【2022年10月施行】育児休業中の社会保険料免除要件の見直しを解説!!
目次
1.はじめに
2021年6月に「全世代型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が成立し、2022年1月より順次、施行されています。現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、全ての世代で広く安心を支えていく「全世代対応型の社会保障制度」を構築することが目的の改正です。具体的には、後期高齢者医療における一定以上の所得のある方の窓口負担割合の見直しや、傷病手当金の支給期間の通算化などがあります。
今回は、子ども・子育て支援の拡充を目的とした、育児休業中の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の免除要件の見直しについて、解説していきます。
2.育児休業中の社会保険料の免除要件の見直しの背景
2022年10月1日施行で、育児休業中の社会保険料の免除要件が改正されます。同時期に育児・介護休業法の改正が施行され、産後パパ育休(出生時育児休業)が創設され、育児休業の2回までの分割取得が可能になりますが、そちらにあわせた上で、これまでの問題点を見直した内容となっています。
育児・介護休業法の改正については、詳細は以下をご参照ください。
3.現行の育児休業中の社会保険料免除要件
現行の制度では、育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業および育児休業に準ずる休業)期間について、社会保険料が免除されます。育児休業等は原則、1歳までですが、保育所待機等特別な事情がある場合は2歳まで延長でき、会社に制度がある場合は3歳まで、社会保険料の免除が適用されます。
社会保険料が免除される期間は、育児休業等開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月(育児休業終了日が月の末日の場合は育児休業終了月)までと定められていて、月末時点で育児休業等を取得しているかどうかで判断できます。社会保険料の免除は月単位です。給与だけではなく、賞与・期末手当等にかかる社会保険料についても、免除の該当月に支払われるものは対象になります。
現行の制度では、不公平が発生しやすいなどの問題点がありました。例えば10日間などの短期で育児休業等を取得する場合、月を跨いで取得する人には社会保険料の免除がありますが、月を跨がない人には免除がありません。また、賞与月に育児休業等の取得者が多いなどの偏りが生じている可能性も指摘されていました。
4.改正後の育児休業中の社会保険料免除要件
2022年10月1日より、育児休業中の社会保険料免除要件が改正されます。
①給与にかかる社会保険料免除要件の見直し
・育児休業等開始月から終了日の翌日の属する月が異なる場合
→育児休業等開始月から終了日の翌日の属する月の前月までの期間について、社会保険料は免除されます。(改正前と変更はありません。)
・育児休業等開始月から終了日の翌日の属する月が同じ場合
→育児休業等開始月の月中の場合でも、育児休業等を14日以上取得した場合、その月の社会保険料は免除されます。
※出生時育児休業も社会保険料免除の対象となります。
※月を跨いだ育児休業等で最終月が月中までの取得の場合、最終月に14日以上の育児休業等の取得があっても、同月内ではないため、社会保険料の免除の対象にはなりません。
※育児休業等の日数は、土日等の休日、有給休暇等の労務に服さない日も含みます。
※ある月の月内に開始日と終了予定日の翌日がともに属する育児休業等が複数ある場合、当該月の「合計育児休業等日数」(そのすべての育児休業等の「育児休業等日数」を合算して算定)が14日以上あれば(休業は連続していなくても可)、該当月の社会保険料は免除されます。
※育児休業等日数の算定にあたり、一時的・臨時的な就労を行った日は、限定的な状況であることから、事後的に育児休業等日数の算定から除く必要はありませんが、出生時育児休業において、あらかじめ労使協定で定めた就業日数は、算定から除きます。
②賞与にかかる社会保険料免除要件の見直し
賞与にかかる社会保険料は、連続して1ヶ月超の育児休業等を取得した人に限り、社会保険料免除の対象となりました。1ヶ月を超える育児休業等については、改正前と同じく、月末時点に育児休業等を取得しているかによって社会保険料の免除を判断することになるため、育児休業等の期間内に月末が含まれる月に支給された賞与が、免除の対象となります。
※1ヶ月は暦により算定します。(例:11月16日から12月15日は1ヶ月で対象外)
※1ヶ月は暦日で判定するため、土日等の休日も含みます。
※連続して複数回の育児休業等を取得している場合は、1つの育児休業等とみなすこととするため、合算して算定します。
※土日等の休日や有休休暇等の労務に服さない日を挟んで、複数回の育児休業等を取得した場合は、実質的に連続しているため、1つの育児休業等とみなされます。
※賞与の社会保険料免除の基準となる一ヵ月超については、暦日で判定することとしており、一時的・臨時的な就労を行った日も、出生時育児休業においてあらかじめ労使協定で定めた就業日数も、算定から除きません。
③改正後の手続きについて
・育児休業等の取得届出や提出期限について、2022年10月1日以降に取得する育児休業等は、育児休業等期間終了後であっても一定期間(育児休業等の終了日から起算して暦による計算で1ヶ月以内)であれば、理由書等の添付がなくても、保険者等における受付が可能となっています。保険者によって対応が変わる可能性がありますので、ご確認の上、お手続きください。
・社会保険料免除の基準に該当しない育児休業等については、取得届出の提出は必要ありません。
・育児休業等の取得届出の提出にあたって、複数回の育児休業等の取得届出をまとめて提出するのではなく、育児休業等を取得する都度提出するとされています。ただし、育児休業等開始年月日と育児休業等終了年月日の翌日が同じ月に属する複数の育児休業等を取得した場合で、それぞれの育児休業等取得日数を通算し、14日以上となる場合は、複数回の育児休業等の取得届出をまとめて提出することが可能とされています。
5.おわりに
育児・介護休業法の改正にともない、産後パパ育休(出生時育児休業)や育児休業等の分割取得が可能になり、育児休業等の取得がしやすくなります。短期で育児休業等を取得する方の増加も見込めますので、社会保険料についても間違いのないよう、対応できるように準備しましょう。
【参考】
全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律について
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000846335.pdf
全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律による健康保険法等の改正内容の一部に関するQ&Aの送付について(令和4年3月31日事務連絡)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220413S0010.pdf
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