異動の内示を行ったら退職を仄めかした

当社のA部に問題社員(仮にX)がおります(業務命令無視しがち、部内協業が全くできない)。
特に部内で他者との協業ができないので、一人で完結可能な業務を遂行できるB部への異動を計画し、会社の決裁を取得の上、本人に内示を行いました。(尚、異動日は10月1日、勤務地は同じです)
ところが本人は、異動を命じられるならいっその事会社を辞める、実は異動云々以前からとある事情で(時期は決めていなかったが)退職することを考えてた、と言いだしております。
そこで、自分の意思で会社を退職したいのであれば、本人にすぐに退職届を提出させるよう伝えていますが、退職を仄めかしているもののなかなか退職届を出してきません。

・A部の部員はその問題社員のために体調不良になった者もいる。
・B部は新しいプロジェクトを手掛けようとしており、そのため人手が必要で本人が異動してくることに期待し、体制も整え始めている。
・退職届がこのまま出ないと、決裁通りB部に異動を実施することになるが、その場合は本当に退職する可能性が高い。この場合B部は非常に困ったことになる。
・かと言って、本人の異動決裁を白紙に戻し他の社員をB部にあてがった場合、結局本人が退職の意思自体を撤回する可能性がある。(本人にとって居心地がいいA部に居座ったままで、気が向いたら退職するというケースが想定される)

要は「退職の仄めかし」をタテに取られ、会社としてアクションを取りずらい状況です。
退職を仄めかしているからと言って、また異動が実施できないじゃないか、といって、早く退職届を出せと強く言い続けるのもどうなのかと思います。
本人から退職届が出るまで会社はアクションが取れないのでしょうか?
会社としてはいかなる対応を本人に対して行うべきかアドバイスあれば宜しくお願いします。

回答

人事異動は業務命令ですので、正当な理由がない限り、Xさんは、原則としてこれを拒否することはできません。

いくつか例を挙げますと、
・育児や介護など、やむを得ない事情があるケース(要介護者の面倒を見る人が他にいないという社員が、遠方への異動を命じられた場合など・・質問内容から、こちらは相談者様のケースには該当しません)
・労働条件通知書等で勤務地が限定されており、そのエリア以外への異動となるケース(質問内容から、こちらも相談者様のケースには該当しません)
・異動が「権利の濫用」といえるケース(社員を退職させるために、わざと慣れない職務に就かせたり、遠隔地へ転勤させたりするように、人事異動に客観的・合理的な理由がなく、単なる嫌がらせだと思われる場合・・質問内容から、こちらも相談者様のケースには該当しません)
などの場合には、正当な理由がないとして、異動を命じられた社員がこれを拒否することができますが、今回のケースでは上記のようなケースは見受けられず、異動の業務命令には正当な理由がありますので、Xさんは人事異動を拒むことはできません。


質問①本人から退職届が出るまで会社はアクションが取れないのでしょうか?
こちらに関しましては、極力早めに異動の辞令を交付し、Xさんがそれに従うのであれば
会社の決裁通り10月1日付での異動を完了させる。
それを拒むようであれば、「有効な業務命令」である異動の拒否を理由とした解雇も視野に入れた措置を取られることをご検討されてはいかがでしょう。

質問②会社としてはいかなる対応を本人に対して行うべきか?
質問文にもあります通り、Xさんが、退職をタテに取り「退職」を仄めかしながらもなかなか退職届を提出してこない、といった状況から察するに、Xさんには本人にとって居心地がいいA部署からの異動を防ぎたいという思惑があるように見受けられます。
そのような姿勢をとっていても、決して「ゴネ得」にはならないという事を、Xさんに
はっきりとお話しされてはいかがでしょうか。

また、ご質問内容とは直接関係しておりませんが、このXさんの異動(予定)先であるB部署へも、異動における一連の経緯やこれまでの考課評価などを説明しておき、異動が行われた場合の対応や、行われなかった場合の人的補充対策などについて関係部署との調整を図られることを老婆心ながら、お勧めいたします。
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公開日: 労務管理 異動・出向・転籍

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