定期健康診断の結果で、再検査を指示できる?

定期健康診断の結果、気になる結果の社員がおりました。二次健康診断に該当するものではないのですが、会社としては再検査(精密検査)を受けてほしいと思っております。本人にそれとなく健康診断の結果について話をしたのですがあまり深く考えていないようで「また来年同じような結果だったら考えます」という返答でした。本人の健康状態ですので会社としてどこまで口を出して良いかというのもありますし、結果の記載で「要精密検査」と記載されているわけでもありません。この場合、会社としてはどのような対応を取るのが良いでしょうか。

回答

ご質問の文面から察しますと、これは御社の産業医の方が判断して精密検査を推奨している状況ではなく、まずご担当者様が社員の方の健康を気遣い、検査を受けてほしいとお考えになっている状況かと思われます。ご相談のケースのように二次健康診断の要件に該当せず結果が要精密検査ではない場合、会社が再検査(精密検査)を強制することは難しいと思われます。会社として受診を強く指示することは、健康管理の主体はあくまで社員の方本人であるという考え方が基本となるため、本人の意思を尊重する観点からも慎重な判断が必要です。

このような場合に会社側がご本人様にとれる対応は、指示ではなく受診勧奨という形で、専門的な見地から受診を推奨することになるかと存じます。
まず会社として健康診断を実施した医療機関などに意見を求め、医学的な見地から再検査の必要性を客観的に確認することが重要です。ご担当者様が懸念されているのは、おそらくその所見がご本人様の業務内容と関連してリスクになり得るとお考えだからかと推察いたします。しかし、定期健康診断の医師は必ずしも個々の業務内容まで詳細に把握しているわけではありません。そのためご本人の業務内容を伝えた上で、今回の結果について改めて専門的な見解を確認することが必要だと考えます。その見解を踏まえご本人様に一般的な健康上のリスクを説明するだけでなく、今回の所見が担当する業務の性質と関連して、将来的にどのような影響を及ぼす可能性があるのかという視点で具体的に説明してもらうことで、社員の方も自分事として捉えやすくなります。会社が業務上のリスクを懸念しているという点が伝わることが大事かと思われます。

また、会社として本人の受診を後押しするために、再検査費用の会社負担や、受診時間を特別休暇または勤務時間として扱うなどの条件を提示することも有効な手段と思われます。経済的・時間的な負担という受診への障壁を取り除くことで、会社の配慮の姿勢が伝わり、本人の気持ちを動かす一助となり得ます。

仮に、こうした丁寧な勧奨を経ても本人が受診を固辞する場合には、会社としてそれ以上の強制はできません。その際は会社として外部の医師の助言を得た上で受診勧奨を行った事実、提示した支援策、そして本人の最終的な意思を記録として残しておくことが望ましいと考えます。これは会社として安全配慮義務を果たすために、可能な範囲で適切な措置を講じたという証跡になり、将来的なリスク管理に繋がります。

最終的には、本人の自発的な健康管理意識を促すための働きかけとなり、会社としてはそのための情報提供と環境整備に努める、という姿勢が求められることになります。
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公開日: 健康管理・メンタルヘルス

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