他社休業中の人を雇い入れる!注意点は?

新規採用予定者がいます。他社Aに在籍しており、A社ではフルタイム勤務契約であるものの、現在休業により就業していないため、弊社で週5勤務を希望しております。弊社で結ぶ雇用契約書も週40時間労働とする予定です。
A社で社会保険にも加入していると聞いていますが、弊社ではどのような手続きが必要になりますか?また、他の注意点も教えて下さい。

回答

<社会保険>
貴社において週40時間労働とのことですので、社会保険加入義務があります。貴社においても「資格取得届」をご提出下さい。
この場合、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を届け出ることとなりますが、ご本人が主たる事業所を選択し、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターへ届け出ます。報酬が多い方を選択しなければいけない、ということはなく、ご本人が決めることができます。

<雇用保険>
貴社において加入資格を満たしますが、こちらは二重加入することができません。
生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける会社でのみ雇用保険の被保険者となります。現在A社にて支給されている休業手当と貴社給与を比較したとき、貴社給与の方が高くなることも考えられますが、ご本人にとって貴社での勤務があくまで副業であるという位置付けであり、A社の休業が解消されたら貴社を退職する場合は、A社の方を資格喪失する必要はないでしょう。もしA社が休業解消の見込みがなく、貴社を主たる事業所としたいという希望が出された場合は、A社の資格喪失も考えられます。いずれにせよご本人とA社、ご本人と貴社で十分話し合いをしていただく必要があるでしょう。

<時間外労働>
A社にて現在就業していないとのことですので、貴社において1日8時間以内、1週間について40時間以内の労働のときは、割増賃金を支払う必要はありません。
労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されており、「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含むため(労働基準局長通達(昭和23年5月14日基発第 769 号))、A社の休業が解消されたときは注意が必要です。A社における労働時間を把握することが求められます。
法定労働時間を超えて当該労働者を労働させるに至った使用者が割増賃金を支払うこととなりますので、A社8時間勤務後に貴社にて労働する場合は、貴社が割増賃金を支払うこととなります。
貴社において、時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)が締結されていることが前提です。
また、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内としなければいけません。

参照:厚生労働省によるガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000695150.pdf

A社の休業が解消した場合、貴社において通常の労務提供がされないことが起きるかもしれません。またその逆も考えられます。
長時間労働による健康障害を防止する観点から、働き過ぎにならないよう、措置を講じる必要があります。
社会保険の取り扱いを含め、貴社において週40時間労働の雇用契約を結ぶことが適切であるか、もう一度検討されることをお勧め致します。
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公開日: 労務管理

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