人事担当者が注意すべき健康診断のポイントとは?

労働者が健康で働けるように、企業が従業員に健康診断を実施することは労働安全衛生法で義務付けられています。

しかし、そのような法律があるから従業員に受診を促すというのはなにか違和感を感じます。

昨今「健康経営」という言葉が広がっておりますが、この実現の為に企業が注意すべきポイントなどはありますか?

回答

定期健康診断を実施するにあたっての会社の義務について、法的観点・人事担当者観点に分けて説明したいと思います。

<法的観点>
1.定期健診の実施(労働安全衛生法第66条1項)
*定期健康診断は「常時使用する労働者」に、1年以内ごとに1回、定期的に実施するものです。
*不実施は、50万円以下の罰金に処せられます。(労働安全衛生法第120条)
*また、二次健康診断については、会社の実施義務は定めていませんが、医師の判定のもと(以下の5)、受診を勧奨することが適当としています。

2.労働者へ結果の通知(労働安全衛生法第66条2項)
*受診後、会社は健診結果を労働者へ通知します。

3.個人結果表の保存(労働安全衛生法第66条3項)
*健診結果は、健康診断個人票を作成のうえ、5年間の保管が義務付けられています。

4.労基署への報告(労働安全衛生規則第52条)
*常時50人以上の労働者を使用している会社であれば、労働基準監督署へ報告します。

5.結果について医師からの意見聴取の実施(労働安全衛生法第66条4項)
*「要所見」「要再検査」など、異常が見つかった従業者がいれば、会社はそのまま就労させてもよいか、産業医などから意見を聴取しなければなりません。
*産業医がいれば産業医から聴き取りを行うことが適当だとされていますが、労働者が50人未満の事業場については、地域産業保健センターを利用するなど、労働者の健康管理に精通している医師から意見聴取することが推奨されています。
*また、医師や保健師、衛生管理者の保健指導・受診勧奨を実施することが、企業の努力義務とされています。

6.事後措置の実施
*医師からの意見聴取をし、この就労判定で条件付きの勤務や休職の判定が出れば、会社は休職の手続きや、労働時間や業務内容の調整が必要です。

厚労省より「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」が出ていますので、併せてご確認下さい。

<人事担当者の観点>
1.<Why>健康診断の意義
*従業員の健康状態が悪いと経営上も悪い影響が出る
*社会保険加入者は非正規社員も受診対象
*労働者性のない役員は対象外(でも受診はしてもらう)
★いわゆる定期健康診断以外にも実施すべき健康診断はあります(特殊業務、深夜業務などの従事者)

2.<When>人事なら知っている前日の配慮
*遅くまで業務をしない/させないこと
*受診10時間前には飲食を済ます必要がある
*時間内でも、糖質や脂肪の多い食事は控えるべき(結果が悪くなるかも)
*水・茶はOKだが、ジュースはダメで、アメやガムも控えること
*前日に摂生や運動をしても、診断結果に好影響はない
★但し、1ヶ月前から食習慣などを見直すのは効果がでるでしょう(推奨)

3.<How much>健康診断費用を福利厚生費(人件費)として計上する
*対象者全員が受診している(案内するも結果的な未受診は許容範囲)
*常識的な受診メニューであり、従業員の健康管理を目的としている
*健康診断の費用を企業が実施機関に直接払いしている

4.<What>福利厚生費とは
*法定福利:法律で義務の社会保険(狭義の社会保険、労働保険)
*法定外福利:健診、育児支援、食堂、慶弔金、社宅、日当、サークル補助、など

5.<How>福利厚生費の該当条件
*全従業員を対象とするものであること
*支出する金額が、常識的に考えて妥当な範囲であること
*現金支給でないこと
※対象者を限定した保養施設、豪華すぎる社員旅行、海外リゾート健診などはNG
★福利厚生に該当すると損金に算入されて法人税の減額措置がなされる
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公開日: 健康管理・メンタルヘルス

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