労災認定期間中の傷病手当金の受給は可能か

 適応障害で休職している従業員がいます。原因は社内でのパワハラであることが判明し、本人が労災を請求してほしいと言ってきました。労災認定は時間がかかると聞いていますので、傷病手当金を受給しておいて、労災の支給が決定されたら切り替えるということは可能ですか? 
 なお、この従業員は休職前から療養のために休んでおり、また、休職開始時から、会社が休職給として月額給与の2/3を支給しています。

回答

 労災の請求と傷病手当金の支給申請を同時に行うことは可能です。ただし労災の支給が決定された場合、それまでに支給された傷病手当金を返金しなくてはなりません。また、休職給の支給があると、労災の休業補償給付の請求が行えませんので、休職給を停止する必要があります。

 このケースでは、まず休職給を停止することにしました。月額給与の2/3が支給されていると、傷病手当金、休業補償給付のそれぞれの要件に該当せず、請求できないことになってしまうからです。

 次に労災の療養補償給付、休業補償給付を請求し、同時に傷病手当金の支給申請を行うこととなりました。基本的に労災は、業務上災害による疾病が対象で、健康保険の傷病手当金は私疾病が対象のため、同一傷病を理由として双方から支給されることはありません。
 ただし、労災認定までに時間がかかることから、健康保険の側で、仮決定というかたちで、労災の認定を待つ間、傷病手当金の支給決定をしてもらうことは可能です。この場合、労災認定されなければ私疾病扱いとなり、そのまま傷病手当金を受給することになり、労災認定された暁には傷病手当金は支給を停止され、労災認定された時以降に支給された傷病手当金を全額返金することになります。
 傷病手当金申請時に、労災の請求を同時に行っている旨を説明すると、労災の支給決定に伴う傷病手当金の返金の誓約書の提出を求められ、これと引き換えに傷病手当金支給の仮決定がなされます。

 なお、労災認定された場合の休業補償給付の開始日は、休職給の支給を停止した日以降となり、療養補償給付は適応障害の診断がされた日以降、となります。

 上記の手続きを行うためには、それぞれが支給要件に該当していることが前提となりますので、正しい情報を提供していただくことが重要です。また、会社が社会保障を上回る保障を行っている場合、給付の対象から外れる可能性があることに注意しましょう。
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公開日: 社会保険・労働保険手続き

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