社会保険の適用拡大における、75歳以上の短時間従業員への影響とは?

弊社には、短時間勤務をしている76歳の従業員Aがいます。フルタイム社員の勤務は「1日8時間・週5日」ですが、Aの場合は「1日6.5時間・週4日」です。

 

社会保険の適用が拡大した2022年10月時点で、弊社は「特定適用事業所」ではありませんが、今後該当する可能性が高いこともあって、準備をしているところです。

 

Aの勤務実態や賃金等に照らすと、適用拡大の対象となりますが、Aから「そもそも75歳以上であれば社会保険に加入できないから、特定適用事業所になったとしても、自分には影響がないのでは?」という趣旨の問い合わせがありました。本当に影響がないのか教えていただきたいです。

回答

健康保険と厚生年金保険を分けて回答いたします。

【健康保険】
 75歳になると、医療保険は「後期高齢者医療制度」に移行します。現在76歳のAさんは「後期高齢者医療制度」に加入しているはずで、特定適用事業所になったとしても、Aさんには特に影響がないといえます。

【厚生年金保険】
 70歳以上であれば、「70歳以上被用者」に該当するか否かが重要となります。
すなわち、➀厚生年金の適用事業所に勤務し、➁過去に厚生年金の加入期間があり、③適用除外に該当しない(70歳未満であれば加入する勤務形態)、のすべての要件を満たすと「70歳以上被用者」となり、場合によっては受給している年金額が減額される影響が出てきます。

 Aさんで考えると、厚生年金の加入歴があれば「70歳以上被用者」に該当します。実際に年金額が減額されるかは、Aさんの賃金額や厚生年金の受給額が関係し、両者の月額合計がだいたい47万円を超えそうであれば、日本年金機構に詳細を聞いていただきましょう。

 また、例えば、Aさんに年金の減額は避けたいという希望があれば、もう少し踏み込んで、勤務形態の変更について検討してみましょう。特定適用事業所となる前に入念に準備をして、互いが納得をして、今後も働き続けられる環境を整えることも重要だと考えます。
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