削ぐ)
・目的・期限・守るべき条件だけ共有して、やり方は任せる
・途中で口を出しすぎず、中間で1回だけ合意の点検をする
 例:「ここまでの結論、ズレてないですよね?」の確認だけにする

④役割を“相互補完”にする(若手×ベテランを対立させない)
うまくいくチームは、若手とベテランを「同じことをやる競争」にしません。
“得意な役割”を混ぜて、同じ成果物に入れます。
✅役割分担(例)
・若手:情報整理、見える化(図・テンプレ・要点の箇条書き)
・ベテラン:判断の軸、リスク洗い出し、関係者の合意ポイント整理
・最終:ペアで提出(1つの成果物に両方の視点が入る)
これで、若手は安心して前に進み、ベテランは経験が活きます。
お互いに「相手が邪魔」になりにくくなります。

⑤会議を“感想の場”から“前に進む場”に変える
会議が空回りする原因は、議題が抽象的で「何を決める会議か」曖昧なことです。
✅会議の型(30分)
・5分:目的と期限、今回決めることを確認
・15分:たたき台を見て「修正点」を出す(意見ではなく具体的内容で)
・5分:決定(誰が何をいつまでに、次の提出は何か)
・5分:次回までの“最小の一歩”を確認

(ポイント)
・たたき台がない会議は原則しない(たたき台1枚でもいい)
・“次の提出物”を必ず決める(決めない会議は疲れるだけ)

⑥ミスを減らす(現場が楽になる)
・進捗は簡潔でOK(ToDo/Doing/Done)
・若手には「チェックリスト」を渡す(最初の3回だけで効果大)
・ベテランが「反対」することについては、まず“理由の確認”から入る
 例:「何が一番心配ですか?」と聞くと、建設的になります

【まとめ(ステップ)】
Step1 仕事を5段階に分ける(情報→骨子→たたき台→レビュー→最終)
Step2 各段に“最低ライン”を置く(A4一枚、3章立て等)
Step3 若手には早めの小レビューを実施(2日以内に10分)
Step4 ベテランには枠だけ渡す(目的・期限・条件だけ)
Step5 若手×ベテランのペア提出(見える化×判断軸)
Step6 会議は“たたき台前提”で次の提出を決める
Step7 最後に5分だけ振り返り(学び→次の一歩)

(追加のポイント)
① 人は「見えている世界」が違うと、同じ説明でも噛み合いません
 若手は「手順が見えない」と動けません。
 ベテランは「目的は分かるが、リスクが見える」ので慎重になります。
 だから、同じ一言「これやって」ではなく、
 ・若手には “順番と例”
 ・ベテランには “目的と守る条件”
  を出し分けると噛み合いやすくなります。
②人は“ちょうど良い難しさ”のときに伸びます
 難しすぎると固まります。簡単すぎると成長しません。
 若手には「まず骨子だけ」など、小さく分けるのがコツです。
 ベテランには「枠だけ」与えて任せる方が力が出ます。
③変化を促すときは、説得より“質問”が効きます
 ベテランが「前のやり方がいい」と言ったら、すぐ否定せず、
 ・「どこが一番良いと思いますか?」
 ・「逆に、心配な点はどこですか?」
 ・「一部だけ試すなら、どこならOKですか?」
  と聞くと、対立から“前進”に変わりやすいです。
④成長が起きるのは「やってみた後の振り返り」があるとき
 人は、やりっぱなしだと経験が積み上がりません。
 「何が起きた?」「何を学んだ?」「次は何を変える?」の3問だけでいいので、5分で振り返る習慣を入れると、チームがどんどん賢くなります。
 仕事をやるだけでは成長せず、振り返り、自己の認識、そこからの学びなどにより成長します。成長には、葛藤などのネガティブ経験がつきものですが、認知の枠組みを変えると心的抵抗感を提言することができます。
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