「引継ぎは行いません」退職時に有給全消化を求める社員への対応は?

退職する社員が、残っていた有給休暇20日分の取得届を出したため、実質的に翌日から出社しないことになりました。
繁忙期に引継ぎが全くできない状態です。
業務に大きな支障が出ますが、引継ぎをしないまま有給消化を認めないといけないのでしょうか?

回答

A. 権利は尊重しつつ、事業継続のための「交渉と協力」を最優先します

結論として、有給休暇の取得は労働者の法的な権利であり、会社は原則として拒否できません。
しかし、今回のケースは「事業の正常な運営を妨げる」明確な事由があるため、交渉を通じて引継ぎ期間を確保することが最善の解決策です。

1. 法的な原則に基づく対応

有給取得の承認: 退職日までの有給消化権は認めざるを得ません。

時季変更権の行使: 「引継ぎ不能による業務停止」を根拠に時季変更権を行使し、「引継ぎのための出勤」を具体的に依頼します。
ただし、法的に有効な別の取得時季を提示できないため、交渉による解決を目指します。

2. 実務的な交渉と譲歩の提案

法的なリスクを避け、「一緒に解決する」姿勢を示すことが重要です。

具体的な依頼: 「引継ぎのため最低限〇日間の出勤をお願いできないか」と具体的に日数を提案し、有給の分割取得を促します。

協力の動機付け: 従業員の信義則上の義務として、顧客や業務への具体的な支障を伝え、誠実な引継ぎ協力を求めます。

譲歩案の検討: 引継ぎのための出勤日数分について、未消化分とは別に有給の買い上げ(会社からの提案として)や、書面による引継ぎ資料の作成を強く求めます。

文書化の徹底: 交渉内容や最終合意(〇日まで出勤、〇日分は有給とする)は、必ず書面またはメールで記録に残してください。

3. 最善の予防策

今後同様のトラブルを防ぐためにも、日頃から業務の属人化を解消することが最善の策です。
業務マニュアル整備や情報共有を徹底し、特定の個人に業務が依存しない体制を構築してください。
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公開日: 労務管理 有給休暇

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