2022年4月1日~段階的に雇用保険料引き上げ(雇用保険法等の一部を改正する法律案)人事担当者が押さえておくべきポイントを解説!
目次
1.改正の趣旨
令和4年4月1日施行日として、雇用保険法が改正されました。(うち一部は同年7月1日、10月1日等施行)。本改正のおもな目的はコロナ禍でひっ迫している雇用保険の財源確保をめざし「激変緩和のための暫定的な雇用保険料率を定める」ことおよび、失業者支援や、企業支援を継続・拡充することで「雇用の安定と就業の促進を図る」ことです。
※以下厚労省による「改正の趣旨」抜粋
- 新型コロナウイルス感染症による雇用への影響等に対応し、雇用の安定と就業の促進を図るため、失業等給付に係る暫定措置の継続等、求人メディア等のマッチング機能の質の向上、地域のニーズに対応した職業訓練の推進等の措置を講ずる。
- 併せて、雇用保険財政の現状を踏まえ、激変緩和のための暫定的な雇用保険料率を定めるとともに、雇用情勢や雇用保険財政に応じた機動的な国庫 負担の仕組みの導入、雇用保険臨時特例法による国庫負担の特例の暫定措置の継続等の措置を講ずる。
参考URL:雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要
2.改正の背景
もともと、平成29年および令和2年の雇用保険法改正により、保険料率・国庫負担割合は令和3年度末までの予定で暫定的に引下げられていました。これを「引き続き、新型コロナウイルス感染症による雇用への影響等に対応するため、暫定措置の延長や見直しが必要」と判断されたことが、今回の見直しの背景となります。
さらに、以下のような背景もあります。
- 給付面の暫定措置(雇止め離職者への給付日数拡充等)
- コロナ禍での雇用調整助成金の特例支給のための財源措置等として、令和2年の雇用保険臨時特例法により新設された「一般会計からの繰入規定や、失業等給付の積立金から雇用調整助成金等に要する経費への借入規定」などの、暫定措置の延長や見直しについても盛込まれた内容となっており、失業者にとっても、企業にとっても、興味深いと思われるポイントが随所に見られます。
3.改正の概要
それでは次に改正の概要について、厚労省による「改正の概要」から抜粋してご説明いたします。
失業等給付に係る暫定措置の継続等【雇用保険法、雇用保険臨時特例法】
- 雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、雇用機会が不足する地域における給付日数の延長、教育訓練支援給付金等の暫定措置を令和6年度まで継続するとともに、コロナ禍に対応した給付日数の延長の特例について、緊急事態措置の終了日の1年後までを対象とする等の見直しを行う。
- 基本手当の受給資格者が事業を開始した場合等に、当該事業の実施期間を失業等給付の受給期間に算入しない特例を設ける。
- 雇用保険受給者が求職者支援制度に基づく訓練を受ける場合に、訓練延長給付等の対象とする。
求人メディア等のマッチング機能の質の向上【職業安定法】
新たな形態の求人メディア(ネット上の公表情報を収集する求人メディア等)について「募集情報等提供」の定義に含めるとともに、募集情報等提供事業者を、雇用情報の充実等に関し、ハローワーク等と相互に協力するよう努める主体として法的に位置づける。
地域のニーズに対応した職業訓練の推進等【職業能力開発促進法】
キャリアコンサルティングの推進に係る事業主・国等の責務規定を整備する。
雇用保険料率の暫定措置【雇用保険法、労働保険徴収法、特別会計法】
雇用保険の失業等給付に係る保険料率(原則0.8%)について、令和4年4月~9月は0.2%、10月~令和5年3月は0.6%とする。
次に今回の大きな改正点の4.雇用保険料率の引き上げ(暫定措置)について詳しく解説していきます。
4.雇用保険料率の引き上げ
雇用保険料率は令和4年度に二段階に渡り改定されます。雇用保険財政は積立金が枯渇する危機的状況にあり、コロナ関連による雇用調整助成金の支給が累計5兆円を超えるなど財源が厳しい状況が続いています。令和4年の雇用保険料率について、労使の負担感も踏まえた激変緩和措置として、以下のとおり引き上げられる方針です。
<現行>一般の事業 9/1000
①労働者負担 3/1000
失業等給付の保険料率 1/1000
育児休業給付の保険料率 2/1000
②事業主負担 6/1000
失業等給付の保険料率 1/1000
育児休業給付の保険料率 2/1000
雇用保険二事業の保険料率 3/1000
<改定後>令和4年4月~9月 一般の事業 9.5/1000
①労働者負担 3/1000
失業等給付の保険料率 1/1000
育児休業給付の保険料率 2/1000
②事業主負担 6.5/1000
失業等給付の保険料率 1/1000
育児休業給付の保険料率 2/1000
雇用保険二事業の保険料率 3.5/1000
令和4年10月~令和5年3月 一般の事業 13.5/1000
①労働者負担 5/1000
失業等給付の保険料率 3/1000
育児休業給付の保険料率 2/1000
②事業主負担 8.5/1000
失業等給付の保険料率 3/1000
育児休業給付の保険料率 2/1000
雇用保険二事業の保険料率 3.5/1000
全体の料率は一般の事業で上半期が9.5/1000、下半期で13.5/1000となります。
5.まとめ
雇用保険法はその前身は昭和22年に制定された「失業保険法」という法律であり、失業以外も含め雇用全般をサポートする主旨で昭和49年に制定された法律です。今では教育訓練や育児・介護など幅広い面で労働者に恩恵をもたらすだけでなく、雇用安定および能力開発事業として失業の予防、雇用状態の是正および雇用機会の増大、労働者の能力の開発および向上その他労働者の福祉の増進を図ることも行っています。
今回の2022年4月からの段階的に雇用保険料引き上げ(雇用保険法等の一部を改正する法律案)に関しても上記を鑑みて決定されたものと考えます。コロナウイルスの終息が見えない中、状況によっては今回のような保険料率の変更を伴う大きな改正が今後も行われるかもしれません。
また昨今、雇用・労働保険の分野においても電子申請が主流になりつつありますが、企業の人事担当者はこの目まぐるしく変わる人事・労務管理に関する最新情報を注視しながら日々の業務を進めることは容易なことではありません。
もし、給与計算・手続き業務や各種助成金などでお困りのことがあれば専門家である社会保険労務士に頼ってみることも一つの方法です。どんな小さなことでもお気軽にお問い合わせください。
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