2025年10月創設の「教育訓練休暇給付金」の対象となる要件は

従業員の「リスキリング休暇」を支援するという、2025年10月創設の「教育訓練休暇給付金」の対象となる要件と、企業が整備すべき規程はどんなことがありますか?

回答

A. 企業は、労働者のキャリア形成を支援するための「教育訓練休暇制度」を新設し、従業員が給付金を活用しやすい環境を整備する必要があります。

2025年10月1日より、雇用保険法が改正され、労働者が自発的なスキルアップ(リスキリング)のために長期休暇を取得する際の生活を支援する「教育訓練休暇給付金」が創設されました。

これは、従業員が一時的に仕事から離れて教育訓練に専念することを促す国の施策であり、企業はこれに対応するための社内制度の整備が急務です。

1. 給付金の対象となる要件(従業員側)
この給付金は、雇用保険の被保険者である従業員に対して支給されます。

・被保険者期間: 雇用保険の被保険者期間が5年以上あること。
・教育訓練の期間: 企業が設けた教育訓練休暇(無給)を取得し、その期間が継続して30日以上であること。
・教育訓練の実施: 厚生労働大臣が指定する専門的・実践的な教育訓練を受けていること。

給付額は、原則として離職時の基本手当と同額(賃金日額の約50〜80%)が支給され、給付日数は被保険者期間に応じて90日、120日、または150日となります。

2. 企業が整備すべき「教育訓練休暇制度」の規程
給付金の申請・活用には、企業が就業規則等で「教育訓練休暇制度」を明確に設けていることが前提となります。
以下の点を規程に盛り込む必要があります。

■整備すべき項目と規程のポイント
・制度の目的:
従業員の自発的な能力開発・キャリア形成支援であることを明記。

・休暇の定義:
業務から離れて教育訓練に専念するための無給の休暇であること。

・対象者と要件:
勤続年数、休職の必要性などを設定します。
ただし、給付金の要件(5年以上の被保険者期間)に満たない従業員にも適用できるかは企業判断です。

・申請・承認手続き:
申請期限、提出書類(教育訓練の内容・期間が分かるもの)、承認・不承認のプロセスを明確化。

・不承認事由:
事業運営上重大な支障をきたす場合など、客観的に合理的な理由に限り、拒否できる規定を設けておく。ただし、不当な拒否はハラスメントにつながるため慎重な判断が必要です。

・復職時の処遇:
復職時の部署や職務、賃金について、原則として不利益な取り扱いをしないことを明記。

3. 労務担当者が留意すべき実務上の注意点

・無給休暇の整備:
休暇期間中は無給となるため、賃金計算や社会保険料の取り扱いが通常の休職とは異なります。

・教育訓練の審査:
従業員が希望する訓練が給付金の対象となるか、事前に確認し、対象となる訓練を推奨するリストを作成するなどして支援することが望ましいです。

・キャリア面談の実施::
休暇の前後で従業員と面談を行い、リスキリングの成果を復職後のキャリアにどう活かすかを話し合う機会を設けることで、社員の定着と企業の戦略的な人材活用に繋がります。

この制度は、企業にとって「リスキリングを推進する企業」として魅力を高め、意欲ある人材の確保・定着に貢献するメリットがあります。
早めに制度を導入し、従業員への周知を進めましょう。
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公開日: 雇用保険手続き

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