パワハラが会社に及ぼすリスク

弊社の管理職の中に、所謂、パワハラを行っている者がいる事が社内調査で
判明しました。そこで質問です。この管理職に対して会社は、どの様な処分を
行えばよいのでしょうか。また、この管理職がパワハラを行っている事に
よって会社はどの様なリスクを負うことになるのでしょうか。

回答

まず、パワハラを行った管理職に対してですが、こちらはパワハラ行為の悪質度合
被害に遭われた社員の方々の処罰感情、管理職の方から被害社員の方々への謝罪の
有無等を勘案して総合的に判断した上、処分を下す必要がございます。

懲戒処分を下す場合、その処分の量定が問題になります。量定を考える場合、管理職
の方のパワハラ行為が、①暴力を振るう、物を投げつける等の刑法上の犯罪行為レベル
なのか、②嫌がらせやいじめ目的等による叱責、恫喝等により精神疾患を発症した等
の民法上の不法行為(損害賠償)が発生するレベルなのか、③、①や②の様な犯罪行為レベル
不法行為レベルとまではいかなくとも、罵詈雑言を浴びせたり、からかったりしたこと
によって、職場環境を悪化させたり職場全体の士気の低下を招いたことにより生産性
を低下させた所謂、職場環境レベルなのかが、一つの重要な判断基準になります。
この管理職の方が行ったパワハラが具体的に上記のどのレベルに該当するのかが、ご質問
の内容だけでは分かり兼ねますが、レベルにより、現場レベルでの注意・指導から悪質な
刑法犯レベルであれば、諭旨解雇・懲戒解雇処分に該当するのではないかと存じます。

会社が負うリスク、責任に関してですが、その管理職の方のパワハラ内容のレベルによって
①使用者責任、②安全配慮義務違反、③職場環境配慮義務違反等に問われる可能性があります。

①の使用者責任とは、雇用する労働者(管理職)が職場においてパワハラ行為を行い、
被害者(パワハラを受けた社員の方々)が精神的苦痛を受けたり、病気に罹患した場合
会社は労働者(管理職)の不法行為(パワハラ)に対して、使用者としての責任を負う事
を意味します。

②の安全配慮義務違反とは、会社に課せられる社員の安全と健康を確保するための義務に違反した
ことを指します。この安全配慮義務を怠ると多額の損害賠償を請求される可能性がございます。

③の職場環境配慮義務違反とは、使用者は労働者にとって働きやすい職場環境を保つように配慮
すべき義務を負っているが、これに違反した事を指します。会社が職場環境配慮義務を果たさなかった
ことにより、パワハラが発生したと判断された場合は、会社は被害者(パワハラを受けた社員の方々)
に対して債務不履行責任に基づく損害賠償を請求される可能性がございます。

なお、2022年4月1日より労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正が実施され大企業だけでなく
中小企業にもパワハラ防止法が適用されることになりました。

厚生労働省が公開しています「職場におけるハラスメント関係指針」の方に

①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発。
②相談(苦情)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備。
③職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応。
④上記の措置と合わせて講ずべき措置。

の4つの柱が事業主の講ずべき措置として挙げられています。

これを機に会社側は社員が安心して働ける環境を構築していくこと、社員側もパワハラを始めとした
ハラスメント全体について理解を深めること、関心を持つことで、より良い職場環境を構築していく
ことに繋げていかれてはいかがでしょうか。労使双方が協力してパワハラ対策をきちんと講じていく
ことをお勧めします。
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