障がい者雇用をする時に、注意したい点とは?
近年ではパラリンピックなど、障がい者が社会で活躍する場面も増えてきているように思われますが、いざ雇用する際にはどういった受け入れ態勢が必要なのか。
障がい者雇用をする前に知っておきたい点、雇用した後に気を付けたい点をご紹介します。
目次
障害者雇用の採用対象は?
まず、障がい者雇用は具体的に誰を対象者としているのかという点についてご説明します。これは明確に法令指定されており、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所持者のみであるとされています。
ただし、障害者雇用に関する助成金については、手帳を持たない統合失調症、そううつ病(そう病、うつ病を含む)、てんかんの方も対象となります。
障がい者雇用率の計算方法
1、既定の人数に達しないと罰則金も
一定数以上の労働者を雇用している雇用主は、障害者雇用促進法43条第1項により既定数以上の対象障がい者である労働者を雇用しなくてはなりません。もし既定の人数に達しない場合は100人を超える企業を対象に、不足人数1人につき月額5万円の罰則金が課されます。
2、障がい者雇用率の計算式
では、どれくらいの人数を雇用すればいいのか、これは同条同項で「雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数」以上と指定されています。図で表すと以下の通りになります。
(出典)厚生労働省 障害者雇用率制度の概要 2019年11月現在
図の障がい者雇用率は現在の雇用率になるので、一般企業の場合はこの数字が2.2(%)以上であれば問題ないということになります。ただし、法令上で定められた障がい者雇用率は少なくとも5年毎に変更されますので注意しましょう。
3、みなし算定に注意
また、この計算では全ての対象障がい者を1人と換算出来るわけではなく、労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者については原則0.5人と数えなくてはなりません。逆に、重度の身体障がい者及び知的障がい者については2人と換算します。
これらの点に注意して算出するようにしましょう。
障がい者雇用の助成金
法定雇用率未達成企業から徴収された納付金は、法定雇用率を達成している企業に対しての調整金、報奨金として支給されます。
1、作業施設・設備の設置に対する手当
支給される場合は大きく分けて二通りで、一つ目が障がい者を雇い入れる企業が、作業施設・設備の設置等について一時に多額の費用の負担を余儀なくされる時、その費用に対し助成金が支給されます。
2、障がい者雇用率超過に対する手当
二つ目が雇用している障がい者の数が雇用率を超過する場合で、超過一人につき常用労働者が100人以下で障害者を4%または6人を超える人数採用する事業主には月額2万1千円、常用労働者が100人を超える会社の事業主については月額2万7千円が支給されます。
雇用にあたって求められる提出書類・制度
1、雇用状況の報告
毎年雇用状況についてハローワークへ報告が必要です。報告用紙については対象の事業所(45.5人以上の規模)に送付されますので、そちらを指定日までに送付すれば大丈夫です。また、HP上から電子申請も可能になります。
2、従業員研修の実施
障害者を雇用する事業主は、障害者虐待を防止するため、障害者虐待防止法第21条に基づいて労働者に対する研修の実施なくてはなりません。また、障害者や家族からの苦情処理体制の整備などの措置を講ずることが必要です。
3、障がい者職業生活相談員の選任
障がい者を5人以上雇用する事業所では障害者雇用促進法79条より資格を持った障がい者職業生活相談員を選任し、障害のある従業員の職業生活に関する相談・指導を行わせなければなりません。
4、解雇の届け出
障害者を解雇する場合にはハローワークに対して届出が必要となります。自主退職の場合は解雇に当たらないため不要です。
求められる職場環境とは
1、 設備
どのような設備が必要になるのか、という点については個々の障がいの程度などによって様々であるというのが実状です。大事なのは先入観で決めつけるのではなく、相手にどんな設備や配慮が必要なのかをきちんと聞いてから設置するということです。設置後も実際に利用してみてどうであったか意見を聞く機会を設け、より良い環境を提供できるよう努めましょう。
また、その為には相談、指導が出来る環境づくりが重要になります。健康面や勤務時間への配慮等話し合える状況を用意しましょう。
2、 仕事
相手の適性や希望等も勘案した上で、その能力に応じ、長期的雇用を見据えた待遇をしましょう。具体的な業務としては文献調査、データ等の入力・作成・更新、資料送付などが比較的切り出しやすい業務と言われています。しかしながら、その他の分野で活躍することが出来ない訳では勿論ありませんので、個人の得意不得意を見極めた配置が必要になります。場合によっては必要な期間の教育訓練等を行い、職場への定着を図りましょう。
3、他の従業員へ向けて
障がい者雇用の従業員を受けいれるに際して、他の従業員の多くは戸惑いを感じることでしょう。障がいというのは十人十色ですから、殆どの場合その障がいを持つ方と接するのは未経験です。ですからまずは、職場全体が障がい及び障がい者についての理解や認識を深めることが大切です。知識を深めることでお互いに歩み寄るきっかけになり、共に働く上で有用な関係性を築けるのではないでしょうか。
障がい者雇用に関する相談、支援なら
障がい者雇用をするにあたって悩みがある場合には、ハローワークや独立高齢・障害・求職者雇用支援機構に相談することをお勧めします。これらの機関では常に障がい者雇用に対する支援を行っており、雇用成立後の様々な問題についても援助してくれます。
まとめ
近年対象者が増加したことにより、法定雇用率の引き上げが行われた障がい者雇用。人数が増えたからと言って十把一絡げに扱うのではく、雇う相手に合わせた配慮が必要であることを忘れてはいけないと、ここでご確認頂ければ幸いです。
skay
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