リハビリ出勤で傷病手当金はどうなる?

このたび休職していた従業員がリハビリを兼ねて出勤することになりました。この場合、傷病手当金の請求についてはどのような取り扱いとなりますでしょうか?

回答

 休職中の従業員がリハビリ出勤(慣らし出勤)を行う場合、傷病手当金の請求取り扱いは「労務提供(仕事)の有無」「賃金の支払状況」「主治医の指示の有無」によって異なります。
 実務上の取り扱いと法的根拠について、分かりやすく整理して解説します。

1. リハビリ出勤時の傷病手当金の取り扱い
〈傷病手当金の受給可否は、出勤の態様によって大きく3つのパターンに分かれます。〉
〖リハビリ出勤の態様・賃金の支払い状況・傷病手当金の取り扱い〗
① 労務の提供なし(通勤訓練、見学、自習、模擬作業など)
・賃金支払なし➡傷病手当金全額支給(継続受給可能)本来の業務を行っておらず、単なる「復職準
        備(トレー二ング)」とみなされるため。
② 労務の提供あり(軽作業・短時間など)※傷病手当金 > 支給賃金
・賃金支払あり(一部)➡差額支給ー傷病手当金の標準的な日額から、支払われた賃金(日額換算)を
           差し引いた額が支給されます。
③ 労務の提供あり(軽作業・短時間など)※傷病手当金 ≤ 支給賃金
・賃金支払あり(全額)➡不支給(該当日の支給停止)出勤日(リハビリ日)の分は傷病手当金が出ま
           せん(※出勤していない休業日分は継続支給)。

【注意点】:労務提供があるのに無給の場合短時間であっても実際に会社の指揮命令下で業務を行っている場合、賃金の有無にかかわらず「労務可能(働ける状態)」と判断され、出勤日分が不支給となるケースがあります。

2. 法的根拠
① 健康保険法 第99条第1項(支給要件:労務不能)
■条文要旨:被保険者が療養のため「労務に服することができない」ときに、その期間に対して傷病手当金を支給する。
■解説:傷病手当金の根本的な要件は「本来の業務ができない状態(労務不能)」であることです。業務を行える状態(労務可能)になれば、原則として支給要件を満たさなくなります。
② 健康保険法 第108条第1項(報酬との調整)
■条文要旨:傷病手当金の支給期間中に報酬(給与)を受けることができる場合は、傷病手当金を支給しない。ただし、その報酬の額が傷病手当金の額より少ないときは、その差額を支給する。
■解説:リハビリ勤務で短時間働き、一部賃金が発生した場合は、この規定に基づき傷病手当金と賃金の差額が支給されます。
③ 健康保険法 第119条(給付の制限:療養指示に従う義務)
■条文要旨:正当な理由なしに療養に関する指示に従わないときは、保険給付の全部または一部を行わないことができる。
■解説:主治医(療養担当者)の許可や指示がないまま勝手にリハビリ出勤をした場合、医師の療養指示に従っていないとみなされ、傷病手当金の給付が制限されるリスクがあります。

3. 実務・申請上の注意点
◎主治医の意見書(申請書裏面)の記載
 申請書の「療養担当者が記入するページ」に、医師がリハビリ出勤を認めた理由(症状の経過等)や、具体的な日付・頻度を明記してもらう必要があります。
◎事業主記入欄への正確な記載
 リハビリ出勤をした日付、勤務時間、および支払った賃金(通勤手当等を含む)の有無・金額を正確に記載してください。
◎事前に保険者(協会けんぽ/健保組合)へ確認
 「どのような内容なら労務提供とみなされるか」という判定基準は、加入している保険者(協会けんぽ、または各健康保険組合)によって運用の細部が異なる場合があります。トラブルを防ぐため、リハビリ出勤を開始する前に加入先の保険者へ運用ルールを一度確認しておくことを強く推奨します。
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