社員の減給の際に留意すべきポイント

管理職社員のうち、職位と能力の不適合のため、減給を検討している者がいます。(業務遂行能力・コミュニケーション能力において、周囲の社員や顧客からの低評価の報告を確認しています。)

 

昇降格の賃金改定のタイミングで、職位を1段階のみ引き下げ、相当額まで給与を減額しようと考えています。トラブルを避けるため大幅の降格・減給は行わず、上級職の待遇のまま、一般社員と同等の業務をしてもらうつもりです。想定されるリスクや、留意すべき点はありますでしょうか。

回答

・職位の引き下げ(降職)と職能資格制度の引き下げ(降格)のうち、今回は降職に該当するものと見受けます。降職については人事権行使で可能(降格は就業規則の規定が必要)となります。
・賃金減額については、就業規則等にて職位・資格との明確な関連性の記載が無い場合、(本人の個別同意なしでの)人事権行使での一方的な減額は、無効とされる可能性があります。
・規定・労働協約・雇用契約書にて、降職・降格と賃金減額にかかる規定の有無と内容をご確認いただき、定めがある場合は、それに基づいた措置をいただく必要がございます。
(雇用契約書にて、職位・資格を限定する記載が無い限り、降職・降格は有効と存じますが、賃金減額については、本人同意を得られない場合、無効と判断される可能性がございます。同意の際は、降職・降格の同意のみでは足りず、減額までの同意をいただく必要があります。)
・降職・降格が裁量権の濫用と見なされないよう、人事考課が適正に行われたことを説明できるように、評価の手続きと内容の記録を残し、ご本人様の面談・弁明の機会を設けることが適切です。
・社内手続きの際、降格・降職を個人を特定できるよう公表し名誉棄損とされた裁判例がありますので、業務上必要の限度への周知へ留めていただき、プライバシーにご配慮ください。

減給にはいくつか種類があります

・会社の業績不振・経営難による減給
・懲戒処分による減給
・人事考課・人事異動の結果としての減給
上記質問は人事考課などの査定によって降格し、その等級に応じて減給される場合に該当します。「人事上の降格」とは、「能力」「成績」「役割」などにより従業員を等級分けし、その等級が下がることを言います。
実務上、等級制度を含めた人事評価制度が定められていることが必要です。人事評価が著しくバランスを欠いて行われている場合や、人事評価制度上定められた考慮要素以外の要素に基づき評価がされた場合は、「人事権の乱用」となり、違法となる可能性が高くなりますので正しい運用をしていきましょう。


職能資格制度と職務等級制度

職能資格制度では、資格・等級が企業組織内での技能・経験の積み重ねによる職務遂行能力の到達レベルを示すため、資格の引き下げは本来予定されておらず、職能資格の引き下げとしての降格は、基本給の引き下げを伴うのが一般的であるため、厳格に判断されることが多いようです。
職務等級制度では、職務内容の変更により職務等級が低下し、基本給が引き下げられることが労働契約上予定されていると解されやすいですが、恣意的な降格は権利濫用としてやはり無効となります。

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公開日: 賃金

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