高年齢者の雇用に関する義務って!?

弊社の工場従業員も年々高齢化が顕著となってきました。厚生労働省からの法改正があったと聞きましたが、高年齢者の雇用に関する義務はどのように変わりましたか?

回答

■ 背景と制度改正の目的
日本の少子高齢化が進行するなか、高年齢者の就労促進は喫緊の課題です。政府は、意欲と能力のある高年齢者が年金受給開始年齢(原則65歳)まで働けるよう、企業に対して雇用確保措置の整備を求めてきました。

2013年の改正で導入された「高年齢者雇用確保措置」(定年廃止・定年引上げ・継続雇用制度の導入)は、当初「労使協定に基づき対象者を限定する」ことが認められていました。この経過措置は2025年3月31日をもって終了し、4月1日からは希望者全員を対象とした雇用確保措置の導入が完全義務化されました。

■ 法的根拠と施行日
施行日:2025年4月1日
法的根拠:
◎高年齢者雇用安定法 第8条・第9条
◎2012年の改正法(平成24年法律第78号)

■ 企業に課される義務の内容
企業は、60歳以降も引き続き雇用を希望する者すべてに対し、以下いずれかの措置を導入しなければなりません:
◎定年制の廃止
◎定年年齢の引上げ(最大65歳まで)
◎希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入(再雇用や勤務延長を含む)
※従来可能だった「労使協定による対象者限定」は認められません。あくまで全希望者が対象です。

■ 実務対応のポイント
1. 就業規則の改定と届け出
経過措置を利用していた企業は、就業規則の見直しが必要です。希望者全員を対象とする制度である旨を明記し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

2. 継続雇用制度の設計
勤務形態、労働条件、雇用契約書類の整備を行い、再雇用・勤務延長などの方式に応じた社内ルールを設けます。申出から運用開始までのフローも整備が必要です。

3. 意向確認と記録の整備
本人の希望を確認する面談の記録や申請書、制度説明書類を確実に保管します。制度が「形だけ」のものと見なされないよう、実態運用の透明性が求められます。

■ 高年齢雇用継続給付の見直し
60歳以降に賃金が大幅に下がった場合に支給される「高年齢雇用継続給付」は、2025年4月1日以降に新たに60歳を迎える者から給付率が最大10%に縮小されます(従来は最大15%)。これにより賃金の設計も見直しが求められます。

■ 注意点・問題点
1. 賃金水準の維持が困難に
給付縮小により、継続雇用後の収入低下が本人の就労意欲に影響を与える可能性があります。職務内容に応じた報酬制度や短時間勤務制度の活用が重要です。

2. 証跡不足によるリスク
口頭の対応や記録不備があると、労働局の調査時に「義務違反」と見なされるおそれがあります。

3. 将来的な70歳雇用義務化の可能性
現時点で70歳までの就業確保措置は努力義務にとどまりますが、将来的な法改正を見据えた中長期的な制度設計が推奨されます。

■ 助成金制度の活用
企業負担を軽減するため、以下の助成金が利用可能です:
◎65歳超雇用推進助成金(定年廃止・引上げ・制度導入時)
◎高年齢者処遇改善助成金(賃金引上げや職域拡大時)
◎特定求職者雇用開発助成金(高年齢者の採用時)

活用には制度変更内容や申請タイミングに応じた準備が求められます。
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公開日: 採用・雇用 高齢者雇用・定年

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