無期雇用者のみに住宅手当を支給することのリスクとは?

採用力の向上を目的として住宅手当の創設を検討しています。
ただ弊社では無期雇用の正社員と有期雇用の契約社員がおり、正社員のみを対象として支給したいと考えています。
この点、同一労働同一賃金の観点から懸念はありますか。

回答

無期雇用の正社員のみを対象として住宅手当を支給することは、パートタイム・有期雇用労働法第8条に抵触する可能性がございます。

同法第8条では、有期雇用と無期雇用の間で不合理な待遇の格差を禁止しています。
近年の判例では、家賃補助を目的とした住宅手当に関して、転居を伴う転勤が予定されていないにも関わらず無期雇用のみに住宅手当を支給することは不合理であり、家賃補助を目的とするのであれば無期雇用、有期雇用に関係なく支給されるべきと判断しています。
逆に、転居を伴う転勤が無期雇用のみにあれば、無期雇用のみに住宅手当を支給することには合理性があると考えられています。

もし貴社が転勤が発生するような事業形態ではない場合、不合理と判断されない方法として以下が考えられます。
1.無期雇用と同等とまではいかなくとも有期雇用に対して住宅手当を支給する
2.無期雇用の住宅手当と同等の別手当を有期雇用に設ける

1では、無期雇用と同じく有期雇用の採用力向上が見込まれます。
2では、明らかな不合理を回避することができると考えます。
また、契約社員から正社員への登用制度が設けられており、転換要件が妥当、登用実績もあるなど健全に機能しており、有期雇用の者が望むのであれば正社員への選択肢を取ることができる場合には、不合理な要素を減らす方向に働くと考えます。
あるいは、無期雇用の場合は業務上、緊急時に備えて家賃相場の高い会社近辺に住む必要があり、家賃が高くなることに対する補助という事情も同様に不合理な要素を減らす方向に働くと考えられます。

ご参考までに、採用力強化という点では、持株会やストックオプション、企業型確定拠出年金などの福利厚生制度も選択肢として考えられます。
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公開日: 手当(時間外手当除く) 賃金

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