内定者フォローだけでは不十分?!選考中にできる辞退防止3つのポイント

 

2018年卒採用において、内定出しと内定辞退のピークは6月であるといわれています。5月半ばを過ぎ、選考辞退・内定辞退が徐々に増えはじめました。

 

昨年度にもまして辞退防止のための内定者フォローが大事であるといわれています。しかし、5月半ば時点で辞退が増え始めている現状を考えると、内定を出した後だけのフォローでは不十分であると感じている方もたくさんいらっしゃると思います。

 

今回は、新卒採用の内定辞退・選考辞退の状況をまとめた上で、「選考中」にできる辞退防止対策についてまとめていきます。

 

 

■ 内定辞退の現状

 

 ・求人倍率:従業員300人未満では6.45倍

 

◇ 2016年卒 大卒求人倍率 1.73倍

◇ 2017年卒 大卒求人倍率 1.74倍

◇ 2018年卒 大学求人倍率 1.78倍

◆ 2018年卒 大学求人倍率(従業員300人未満) 6.45倍

 

株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所による「大卒求人倍率調査」によると、ここ数年、大卒求人倍率は上昇を続けており、来春2018年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.78倍と、前年の1.74倍とほぼ同水準で推移しています。

 

しかし、従業員規模別の求人倍率を見ると、従業員300人未満では6.45倍と、前年の4.16倍から+2.29ポイント上昇しています。また、従業員企業5000人以上の企業の求人倍率は0.39倍と、前年の0.59倍から-0.20ポイント低下したため、従業員規模間の倍率差はさらに拡大しています。

 

当たり前ではありますが、求人倍率が高まり、学生のもつ内定企業数が増えれば増えるほど辞退の確立は高まります。採用する側の企業、特に中小企業にとっては厳しい状況です・・・。 母集団形成のための集客はもちろんですが、選考に進めた学生や内定者を逃さないための手立ても非常に重要になります。

 

 ・内定辞退率:3割以上とこたえた企業が半数以上

 

株式会社マイナビによる「2017年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」では、業界ごとの内定辞退率が掲示されています。業界ごとに内定辞退率は異なりますが、「内定辞退率が3割以上」とこたえた企業は、全業界の半数に上ります。小売業界にいたっては約7割の企業が「内定辞退率が3割以上」と答えています。辞退率2

 

  ・増加する選考途中の辞退

また、同調査では、昨年度と比較したデータも掲載されています。

内々定後の辞退率は「前年より高かった」が31.4%(対前年14.8pt増)、「前年より低かった」が29.7%(対前年9.8pt増)で、「高かった」と「低かった」がほぼ同じ程度だったことに対し、選考途中の辞退率は、前年に引き続き「高かった」が「低かった」を上回っています。昨年度は、大手企業の選考活動開始が8月から6月になったことで、企業の面接実施時期が集中し、選考途中の辞退の増加に繋がったと考えられます。

 

【 内々定後の辞退率 】 =同水準

◇ 昨年よりも高かった  31.4%

◇ 昨年よりも低かった  29.7%

 

【 選考途中の辞退率 】 =「高かった」が上回る

◇ 昨年よりも高かった  28.4%

◇ 昨年よりも低かった  19.0%

 

これらのデータを見ると、内定後の内定辞退防止フォローだけではなく、選考途中における辞退防止のための対策が必要であることが予想されます。

 

 ・選考では「学生の合否判断」だけではなく「入社意欲の醸成」も求められる

 

昨年度より、新卒採用期間が短縮化され、学生の側からすると企業研究の期間が短くなりました。さらに、短期間で決めなければならないという不安もあるため、熟慮する前に就職サイトでさっと企業情報に目を通してエントリーしてしまい、事前に入社意志を高めことができないまま選考が始まってしまいます。さらに採用期間が短期化されたことにより、説明会や面接の日程が重なるという事態も多発。志望度の低い会社は、その時点で選考を辞退されてしまいます。

 

このような事態をふまえると、内定者を逃さないための内定者フォローだけではなく、

 

選考途中で辞退を防止する対策

選考を通して学生の入社意欲を醸成するような対策

 

が必要であることがわかります。

 

 

■ 選考中にできる辞退防止のための3つのポイント

では、選考中にどのような対策を実施すれば辞退を防げるのでしょうか。

 

【1】 大前提:学生と誠実に向き合いましょう

学生が選考中に辞退を考える要因としては、選考のダブルブッキングや他社内定のほかに、「選考時に企業に対して不信感を抱く」というパターンがあります。

 

 

エン・ジャパン株式会社が「面接後の辞退理由」を調査・集計していました。

 

【 面接後の辞退理由 2016 】

1位 面接で詳しく知った仕事内容が希望と合わなかった(47%)

2位 面接で詳しく知った勤務地や給与等の条件が希望と合わなかった(42%)

3位 面接での説明内容と求人情報に齟齬があった(34%)

3位 社内の雰囲気がよくないと感じた(34%)

3位 面接官の行動や態度が悪かった(34%)

 

