賃金台帳やタイムカードの保存期間はいつからでしょうか?

令和2年6月に退職した労働者から未払い残業代として約78万円の賃金請求を受けました。

当該労働者の請求内容を確認するため、賃金台帳や出勤簿、当時の業務記録を確認しようと思います。

今後、会社はこのような請求に対応するため、いつまで書類を保存する義務があるのでしょうか。

また、保存期間の起算日はいつでしょうか。

回答

今年4月の民法改正により、賃金請求権の消滅時効期間が5年(当分の間3年)に延長されました。
これに伴い、労働基準法第109条、記録の保存期間も改正法の施行日以後、現行の3年から5年(経過措置の間3年)に延長されています。

*労働基準法第109条
「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない。」

では、書類の保存期間の起算日はいつでしょうか。
労働基準法則56条記録の保存によれば、
賃金台帳は「最後の記入をした日」、賃金その他労働関係に関する重要な書類(*)は「その完結の日」が起算日となります。

(*)その他労働関係に関する重要な書類
例;出勤簿、タイムカード等の記録、始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類
(使用者自ら始業・終業時間を記録したもの、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書)、退職関係書類等

なお、賃金請求権の消滅時効の起算点については、変更はありません。
改正後の労基法第115条では、賃金請求権の消滅時効の起算点は「これを行使することができる時」であることが明確化され、従来と同じく、「賃金支払期日が起算点」となります。

では、新しい賃金請求権の消滅時効と保存期間の起算日は、いつから適用されますか。
改正法の施行期日(令和2年4月1日)以後に支払期日が到来する賃金支払い日から適用されます。

このうち、新たに期間が延長されるのは、改正法の施行期日(令和2年4月1日)以後に支払い期日が到来する賃金請求権になります。

ご質問のケースでは施行日以降に支払いがあった賃金から、3年間の賃金を請求することができますが、令和2年3月以前に支払われた賃金請求権は従来通り2年間の遡及適用になります。

(具体例)末締め翌月25日支払い
3月31日締め、施行日以降4月25日に支払われる給与から新法が適用され、その書類を2023年4月25日まで保存する必要があります。

詳細は厚生労働省HPに掲載されている下記でもご確認いただけます。
改正労働基準法等に関するQ&A(令和2年4月1日 厚生労働省労働基準局)
https://www.mhlw.go.jp/content/000617980.pdf

賃金請求権の消滅時効期間と書類の保存期間が延長されていることから、今後、賃金台帳、出退勤記録だけではなく過去の業務内容や指示の内容に加え、メールの送受信記録など様々なデータ管理が重要になってきます。
データ管理に関しては、一時的なコスト増にもなりますが、今後、5年延長前に準備されることをお勧めいたします。
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公開日: 労務管理

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