内縁の妻は扶養にできる?

社員より内縁関係の妻を扶養に入れたいとの申し出がありました。いわゆる事実婚の状態ですが、扶養に入れることは可能でしょうか。その際、特別な手続きや必要になる書類はありますでしょうか。

回答

「扶養」には、所得税・社会保険の2つの観点がありますが、税法(民法)上と健康保険法・厚生年金保険法の「配偶者」の概念に違いがあるため、内縁関係の配偶者に対しては両者で取り扱いが全く異なりますので注意が必要です。

①社会保険(健康保険・厚生年金保険)

健康保険法・厚生年金保険法では「配偶者」は、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むと定義されています。つまり、社会保険では、社会的、実質的な面を重視し、内縁関係(事実婚)の両人は、婚姻の届出をしていないだけで、その実態は婚姻関係にある夫婦と同様の事情にあると認めているため、被扶養者として追加することが可能です。国民年金第3号被保険者になることも可能です。

手続には、通常の被扶養者異動届のほかに、原則としては下記の書類が必要になります。
・続柄の記載がある世帯全員の住民票※内縁関係が客観的に認められることを確認するため
・内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本※重婚等の民法上の禁止されている婚姻の要件に該当しないことを確認するため

尚、住民票の続柄が「妻(未届)」「夫(未届)」ではなく、「同居人」となっている場合は内縁関係の証明が難しく認定されない可能性もあります。もし続柄が「同居人」となっているようでしたら、お住いの市区町村役所へ相談するとよいでしょう。また、お二人の状況により必要に応じて複数の公的証明書等を求められる場合もございますので、扶養異動の手続きにあたっては事前に管轄の年金事務所またはご加入の健康保険組合等にご確認いただくことをおすすめします。

②所得税

配偶者控除の対象となる配偶者とは、民法の規定により効力が生じた婚姻に基づく配偶者をいいます。内縁関係の配偶者は民法の規定による配偶者ではないため、配偶者控除の対象とはなりません。所得税の扶養となれるのはあくまでも法律上の配偶者のみになります。従って、扶養控除等(異動)申告書の配偶者欄に記載することはできません。
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