やりぬく部下~マインドセット心理学からのアプローチ~

最近、部下に仕事を教えてもあまり効果がありません。

何か部下にやる気を起こさせる効果的な方法はありませんか?

また、その部下は新しいことをやることが億劫なようです。どうすればいいでしょうか。

回答

ご質問頂いた内容は、よく仕事の現場でも起きていることではないでしょうか。
ただ、やる気を起こさせる、上げさせる方法というのは諸説いろいろありますが、1つの処方箋があるわけではありませんので、先人の知恵を活用して一つのヒントとしてご回答したいと思います。

・マインドセット
マインドセットとは、考え方の癖、あるいは思考傾向のことです。
大きく分けると私たちは2つのマインドセットを持っていると言われています。
一つは、証明マインドセット(またはfixed maindset硬直マインドセット)と、もう一つは、成長マインドセット(またはgrowth maindsetしなやかマインドセット)というものです。

証明マインドセットは、自分の能力を証明することにこだわり、自分の能力を見せつけ認めさせようとします。なので、いつも自分と他人をいつも比べています。このような人は、周りに助けを求めることもあまりしません。何か上手くいかない事があると、そのことが自分には向いていないと考えるのが特徴です。
(お気づきになったと思いますが、このような人を育ててしまう、人と人とを比較して評価してしまうようなことは、社内でもよくある仕組みです。)

もう一つの成長マインドセットは、自分が向上することに焦点を向けています。能力を高める、新しいことを学ぶことが重要と思っています。このような人は、比較対象が他人ではなく自分自身なので、他人の目をあまり気にしないです。成長に視点があるので、困難に直面しても粘り強く頑張り続けます。

このような2つのマインドセットを現場でも見つけることができます。自分にはできないと思ってすぐに諦めてしまう・ミスを恐れて挑戦しようとしない・自分の評価が下がるのが怖い・能力が低いと思われたくないので難しいことに取り組まない、といった人もいれば、難しいことに直面すると自分以外から情報収集して何とか取り組もうとする人もいます。
その垣根を越えた情報の中に活路を見出したり、新たなヒントを見つけることはよくあることです。そうすることによって成長していきます。

ここまでお伝えしたように、成長マインドセットが良いということは感じられたと思いますが、このマインドセットは、固定的なものではなく誰でも変えられるものです。そのポイントの一つが、目標を考えるときに「成長」を意識していくことです。

マインドセットのほかに、やはり「自信」というものも大切になってきます。自信をつけさせるための一つとして「成功体験」があります。これは、近年注目されています”自己効力感”(社会心理学者アルバート・バンデューラ)の要素の一つです。
成功体験を重ねると自己効力感が高まり、高まった自己効力感がさらに成功へ導いてくれます。
(ちなみに、自己効力感と成功の相関係数は、0.34となっています。いわゆる仕事の技能テストの結果とその仕事での成功の相関係数は、0.19という研究結果があります)
成功体験を積ませるための第一歩は、目標設定です。
以前に記事でもご紹介した目標設定方法(「目標達成のための要素」)と弊社のサイトに紹介されている方法(「社員エンゲージメントを高めるポイント① ~個へのフィードバック~」)を組み合わせることによって、目標達成(成功体験)の確率を高めることができますので参考にしてください。
(ちなみに、よく目標設定で言われているSMART基準というものがありますが、こちらのエビデンスは分かりませんが、ご紹介した目標設定方法では、達成との相関係数が0.6~0.8というエビデンスがあります)

ここで一点注意してほしいのが、困難にぶつかった時には「ポジティブ」に捉えて、「自分がほしいものをすべて手に入れた場面を想像しよう」とか「成功から遠ざけるような消極的なことは排除しよう」という、いわゆる「ポジティブシンキング」が成功を掴むことができるという証明された研究は無いといわれていますので、気を付けなければなりません。(逆に、悪い効果をもたらす研究結果が多いようです)

このようにマインドセットと自信をポイントに、第一歩として、部下の方々への指導、アドバイス、支援をして頂ければと思います。
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