インセンティブ給は有給日の賃金基礎に含まれるか

弊社ではインセンティブ給の制度があり、仕組みとしては1件受注あたりいくらという単価が給与等級ごとに設定されています。
今回、コロナ禍による長期の有給使用があり、有給日の賃金基礎にインセンティブ給を組み込む必要があるのかどうか判断しかねています。
有給に関する規程としては「通常の賃金を支給する」としております。
この場合、インセンティブ給は有給日の賃金基礎に含まれるのでしょうか。

回答

法律にあたってみますと、労基法規則25条6項にて出来高払制がある場合には、定められた計算方法によって有給日の賃金基礎を計算するとあります。

ただ、いくつかの前提の上で、上記の関連条文である労基法27条及びその通達を検討してみますと、貴社のインセンティブ給は出来高払制にあてはまらず、その支給額は有給日の賃金基礎に含まれない可能性がございます。

労基法27条では、出来高払制の者について出来高が上がらなかった場合に備えて保障給を設けると定められており、その趣旨は金融商品のフルコミッション営業やタクシードライバーの歩合給など従業員のメイン業務の成績に基づいて支給額の大部分が決まるような変動の大きい出来高払制の従業員に対する生活保障と考えられます。
具体的には、通達により出来高払が通常の6割程度を下回る場合には保障給によって6割程度の支払になるようにすべきと解されております。また、別の通達では支払総額の6割以上が固定給である場合には出来高払制にあたらないと解されております。

もし、貴社のインセンティブ制度として以下のような実態の場合、27条の生活保障は成立していると考えられ、出来高払制にあてはまらず、規則25条6項にもあてはまらない可能性がございます。
・従業員のメイン業務以外の義務ではない業務に基づいて謝意の趣旨で支給されている
・支給額はインセンティブ給がない場合でも生活が成り立たないほどのものではない
・個々人では毎月インセンティブ給のない方や支払総額の数%にとどまっている
・雇用契約上、毎月いくら支払うなどの記載がない

一方、今後にインセンティブ給の単価が上昇するなどして給与総額に占めるインセンティブ給の割合が高まる場合には、生活保障を要する性質が高まり、出来高払制にあたると解される可能性がございます。その場合、規則25条6項にもあてはまる可能性がございます。

上記の前提があれば必ずしもインセンティブ給が有給基礎賃金に含まれないというわけではなく、個別具体的に検討されることをお薦め致します。
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公開日: 労務管理 有給休暇

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