健康保険の扶養認定について

質問

下記の事例において、両親を健康保険の被扶養者にできるかどうかについてお教えください。

 

Aさんの場合
Aさんの年収は400万円、父66歳(定年となり今後は年金収入 年間200万円)、母62歳(パート収入 年間92万円)、両親とは同居しています。

父は年収180万円を超えているために被扶養者にできないかと思いますが、母のみではどうでしょうか。また、現状2人ともAさんの被扶養者と認定されないならば、父が75歳となり後期高齢者医療制度に移行した際、母をAさんの被扶養者とすることはできるでしょうか。

 

Bさんの場合
Bさんの年収は600万円、父65歳(定年となり今後は年金収入 年間220万円)、母60歳(パート収入 年間60万円)、両親とは別居しています。
別居の場合、仕送りをしていることが扶養の条件ですが、父の年収から考えて、父は被扶養者にできないかと思います。母に対しての仕送りとして年間70万円を援助したとしても、母を被扶養者にすることはできないでしょうか。
また、父が75歳となり後期高齢者医療制度に移行した際、母をBさんの被扶養者とすることはできるでしょうか。

 

Cさんの場合
Cさんの年収は500万円、父65歳(64歳まで自営業 年金の受給を開始 年間78万円)、両親とは別居しています。

父をCさんの扶養に入れるため、仕送りを月10万円するとしますと、父の収入は年金78万円/年・仕送り120万円/年 を合わせて合計198万円となります。年収が198万円と判断され、扶養に入れないということになりますでしょうか。年金のみを判断材料としてくれるのでしょうか。

 

Dさんの場合
Dさんの年収400万円、父65歳(年金収入 年間80万円)、母65歳(年金収入 年間80万円)、両親とは別居しています。

父母ともに扶養に入れるためには、仕送りはどれくらい必要でしょうか?

回答

まず、被扶養者に収入がある場合の「収入要件」は、被保険者1人に対してご家族が1人の場合が前提となっています。
夫婦間には相互扶助義務がございますので、母親を扶養するのはまず「父親」となります。収入要件から被扶養者になる可能性がある場合にも、実際に被保険者が母親の生計を「主として」支援しているのかどうか、その状態が継続しているか、他に共同扶養義務者はいるかなどから総合的に判断がされます。
保険者(健康保険組合等)はそれぞれ独自の認定基準がありますので、一概に回答することはできませんことをご留意ください。

Aさんの場合
扶養の「収入要件」からは母親のみ被扶養者とすることは可能です。ただし、父親、母親の年間収入の合計は280万円で、それによりご夫婦が生計をたてていると考えるのが社会通念上は自然な考えとなります。母親の生計を父親が主として維持しているのであれば、母親を被扶養者とする認定はできません。
個々の家庭それぞれに様々なケースがございますので、被保険者が母親に対する「主たる生計維持者」であれば、被扶養者として認定されます。保険者の総合判断となります。
父親が後期高齢者医療制度に移行しても、扶養認定については変わりません。

Bさんの場合  
母親に対し、母親の収入以上の仕送りをしているか否かにとどまらず、その仕送りにより母親が「主として」生計を維持されているかの判断となります。母親の扶養義務者である父親の収入が220万円ですので、母親は父親に扶養されているとの判断となり、被扶養者となることはできないと思われます。

Cさんの場合
被保険者からの仕送り額は収入には含めません。年金のみが年収180万円の判断材料となります。ただし、被保険者以外の者からの仕送りは収入に含まれます。

Dさんの場合 
父親、母親の収入は80万円ですので、父親、母親それぞれに対して80万円を超える仕送りが収入要件としては必要となります。ただし、両親合わせた収入を元に判断基準を設けている保険者もあるため、やはり個々にお問合せしていただく必要がございます。
また、年収400万円の被保険者が両親に合計160万円の仕送りをした場合には、自身の生計費が240万円となります。被保険者に配偶者の被扶養者が既にいる場合には、一人あたりの生計費が120万円となり、父親、母親の生計費(年金収入+仕送り)180万円よりも低額となってしまいます。このような生計費についても扶養認定の条件としている保険者もあり、その場合には扶養認定はされません。
仕送りをいくらなら被扶養者とすることができるかについての回答は、保険者の認定基準、被保険者の家庭の状況、別居の両親の家庭の状況など、いろいろなケースがあり、一概に回答することはできません。会社が加入している健康保険の認定基準を確認した上で、扶養認定について正しい運用がされるよう状況調査(両親に同居家族はいるか、他に仕送りを受けているか、年金以外の収入の有無等)をし、お問合せをお願い致します。
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