【2014年10月】A4一枚でわかる法改正・人事労務情報 ~「過労死等防止対策推進法が施行」について補足資料~


労務情報・法改正情報(2014年10月)

「過労死等防止対策推進法が施行」の補足資料

 

O社事件(過労死事案における時間外労働時間数の認定)

労働者が過重な労働により心臓性突然死をしたのは、使用者の安全配慮義務違反によるものとして、会社に損害賠償請求が行われた事案で、賃金不払い残業が構造的に行われていたことを背景として、IDカードの打刻により把握される時間を上回る時間外労働時間数が認定された事例。

 

安全配慮義務違反の有無

安全配慮義務とは、労働契約法の第5条にて「使用者は、労働契約に伴い」「使用者は労働者の生命および健康などを危険から保護するよう配慮しなければならない」との明記があり、雇用契約に付随する義務の一つとされています。義務違反の有無をめぐっては、民事訴訟にて、当該行為が不法行為にあたるのかどうか個別具体的に検討されている。O社事件では、「賃金不払い残業の原因について解明して、過重になっていた業務を軽減して適正化するなどの対策をとることなく、単に退勤時刻後残業等の賃金不払い残業の規制を強化しただけであった」との判断理由が挙げられた。

 

義務違反および損害賠償請求の基準について近年の判決傾向

労災認定に関する厚生労働省通達「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平13.12.12基発1063)で示された基準を超えた過重労働が認められれば、事実上、自動的に安全配慮義務違反および損害賠償請求違反が肯定される傾向にある。

したがって、労働者の労働時間管理、さらに時間外労働時間数についての労使双方の認識は、損害賠償責任を問われた会社にとって、結果を左右する最も重要な要素であるということができる。

平13.12.12基発1063については、下記URLから確認できます。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html

 

抜粋「過重労働による労働者の健康障害防止」に対して事業主が講ずべき措置

法定時間外・休日労働が月100時間を超えた場合、又は2~6ヶ月を平均して月80時間を超えた場合において、その労働者から疲労蓄積若しくは体調不良の申出が有ったときは、産業医の面接指導を実施する法的義務が発生します。

また、産業医の面接指導の結果を5年間保存し、産業医の指導に基づき就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の必要な措置を講じなければなりません。

(これらの措置を怠っていた場合は、労働者の脳血管疾患・虚血性心疾患発症に対し、事業主の債務不履行責任が問われる可能性が非常に高くなります。)

 

御社の時間外労働時間の集計データについて

別添の資料を御覧ください。

配偶者控除縮小は16年度以降に先送り(平成26年9月30日)

政府・与党は、専業主婦らがいる世帯の所得税と個人住民税の負担を軽くする「配偶者控除」の縮小を、今年の年末に議論する2015年度税制改正には盛り込まず、16年度以降の課題として先送りする方針を固めた。今年3月、政府は専業主婦がいる世帯の所得税を軽減する「配偶者控除」の見直しを検討する考えを示していた。自民党政権の成長戦略の柱として「女性の活用」を掲げており、専業主婦に有利な制度を改めることにより、働く女性を税制面から支援するねらいがある。

 

有給消化の義務化を検討へ(平成26年10月3日)

厚生労働省は、早ければ2016年春の施行を目指すとし、中小を含む全企業に対して社員の有給休暇の消化を義務付ける検討に入った。未消化の社員が多い企業を罰則する規定を設けることで、欧州諸国に比べて圧倒的に低い日本の有給取得率を向上させるねらいがある。2020年には、直近の統計で47%だった取得率を70%へ引き上げる目標。

 

通勤手当の非課税限度額の引き上げ(平成26年10月20日)

2014年4月以後に支払われるべき、マイカー通勤者に対する通勤手当で、かつその額が従前の非課税限度額を超えている通勤手当が対象となる。既に支払われた通勤手当については、本年の年末調整か確定申告にて精算することになるが、前職分の源泉徴収票の再交付、源泉徴収簿への追加記載など、会社の人事担当者の負担が増えることが見込まれる。

 

妊娠をきっかけとした合意ない降格を無効とする最高裁判決(平成26年10月24日)

最高裁にて、「本人自身の意思に基づく合意か、業務上の必要性について特段の事情がある場合意外は違法で無効」との判決が初めて下された。妊娠をきっかけに配置転換を希望したところ、異動後に管理職の副主任を外された事案について男女雇用機会均等法に違反するかどうかが争われていた。これまで、同法は妊娠や出産、産休取得などを理由にした解雇の禁止に加え、2006年の改正で、降格や減給、配置転換などの不利益な取り扱いについて禁じている。

 

過労死等防止対策推進法が施行(平成26年11月1日)

過労死防止法は、防止対策を計画的に進める大綱づくりを国に義務づけている。遺族と労使の代表者、専門家で作る推進協議会から意見を聴いて案を作る必要があり、厚生労働省は近く推進協議会のメンバーの人選を固め、年内にも初会合を開く方針。2015年6月までの策定を目指す。

また、同法では、勤労感謝の日に合わせて11月を過労死防止啓発月間と定め、11月1日には1日限定で全国一斉に「過重労働解消相談ダイヤル」を設置するとした。9月1日には「労働条件相談ほっとライン」を設置していて、厚生労働省は長時間労働防止の対策を強化していくとしている。

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