【5月8日から5類へ移行】変わるコロナへの対応

令和5年1月27日、第70回厚生科学審議会感染症部会、第101回新型コロナウイルス感染症対策本部が開催され、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を今年5月8日から、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げるとの政府方針が示されました。これにより、感染者の外出自粛や医療費の負担、マスク着用、医療機関への受診など、これまでと対策が大きく変わりますが、企業へはどのような影響が考えられるのでしょうか。

 

今回は感染症法上の位置付けが変わることで必要となるであろう企業の対応について考えていきます。

1.「5類」になると何が変わる?

法律に基づいて政府や都道府県などが取るさまざまな措置が緩和されます。主なものは下記の通りです。

  • 感染者への入院勧告⇒できない
  • 感染者や濃厚接触者の外出制限⇒できない
  • 外出自粛要請⇒できない
  • 就業制限⇒できない
  • 無症状者への適用⇒できない
  • 医療費の公費負担⇒一部自己負担(但し、当面は公費負担を継続)
  • 感染者の把握⇒一部把握(定点観測)
  • 医療機関の対応⇒一般医療機関で幅広く受診できるよう段階的に移行
  • 屋内で着用を推奨されてきたマスクの着用⇒原則自己判断

これまで「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づき、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が取られたり、飲食店への営業時間の短縮要請が出されたりしましたが、5類への引き下げに伴い、新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象ではなくなるため、緊急事態宣言などは無くなり、飲食店に対する営業時間短縮などの要請も無くなります。水際対策も原則的に無くなります。スポーツやコンサートなどにおける観客数の制限も見直され、収容定員の100%を入れた場合でもマスクをすれば大声での声援、応援が可能になります。

 

ただし、これから5月までの間に、新型コロナウイルスの性質や流行状況などが大きく変化した場合には、移行時期が見直される可能性はあります。政府は、移行前に専門家による会議を開き、予定通りに移行するかどうかを最終決定する予定です。

2.マスク着用はどう変わる?

政府は2月10日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、令和5年3月13日以降、マスクの着用は個人の主体的な選択を尊重し、原則個人の判断に委ねることとしました。ただし、高齢者など重症化リスクの高い方への感染防止対策にマスクが効果的な場面もあるとして、下記の場面では、マスクの着用を推奨しています。

  • 医療機関を受診する時
  • 高齢者など重症化リスクの高い方が多く入院・生活する医療機関や高齢者施設などへ訪問する時
  • 通勤ラッシュ時など、混雑した電車やバス等に乗車する時

また、高齢者など重症化リスクの高い方が多く入院・生活する医療機関や高齢者施設などの従事者や、飲食店、交通機関等の事業者は、感染対策や事業上の理由などによって、「利用者または従業員に勤務中のマスクの着用を求めることは許容される」としています。

 

新型コロナウイルスは、インフルエンザと同じ呼吸器感染症ですが、唾液の飛沫で主に感染が広がるインフルエンザとは異なり、飛沫に加えて、もっと微小なエアロゾル(マイクロ飛沫)で感染が拡大します。このため、マスクを正しく着用することによって、感染を防ぐ効果がかなりあることがわかっています。新型コロナウイルスの流行状況、混雑具合、感染した場合に重症化するリスク、家族等周囲に感染を広げてしまった場合のリスク、マスクによって表情がわかりにくくなり意思疎通がしにくい、息苦しい、顔の皮膚がかぶれる等、マスク着用によるメリットとデメリットのバランスを考え、今後は着用の有無を判断する必要性があるでしょう。また、本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、個人の主体的な判断が尊重されるような配慮も必要です。

3.もう感染対策はしなくていいのか?

令和5年3月13日以降、マスク着用については、行政が一律にルールとして求めるのではなく、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることが原則となりますが、その他の基本的な感染対策(三つの密の回避、人と人との距離の確保、手洗い等の手指衛生、効果的な換気)については引き続き励行を呼びかけるとしています。また、他の感染症の場合と同様に発熱等の症状がある場合や、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性となった方、同居する家族に陽性者がいる方は、重症化や後遺症を防ぐためにも、周囲に感染を広げないためにも、外出を控える等の感染症対策は必要でしょう。

 

5類に引き下げられても、新型コロナウイルスがなくなるわけではありません。強制措置を伴うような特別かつ過剰な感染予防対策はとる必要がない一方で、感染者や濃厚接触者の行動制限がなくなり自由に外出することができるので、市中感染の機会がより一層増えることが予想されます。特に、就業制限がなくなることで職場でクラスター感染し、業務に支障が出ることも危惧されています。リスクに応じて過少にならない程度の適切な感染対策は続けることが好ましいと考えられます。

4.企業がすべき対応は?

感染者への入院勧告や濃厚接触者の自宅待機などの行動制限がなくなるため、自社の従業員が感染した場合には「職域に広げないよう行動すること」を第一に、事業所内の換気、テレワークの推奨、体調不良時は出勤を控えさせる等、企業としてできることは引き続き行なっていくことが望ましいでしょう。

 

マスクの着用は今後個人の判断に委ねられることになりますが、「どこでマスクを着ける、外す」など、社内外において「どういう場面で」「どういう選択をするか」という対応策を事前に話しあっておくと良いでしょう。

 

現状、厚生労働省では、混雑時の通勤電車等の他、屋内では他人との距離が確保できて(2m以上が目安)会話をほとんど行わない場合以外は、マスクの着用を推奨しています。通勤時、社内でのデスクワーク中、昼食時、ミーティング時等、会社としての基準を早めに検討しておくことをおすすめします。また、社外での商談では他社のルールも確認しておきましょう。

 

【参考】業種別ガイドライン https://corona.go.jp/guideline/

5.まとめ

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を5類へ引き下げることで経済や社会が動き、私たちの生活が少しずつコロナ前に戻ることを期待できるのは確かですが、一方でコロナのリスクがまったく無くなったというわけではないのも事実です。後遺症のリスクや、高齢者への感染リスクも考慮して、感染の可能性を感じたら直ちに検査を受ける、医療機関を受診する等、職場・市中感染を可能な限り防ぐように意識した行動を引き続き心掛けましょう。

 

特に企業は多くの人が集まる場ですので、油断せずに今後も感染症対策に取り組んでいくことが望ましいのではないでしょうか。

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