有給休暇を基準日付与から入社日付与に変更する際の注意点
現在当社では基準日付与(6月・12月付与)しています。
例えば、2017年4月1日入社の場合は以下のように運用しています。
1回目:2017年10月1日 10日付与
2回目:2018年 6月1日 11日付与(本来2018年10月1日)
3回目:2019年 6月1日 12日付与(本来2019年10月1日)
今回入社日付与(入社月日)へ変更することになりました。
私が気にしている点は、上記の例の場合ですと、2回目付与までは入社日付与変更が問題無いとしても、3回目の場合、付与が前回の付与から1年4カ月になります。
これは1年を超える形になり、不利益変更となるのでしょうか?
回答
まず、年次有給休暇の付与に関する法令は、下記のものしかありません。
==
労働基準法第39条
使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
2 使用者は、1年6箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6箇月を超えて継続勤務する日(以下「6箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる6箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の8割未満である者に対しては、当該初日以後の1年間においては有給休暇を与えることを要しない。
6箇月経過日から起算した継続勤務年数 労働日
1年 1労働日(10+1=11)
2年 2労働日(10+2=12)
3年 4労働日(10+4=14)
4年 6労働日(10+6=16)
5年 8労働日(10+8=18)
6年以上 10労働日(10+10=20)
==
平成6年1月1日 基発第一号
(前略)
5 年次有給休暇
(中略)
(3) 年次有給休暇の斉一的取扱い
(1)の年次有給休暇について法律どおり付与すると年次有給休暇の基準日が複数となる等から、その斉一的取扱い(原則として全労働者につき一律の基準日を定めて年次有給休暇を与える取扱いをいう。)や分割付与(初年度において法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与することをいう。)が問題となるが、以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えないものであること。
イ 斉一的取扱いや分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。
ロ 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。(例えば、斉一的取扱いとして、4月1日入社した者に入社時に10日、一年後である翌年の4月1日に11日付与とする場合、また、分割付与として、4月1日入社した者に入社時に5日、法定の基準日である6箇月後の10月1日に5日付与し、次年度の基準日は本来翌年10月1日であるが、初年度に10日のうち5日分について6箇月繰り上げたことから同様に6箇月繰り上げ、4月1日に11日付与する場合などが考えられること。)
==
原則の入社日を基準とした付与から斉一的付与に変更する場合については明言されていますが、今回のように、斉一的付与から入社日基準の付与への変更については想定されていません。
ですが、懸念されている通り、2017年4月1日に入社した方が2018年6月1日に付与された後、次の付与が2019年10月1日になるのは不利益変更になります。
対応方法としては、2019年6月1日に12日の付与を行い、2019年10月1日にも付与を行うことが考えられます。その場合は、
①次の付与日数である14日にする
もしくは、
②6月1日から10月1日の4カ月に相当する日数(案分した日数)を付与する
といったことが考えられます。
2019年6月1日に12日付与していますので、②でも法定で定められている日数を上回っており問題ございません。検討方法として、斉一的付与に変更されたときの移行方法が参考になるかと思います。
ただ、そもそもになりますが、有休管理の煩雑さを解消するために斉一的付与を導入されていたものと考えらえれますので、それを入社日基準の付与に戻したい理由はどのようなものでしょうか。
年5日の有休取得が義務化されたこともあって、世間的には、斉一的付与に移行する会社が多くなってきている状況にあります。
今一度、付与方法を変更した場合のメリット・デメリットを洗い出したうえで、検討されることをお勧めいたします。
◆一斉付与
*従業員が多くても運用負荷は同水準
*付与条件によっては付与日数に公平感がない場合も
*5日取得義務の管理が容易
*社員からの問い合わせは普通
*短期在籍者にも付与する場合あり(有休消化して退社)
*同一労働同一賃金の観点から正社員=アルバイトにする必要あり
◆個別付与
*従業員が多くなるほど運用負荷が増す
*付与条件が同じのため公平感は高い
*5日取得義務の管理がハード(漏れてしまう)
*社員からの問い合わせが多くなる傾向
*短期在籍者には付与しない(有休消化なく退社)
*同一労働同一賃金に即した差異の見直しは不要(そもそも同じ)
==
労働基準法第39条
使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
2 使用者は、1年6箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6箇月を超えて継続勤務する日(以下「6箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる6箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の8割未満である者に対しては、当該初日以後の1年間においては有給休暇を与えることを要しない。
6箇月経過日から起算した継続勤務年数 労働日
1年 1労働日(10+1=11)
2年 2労働日(10+2=12)
3年 4労働日(10+4=14)
4年 6労働日(10+6=16)
5年 8労働日(10+8=18)
6年以上 10労働日(10+10=20)
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平成6年1月1日 基発第一号
(前略)
5 年次有給休暇
(中略)
(3) 年次有給休暇の斉一的取扱い
(1)の年次有給休暇について法律どおり付与すると年次有給休暇の基準日が複数となる等から、その斉一的取扱い(原則として全労働者につき一律の基準日を定めて年次有給休暇を与える取扱いをいう。)や分割付与(初年度において法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与することをいう。)が問題となるが、以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えないものであること。
イ 斉一的取扱いや分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。
ロ 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。(例えば、斉一的取扱いとして、4月1日入社した者に入社時に10日、一年後である翌年の4月1日に11日付与とする場合、また、分割付与として、4月1日入社した者に入社時に5日、法定の基準日である6箇月後の10月1日に5日付与し、次年度の基準日は本来翌年10月1日であるが、初年度に10日のうち5日分について6箇月繰り上げたことから同様に6箇月繰り上げ、4月1日に11日付与する場合などが考えられること。)
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原則の入社日を基準とした付与から斉一的付与に変更する場合については明言されていますが、今回のように、斉一的付与から入社日基準の付与への変更については想定されていません。
ですが、懸念されている通り、2017年4月1日に入社した方が2018年6月1日に付与された後、次の付与が2019年10月1日になるのは不利益変更になります。
対応方法としては、2019年6月1日に12日の付与を行い、2019年10月1日にも付与を行うことが考えられます。その場合は、
①次の付与日数である14日にする
もしくは、
②6月1日から10月1日の4カ月に相当する日数(案分した日数)を付与する
といったことが考えられます。
2019年6月1日に12日付与していますので、②でも法定で定められている日数を上回っており問題ございません。検討方法として、斉一的付与に変更されたときの移行方法が参考になるかと思います。
ただ、そもそもになりますが、有休管理の煩雑さを解消するために斉一的付与を導入されていたものと考えらえれますので、それを入社日基準の付与に戻したい理由はどのようなものでしょうか。
年5日の有休取得が義務化されたこともあって、世間的には、斉一的付与に移行する会社が多くなってきている状況にあります。
今一度、付与方法を変更した場合のメリット・デメリットを洗い出したうえで、検討されることをお勧めいたします。
◆一斉付与
*従業員が多くても運用負荷は同水準
*付与条件によっては付与日数に公平感がない場合も
*5日取得義務の管理が容易
*社員からの問い合わせは普通
*短期在籍者にも付与する場合あり(有休消化して退社)
*同一労働同一賃金の観点から正社員=アルバイトにする必要あり
◆個別付与
*従業員が多くなるほど運用負荷が増す
*付与条件が同じのため公平感は高い
*5日取得義務の管理がハード(漏れてしまう)
*社員からの問い合わせが多くなる傾向
*短期在籍者には付与しない(有休消化なく退社)
*同一労働同一賃金に即した差異の見直しは不要(そもそも同じ)
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