中途採用者の内定取り消しは可能ですか?

中途採用者のため開催した懇親会に無断欠席がありました。数日連絡がつきませんでしたが、事故のため入院していたと連絡がありました。継続的なリハビリが必要とのことです。当社は体力を使う仕事であり、リハビリをしながらの勤務は難しいかと思っています。

こちらから内定取消を申し出た場合、何か問題はありますでしょうか?

面接時には持病や体調の面は伺い、何も問題ありませんとの答えでした。また、雇用契約書やその他の書類等、書面的なものは特にありません。

回答

「内定取消」は、「解雇」に相当し、労働契約法16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。
つまり、内定取消が法的に認められるかどうかの判断ポイントは、理由として妥当と考えられるかどうかです。

【具体的な理由】
1.経歴詐称など、履歴書上や面接時に虚偽の申告があった
2.健康状態上、就業が不可能であると判断された
3.重大な違法行為があった
4.内定後の著しい業績悪化
5.自然災害により事業継続が困難となった場合

上記のように「採用の過程で企業が知り得なかった事、かつその事実があることで、内定者が会社の従業員として業務ができない」と判断ができる場合は、妥当な理由として、内定取り消しが認められる可能性があります。
本件は健康状態を理由として、内定取り消しが認められる可能性があります。どちらにせよ会社として内定者の状態を確認することは必要ですので、診断書を郵送等でご提出していただきましょう。
当人に雇用契約書の締結を行わない旨を丁寧に説明し、通知することが大切だと考えられます。

また、労働基準法第20条では、企業(使用者)が労働者を解雇するには、正当な理由があっても、少なくとも30日以上前から解雇予告をしなければならないと定められています。
内定取消であっても個別具体的な事情によっては解雇予告が必要となる場合があります。解雇予告が必要と労働基準監督署に判断されたにも関わらず解雇予告を行わずに解雇を行う場合は、解雇までの残日数に応じた金額、つまり解雇予告手当を支給する必要があります。


「内定」の法的効果

内定は、応募の誘引に対し応募し、双方の合意に基づき、始期付解約権留保付労働契約が成立した状態です。
この契約は、「〇月〇日から労務の提供を開始し、仮にこの日までになんらかの事情があれば本件契約は解約される」というもので、契約の成立時期は、双方の合意があった時に成立すると考えます(民法522条)。
労基法等では労働条件の通知や、有期契約労働者に対し労働契約書の締結を義務付けていますが、これらがない(口頭のみ)場合でも、有効に成立しているものと考えます。


採用内定通知書、承諾書等書面はあった方がよい?

今回のケースでは、内定者側に勤務が難しいほどの健康上の理由(診断書による確認は必要)があるとのことですが、「書面的なものは特にない」とのことから承諾書等はないとすると、症状の程度によっては「内定者側に何の落ち度もない」と判断されるかもしれません。
一般的に中途採用の場合は、新卒採用よりも内定から入社までの期間が短いため、わざわざ内定取消の条件入りの承諾書の提出を求めないことも多いですが、入社までに相当な期間があるなら、お互いの状況変化の可能性も視野に入れ、承諾書の提出を求めることを検討してはいかがでしょうか。
なお、承諾書を送ればそれで一方的に先方が納得というものではありませんので、期限内に受諾しなければ内定を取り消す旨も導入すべきでしょう。

The following two tabs change content below.
人事実務の専門家集団「社会保険労務士法人人事部サポートSRグループ」のwebメディア。人事制度、採用、労務、HRtech、法改正など旬の人事ニュースを掲載。実務に役立つExcelツールも無料配信中!

最新記事 by SR人事メディア編集部 (全て見る)

公開日: 採用・雇用

日常業務に関するちょっとした疑問から、コンプライアンス、人事戦略まで、お気軽にご相談ください。

無料労務相談のお申し込みは、以下のバナーからどうぞ!
無料労務相談のお申し込み
PAGE TOP ↑