新任管理職が“答えを言ってしまう”問題を直す( 指示型から「問い型マネジメント」へ変える3週間トレーニング)

昇格したばかりの管理職が、つい自分で答えを言ってしまいます。「こうやって」「これはダメ」の連発で、部下が自分で考えなくなっているように感じます。

どうすれば“自分で考える部下”を育てる関わり方に変えられるでしょうか?

回答

いきなり完璧を目指さず、「3週間で少しずつ指示を“問い”に置き換える設計」にすると、現場でも続けやすくなります。
ここでは、誰でも試しやすい 3ステップ・3週間トレーニング としてご紹介します。
【1週目】
「自分はどれくらい“答えを言っているか”を見える化する」
まずは、直そうとする前に “今の自分のクセ”を知るところから 始めます。

(ステップ①)
1日3回だけ「言い切り→言い換え」を意識する
会議・1on1・日常指示の中で、次のように試します。
NG例(言い切り)・・・「この手順でやって」
言い換え例(問い)・・・「目的は○○で、期限は△△。そのうえで、どう進めるのが良さそう?」

同じく・・・
NG:「違う、それはこうして」
OK:「狙いはここ。別のやり方があるとしたら?」
「全部を変える」のではなく、1日3回だけでOK にすると始めやすく、続けやすくなります。

(ステップ②)
自分の“口癖”に気づく
1週間だけ、簡単なメモを取ってもらいます。(1と2に分けて)
1.「気づいたら答えを言っていた」場面に”正”の字をつける
2.「問いを使えた」場面にも”正”の字をつける

これだけで、
「自分は、思った以上にすぐ答えを言っているな」
「問いに言い換えると、意外と部下が話してくれる」
といった実感が生まれてきます。

【2週目】
「どこまで任せるかの“レベル”を決めて伝える」
次の段階では、「どの仕事を、どこまで任せるか」を あいまいにせず言葉にする ことが大事です。
● 任せ方の4レベル(シンプル版)
(レベル)
Lv1:やり方まで指示
(内容)
目的・手順を細かく伝える
(こんな時に)
新しい仕事/ミスが許されない場面

(レベル)
Lv2:選択肢から選んでもらう
(内容)
やり方候補を示し、部下に選ばせる
(こんな時に)
少し経験がついてきた段階

(レベル)
Lv3:部下が計画を考え、上司が確認
(内容)
目的だけ伝え、部下が進め方を提案
(こんな時)
自分で考える力を伸ばしたいとき

(レベル)
Lv4:実行を任せて、事後報告のみ
(内容)
目標と制約だけ伝え、任せる
(こんな時に)
信頼度が高く、経験も十分な場合

● 使い方の例
タスクをお願いするとき、こう伝えます。
「今回の仕事はLv2でいこうか。目的は○○で、期限は△△。やり方はA案・B案・C案が考えられるけど、どれを選ぶかと、その理由を教えて。」

このように 「任せるレベル」+「問い」 をセットで使うと、管理職も部下も、「これはどこまで自分で考えればいい仕事なのか」が分かりやすくなります。

【3週目】
「振り返りを“習慣”にして、指示から学びに変える」
最後の週は、仕事の後に必ず少しだけ振り返りを入れる 練習です。
ここで、指示で終わっていた仕事が、「学びの場」に変わります。

●5分ミニ振り返り(3つの質問だけ)
仕事がひと区切りしたタイミングで、部下にこう聞きます。
1.うまくいった点はどこ?
2.うまくいかなかった点・モヤモヤした点は?
3.次に1つだけ変えるとしたら、何を変える?

ここでも、すぐに上司が答えを言うのではなく、まずは部下に話してもらうことが大事 です。
上司は最後に一言だけ
「それはいいね」「ここも意識するともっと良くなるよ」
と補足するくらいで十分です。

■実践しやすくするための“問いリスト”
現場の管理職に渡しておくと便利な、そのまま使える「問い」です。
・「今回の仕事の目的は何だと思う?」
・「成功した状態を一言でいうと?」
・「進め方の選択肢があるとしたら?」
・「今、一番のボトルネックはどこ?」
・「今日からできる最初の一歩は?」
・「やってみて、一番の学びは何だった?」
・「次に変えてみたい点はどこ?」
上司が全部覚える必要はありません。
2〜3個だけ“自分の型”として持っておくだけでも、会話の質はかなり変わります。

「よくある不安への一言アドバイス」
・「問いなんて難しい…」
→ 「なぜ?」「どう思う?」を「具体的に」聞くだけでOKです。
・「忙しくて、そんな時間がない」
→ 1日全部を変える必要はありません。「1日3回だけ言い換え」「週1回だけ振り返り」からで十分。
・「部下がなかなか答えを言ってくれない」
→ いきなり深い質問をせず、「今日一番印象に残ったことは?」など、答えやすい問いから慣れていきましょう。

(まとめ)
新任管理職が“答えを言ってしまう”のはよくあることです。
大事なのは、
1.自分のクセを知る(1週目)
2.任せ方のレベルを決めて伝える(2週目)
3.振り返りで学びにつなげる(3週目)
という、小さなステップでの練習です。

人事としては、
・この3週間プログラムを“ミニ研修”として案内する
・「問いリスト」や「任せ方レベル表」を配布する
などのサポートをすると、現場の管理職が実践しやすくなります。

これをきっかけに、
「指示待ちの部下」から「自分で考えて動く部下」へ、少しずつシフトしていく土台が整っていきます。
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