退職合意書の作成は義務なのか?

当社にて70歳のパート社員を尞の清掃スタッフとして11月に雇用し、6か月の雇用契約を結んだのですが、前任者より能力的に劣る点、当日朝に事前に電話連絡があるものの遅刻が多い点などから、雇用期間の途中ではありますが、12月末に1ヵ月前予告をし、1月末で契約を打ち切ることとしました。

ご本人には、2か月分の平均賃金を支払うことで1月末退社で合意して貰っていますが、何か合意書を交わした方が良いのでしょうか?

これが解雇に当たるのか、退職勧奨に当たるのか、判断が付かないのですが、こういった場合、解雇に関する退職合意書のようなものを作成しなければならない義務はあるのでしょうか?

回答

 退職の効力は、当事者間の合意に限らず、一方的な意思表示や(就業規則等に基づいて)自動的に発生します。
 今回の事案を考慮するにあたり、考えるべきは「合意」と「一方的な意思表示」です。
合意とは、事業主と労働者の双方の意思が合致して退職の効力が発生するもので、どちらか一方が承諾しなければ、効力は発生しないものです。本件では、合意しているので「効力が発生する」要件を満たしています。
 「一方的な意思表示」は、労働者側からの「解約」と事業主側の「解雇」の2種類があり、今回は、事業主側の都合が大半を占めているため、後者の考え方が関係いたします。
 事業主側からの解雇は、その影響が大きいため、様々な制限がありますが、今回は合意の結果とはいえ、1か月前の予告であり、2ヶ月分の平均賃金を支払っているため、その点問題ないかと思います。
 以上を踏まえまして、仮に、労働者側が退職合意書といった「文書」がなく、契約の内容を事業主が証明できないことを逆手にとって、退職合意の効力を争ったとしても、解雇の要件を満たすため、1月末に退職させることは可能です。
 しかし、無用な争いを避けるためには、効力が発生する要件としての文書の取り交わしは不要ですが、後日証明するものとして、退職合意書を交わして文書化することがよいかと思います。
 よって、作成は義務ではないが、作成すべきものという結論となります。
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