過労死は無くなる?!過労死問題はどうやって解決する?
日本の過労死は、「karoshi」と、ローマ字表記で世界に通じる単語であるほど世界的に知られた社会問題です。
この問題が根深いのは必要悪としている風潮と、有能な人ほど過労死しやすい環境にあることなのです。
※「過労死等」とは・・・
➢業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
➢ 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
➢ 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
最近、過労死のニュースが多く出ていました。
電通社員の事件に関して、今月23日、『電通本社 夜10時に一斉消灯 過労死自殺受け』というニュースがありました(NHKニュース)。
大手広告会社の電通は、新入社員だった女性が去年、過労のため自殺した問題を受けて、24日から深夜勤務を原則として認めないことにし、夜10時に本社のビルを一斉に消灯しました。電通では、このほか労使協定で決めている残業時間の上限を来月1日以降、月70時間から65時間に引き下げるなどして、社員の労働時間を抑制していくことにしています。電通広報部は、「社員の健康維持と法令順守のために労働環境の改善に全力で取り組みます」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161024/k10010742801000.html
電通の女性新入社員が過労自殺した問題が、波紋を広げているため、企業以外政府も改善の取り組みの動きを出ているようです。
「過労死は無くなる?!」「長時間労働問題は解決できるの?!」「過労死問題はどうやって解決する?」「日本の働く環境はよくなる?!」不安はつきません。
では、政府の最新の動きを見ていきましょう。
① 過労死等防止対策白書
過労死等の現状、過労死等防止対策推進法の制定、過労死等の防止のための対策の実施状況などはご存知でしょうか? 過労死に関して、過労死等防止対策推進法(議員立法により平成26年成立・施行)に基づき、国会に報告を行う法定白書です。今回が初めての国会報告。具体的な内容を確認しましょう。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000138529.html
② 11月は「過労死等防止啓発月間」です
~過労死等防止対策推進シンポジウムや過重労働解消キャンペーンなどを実施~
厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためにシンポジウムやキャンペーンなどの取組を行います。
この月間は「過労死等防止対策推進法」に基づくもので、過労死等を防止することの重要性について国民に自覚を促し、関心と理解を深めるため、毎年11月に実施しています。
月間中は、国民への周知・啓発を目的に、全国43会場で「過労死等防止対策推進シンポジウム」を行うほか、「過重労働解消キャンペーン」として著しい過重労働や悪質な賃金不払残業などの撲滅に向けた監督指導や無料の電話相談などを行います。
悩みがある方は、ぜひ活用してください。
③ 過労死ラインは80時間
各地の労働基準監督署が脳出血や心筋梗塞(こうそく)などによる過労死を労災認定する際の基準として、厚生労働省が定める時間外労働時間です。
発症前の1~6カ月間に時間外労働が1カ月あたり約45時間を超える場合は業務と発症との関連性が徐々に強まるとされます。発症前1カ月間に約100時間、または発症前2~6カ月間に1カ月あたり約80時間を超える時間外労働があった場合は「業務と発症との関連性が強い」としています。(From 朝日新聞掲載「キーワード」解説)
長時間労働により、従業員が過労死した場合、使用者は、損害賠償責任を負うリスクがあります。これは、使用者は、従業員との関係で、安全配慮義務を負っているからです。
この安全配慮義務について、労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定しています。
長時間労働による従業員の過労死について、使用者はこの規定にもとづき、損害賠償の責任を負うことになります。
すなわち、過労死ラインである月80時間以上の残業が認められながら、その状態を放置し、その結果、万が一、その従業員が過労死してしまった場合、使用者は損害賠償の責任を免れません。
④ 36協定
そもそも、従業員を残業させるには「サブロク協定」を結ばなくてはなりません。これは、労働基準法36条に記載されている「残業をさせる場合には、労働組合等と協定を結ばなくてはならない」という内容に沿った協定です。36協定とは、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。
会社が法定労働時間以上の残業や法定休日出勤を従業員に課す場合には、本来は労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定書」を締結し、別途「36協定届」を労働基準監督署に届け出ることになっています。(ただし、この「36協定届」に労働者代表の署名又は押印がある場合は協定書と届出書を兼ねることができます。)
しかも、就業規則の作成と届け出は常時10人以上の労働者を使用する使用者と規定されているのに対し、36協定は労働者がたった1人でも法定の労働時間を超えて労働(法定時間外労働)させる場合、又は、法定の休日に労働(法定休日労働)させる場合には、届け出が必要となります。その意味では全ての企業に影響する協定と言うことができます。
もしこの「36協定届」を労働基準監督署に届け出ずに従業員に時間外労働をさせた場合は、労働基準法違反となります。
まとめ
いかがでしょうか。
近年、日本において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等に関する調査研究等について定めることにより、過労死等の防止のための対策を推進し、もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的としています。
また、政府は、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するため、過労死等の防止のための対策に関する大綱を定めることとされています。
厚生労働省としても、過労死等の防止のための対策に関する大綱(平成27年7月24日閣議決定)に即して、過労死等がなく、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に向けて、各対策に取り組んでまいります。
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