介護離職まとめ ~国・企業の取り組みと実態~
現在の日本では高齢化が進み、平成28年度版高齢社会白書では高齢化率が26.7%となっています。国も地域包括ケアシステムや助成金、企業では『介護休暇』の導入など対策をたて介護をしながらでも働きやすい環境少しずつをつくろうとしています。アベノミクス新三本の矢では『介護離職ゼロ』をかかげていますが、実際はどうなのでしょうか。
業務上、日々ケアマネージャーにお会いする機会があるので介護離職などについて実際にいくつか質問をしてみた。
目次
■介護離職についてケアマネージャーに直接質問!
質問内容は主に3つです。「介護離職の現状」「その退職した理由」「最近の傾向」
今までケアマネージャー20人ほどにこの質問を行ったが、全員のケアマネージャーが事業所内にいるまたはいたと回答。また、ケアマネージャー歴11年のベテランは介護離職をしているご家族は年々増えてきているのを実感しているという。ニュースや新聞で介護離職が深刻であると目にするが、実際に最前線の現場では日常的に起こり始めていることだ。
そこで、実際にケアマネージャーからお聞きした話を挙げてみると…
超一流大手企業の役職を持った方で一家の大黒柱である。ある日突然親の介護が必要になってしまい、みるみる容体が悪化し毎日の介護が必要になってしまった。
退職した理由は、会社が定める有給休暇や介護休暇を全て使い果たしたが自宅での介護が間に合わず、仕事と介護の両立ができなくなり渋々退職したとのこと。
また、契約社員で働いていた若い方の企業では契約社員には介護休暇の制度がなく契約が打ち切りになったという。もちろん再就職も困難で生活保護の中で介護と家族の生活をやりくりしている人も多くない。
要支援、要介護の判定が下りた場合、国から介護保険・医療保険として一部負担してもらえる。しかし、要介護1つとっても中には1~5段階あり要介護1と要介護5では雲泥の差がある。
比べてみると…
要介護1・・・日常生活はほぼ1人でできるが部分的に介護が必要。
要介護5・・・生活全般に全面的な介護が必要で介護なしでは日常生活が送れない。
一人で生活が送れるか送れないかによって大きな差が生まれます。
要介護5の場合、訪問介護や介護施設、訪問看護をほぼ毎日使用することは可能ですが、正直それでも足りないのが現状です。訪問介護は1日の時間が限られており、在宅で介護を行う場合、それ以外の時間を家族の誰かが面倒を見なくてはならない。
ちなみに要介護・要支援の内容など詳しく書いてある国の資料はこちら
※45ページ、46ページに詳しく書いてあります
総務省の調査によると国全体で毎年10万人以上の方が両親の介護を理由に退職している。
正確には総数:10.11万人 男性:1.99万人 女性8.12万人 という統計が…。これは1年での退職者数です。
また、離職はしなくても働きながら介護を行っている人は2012年時点で300万人近くいる。
これは2012年時点のデータのため、2016年の現在ではさらに介護離職の人数は増えていること可能性がある。
■介護離職予備軍は大丈夫?
実際に介護をしながら働いている方は300万人近くいるが、実際に全員の方が仕事と介護うを両立しているとは限らない。介護を理由に退職を考えている人、転職先を探している人は少なからずいるはずだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べで介護が必要な親がいる方で、仕事と介護の両立は可能かどうか調査をすると約3人に1人が「続けられないと思う」と答えている。(平成24年度厚生労働省委託調査)
また、三菱総合研究所の調査では介護離職した人で介護を始めてから1年以内に5割近くが両立を断念しているという結果が出ているそうです。介護は何年も続く。出だしでつまずき退職するケースが多いようだ。(平成26年度「仕事家庭の両立に関する実態把握のための調査」)
■国の取り組み ~介護離職防止支援助成金~
2016年10月28日に両立支援等助成金の一つである『介護離職防止支援助成金』の案内が厚生労働省のホームページにアップロードされていたので簡単に紹介する。
【要件】
①仕事と介護の両立支援のための職場環境整備を行う。
②実際に介護に直面した労働者の「介護支援プラン」の作成・導入をする。
③介護支援プランに沿って労働者の円滑な介護休業を取得・職場復帰させた場合、または仕事と介護の両立のための介護制度を利用させた場合。
※他の細かい要件はこちら
【取り組みの手順】
①仕事と介護の両立のための職場環境整備
②介護支援プランによる介護休業の取得等の支援について明文化・周知
③対象労働者の介護支援プランの作成
④介護支援プランに沿って介護休業の取得・職場復帰、仕事と介護の両立のための介護制度の利用
【詳細】
①仕事と介護の両立のための職場環境整備
1~4の取り組みを全て行う。
1、従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握(社内アンケートの実施)
2、制度設計・見直し(介護休業関係制度(※)に係る就業規則の整備) (※)改正育児・介護休業法(H29.1.1施行)に沿った内容であることが必要です。
3、介護に直面する前の従業員への支援(人事労務担当者等による研修の実施及び介護休業関係制度の周知)
4、介護に直面した従業員への支援(相談窓口の設置及び周知)
②実際に介護に直面した労働者の「介護支援プラン」の作成・導入をする。
就業規則・内部通知などに明文化を行い、社内報などを用いて通知する。
↓参考程度にお使いください↓
(就業規則への規定例)————————————————————————-
第〇条 円滑な取得及び職場復帰支援 会社は、育児休業又は介護休業等の取得を希望する従業員に対して、円滑な取得及び職場復帰を支援するために、当該従業員ごとに育休復帰支援プラン又は介護支援プランを作成し、同プランに基づく措置を実施する。 なお、同プランに基づく措置は、業務の整理・引き継ぎに係る支援、育児休業又は介護休業中の職場に関す る情報及び資料の提供など、育児休業又は介護休業等を取得する従業員との面談により把握したニーズを合わせて定め、これを実施する。
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■企業の取り組み
①NEC
2014年,45歳以上の従業員が半数を占める日本NEC)では、1990年から介護の両立支援に取り組みを開始。
まず、介護休業の期間や頻度、短時間勤務の条件などを、利用しやすいよう徐々に改正。現在では、同一介護事由につき通算1年間まで何度でも休職が可能とする。また、短時間勤務は、無制限で利用することができます。
そして今後は経済的な援助や孤独感、情報不足の解消に取り組むべきと判断し、2010年から介護転居費用補助や介護環境整備支援金の支給を開始。また、介護支援に関するポータルサイトの運営、セミナーの開催も随時開催している。
②花王
花王は2008年から従業員の介護に関する事情を問題視。以前より介護・看護休暇がとれる制度はあったがさらに強化を推進。
まず、はじめに従業員に対してアンケートや面談を行い、介護対象者が時間面、経済面、精神面の主に3つの課題を抱えているという実態を把握。さらに2023年には社員の5人に1人が介護責任を負うようになるというシミュレーションも行う。
時間面の課題に対しては制度の充実を、経済面の問題に関しては社員共済会(花王ファミリー会)による介護支援金を、精神面の課題に関してはセミナー、情報提供、コミュニケーションをとりやすい雰囲気づくりなどを行っている。
■まとめ
①国も介護離職を課題に助成金などの取り組みを本格化
②企業も介護離職防止のため、制度の充実化、セミナーなどを開催
③介護離職予備軍にも注目をしなくてはならない
④介護の最前線に立っているケアマネージャーも介護離職を実感
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