社員の健康状態の把握はどこまでしてよいのか?

雇入れ時健康診断、定期健康診断等法律上決まっている健康診断等の結果については会社側で把握すべきだと思っておりますが、それ以外の随時の健康状態の把握というのは会社側が進んでするべき(またはしても問題ない)でしょうか。健康状態の情報は本人の個人情報であり、むやみに詮索すべきではないという意見もありますが、直近弊社では主にストレスが原因と考えられる休職や退職が多く、通常の健康診断だけでは把握できない状態についても知っておきたいと考えております。

回答

(回答注:ご連絡があった会社は労働者数が50名未満で産業医の選任や、ストレスチェックの実施の義務化からは外れています)
労働安全衛生法66条にて健康診断について定められておりますが、66条10に「心理的な負担の程度を把握するための検査等」というものが定められています。
///////////下記引用///////////
第六十六条の十 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2 事業者は、前項の規定により行う検査を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該検査を行つた医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。
///////////上記引用///////////
御社は上記の検査実施の義務対象からは外れていますが、これはしなくてよいということではなく「検査を行わなければならない」が「検査を行うよう努めなければならない」という文章に読み替えられることになります。
ですので、御社でも「心理的な負担の程度を把握するための検査等」を実施する事は可能です。なお、実施にあたっては2項に記載されている通り予め労働者から同意を得ていなければその検査結果については医師より提供してもらう事が出来ません。

上記は法定のストレスチェックについての説明ですが、ご質問の趣旨である定期健康診断等以外の健康状態の把握につきまして健康情報は個人情報として十分に注意して取り扱う必要があるという事を念頭に置き対応を考える必要があります。健康診断の結果というのは原則的に本人の同意がない限り会社側が勝手に把握する事は出来ません。また本人が同意した場合であったとしても、その情報は限られた範囲の人間のみが把握でき、その情報を用いて次の行動をとる場合であっても十分に個人に配慮した対応が求められることになります。
より具体的な対応としては産業医の選任や相談窓口の設置などが考えられます。産業医について労働者数が50名以上の規模で選任する義務が発生しますが、50名未満でも選任する事はもちろん可能です。また社内での相談窓口を設置し、本人のプライバシーを守る事や相談内容によるその後の不利益な取り扱いをしない事を明確化した上で運用する事も考えられます。

本人の同意なしには健康情報(個人情報)を取得してはならない為、法律上定められた情報以外を強制的に収集する事は出来ません。そのため、まずは本人が安心して相談できる体制や、自身の健康状態について会社に伝えても不利益を受けないという信頼関係の構築を前提とした上で、具体的な取り組みを進めることをお勧めいたします。
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公開日: 健康管理・メンタルヘルス

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