「仕事内容や条件が希望と合わなかった」というのは仕方がない部分がありますが、社員や社内の雰囲気や求人情報の正確性は、応募者の不信感に繋がることが伺えます。

 

「面接官の態度が横柄だった」「話を聞いている素振りが見られず不快だった」など、応募者と顔を合わせる面接担当者や人事採用担当者の印象が悪いと、「一緒に働きたくない」と不信感を抱かれてしまいます。また、求人票に表記されている内容と選考方法や採用条件などが違う、そのことに対して説明がない、ということも不満に繋がります。さらに、選考時間が端的に短いにも関わらず内定を出し、さらにその後のフォローも弱いと、応募者に「自分ではなく誰でもよかったのではないか」という考えを抱かせてしまいます。

 

売り手市場だからといって学生のご機嫌をとる必要はありません。ただ、学生側は社会人1社目の企業を真剣に選びにきますので、そういった学生に対しては誠実に対応しましょう。

 

【2】 面接ごとにフィードバックを行う

 

学生側からすると、用意してきた内容が企業側にどのように受け止めれたか、良かったのか・悪かったのかは非常に気になるところです。

 

「自己PRは、もっと△△な伝え方をすると良くなるよ」

「あなたの○○な部分は、業務の□□の場面で活かせるよ!」

 

というような面接そのものや面接で学生が話した内容に対してフィードバックを行う事によって、「1人1人と向き合ってくれる」「人を大切にしている会社」というような印象に繋がります。

 

また、面接そのものに対するフィードバックだけではなく、「あなたの○○な部分は自社のこういうところで発揮できそうだ」といったような、入社後のビジョンに繋げるようなフィードバックをすると、その会社に対する入社意欲が増します。

 

いくつも内定をもらっている内定者に対しては、採用時の評価をフィードバックするだけでなく、内定者が描く将来のビジョンを聞き、そのビジョンを実現するために克服するべき弱点をアドバイスして、入社後のイメージを描けるようなフィードバックを行うとより入社意欲が高まります。

 

【3】 最終選考前に座談会を実施

 

内定者を集めて懇親会を開催し社員を引き合わせる、といったような内定者フォローを実施している企業は多いと思います。

 

この「社員と引き合わせる」という工程を選考途中に取り入れる企業が増えています。

内定者フォローが多く実施されるのは6月。選考中に実施すれば、その分早く学生と社員との接点をつくることができ、選考中の時点で「社員が親身になって話を聞いてくれる」という印象や会社への親近感をもってもらうことができます。

 

さらに座談会を開催することによって、以下2点のような効果も期待できます。

 

 ① 学生の不安や疑問の解消

・働き始めることそのものに対する「社会人生活に対する不安」
・入社後に先輩や同僚といい関係を築けるかという「人間関係に対する不安」
・仕事内容や将来の人生設計に関する「仕事・キャリアに対する不安」
など、就職を前にした学生は、様々な悩み・不安を抱えています。そういった不安や疑問に気づき、こちらから進んで答えてあげることが重要です。こういった不安や疑問を取り除くことは、応募者がその後悩み、入社を躊躇し、結果辞退するのを防ぐことができます。

そのためには、応募者が話しやすく、質問しやすい雰囲気づくり を意識して作り出す必要があります。緊張しやすい面接の場では学生の本音を引き出すことは難しいので、リラックスした雰囲気の中で話すことができる座談会を選考途中に実施することは有効であるといえます。

 

 ② 魅力的な社員との交流によるモチベーションUP

具体的な働くイメージを持ってもらうことが重要になりますが、そのためには、実際に働いている社員の話を聞くことが有効です。

 

さらに、自社で働くことに誇りをもつ、生き生きとした社員が座談会のスピーカーを担当することによって、「こんな社会人になりたい」「頑張ればこんな風に成長できるんだ」と感じてもらうことができます。そのようなモデルケースとなるような社員との交流の場を設けることによって、自社で働きたいという応募者のモチベーションを上げることに繋がるのです。

 

逆に、人選を間違え学生のモチベーションを下げてしまうこともあります。やる気に満ち溢れている学生に、“生活感が漂う社員と引き合わせても逆効果になります。座談会などの現場の社員に協力をしてもらう際には、学生が今どんな状況で、誰からどんな話を聞きたいのかを把握した上で、会社のどんなところをアピールしながら交流をしてほしいのかを事前に伝える等の準備をおすすめします。

 

 

■ まとめ

選考途中の学生に対する辞退防止についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

選考途中の辞退を防ぐためには、応募者にとって「気持の良い対応」を積み重ねていくことが重要です。その応募者対応が、好印象であればあるほど、会社の志望度は高まっていきます。そして、内定後もこうした「気持の良い対応」を続けていけるかどうかが、内定者の心を掴み続けられるかにかかっています。

 

また、「人事の方が良い人だった」「社員の方が親身になって話をきいてくれた」等の声も学生からよく聞きます。

 

他社内定や希望条件と合わない等の理由による辞退はどうすることもできませんが、

そういった学生との関わりによる辞退防止・入社意志醸成は改善しやすい側面ですので、

実践してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

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