こんな時はどうする? ~育児休業に関する手続きのまとめ~
育児休業中の社員の方はお子様の誕生への喜びの一方、やはり気になるのが生活をしていくためのお金のこと。育児休業給付金はもらえるのか、そして一体いくらもらえるのか、また社会保険料は免除されるのか・・・。
育児休業を取得される社員の方々にも様々なご事情があります。
社員の方より問い合わせがあっても、これってどうなるの?というような、厚生労働省のホームページやハローワークでもらえる手続き案内には記載されていないようなレアケースについてもご紹介いたします。
目次
1.育児休業に関する制度
まずは、育児休業を取得する社員の方のお手続きを確認しましょう。
育児休業を取得した際に行う手続きは以下のものがあります。
① 育児休業給付金(雇用保険)
育児休業給付金は、被保険者が1歳(いわゆるパパママ育休プラス制度を利用して育児休業を取得する場合は1歳2か月、保育所における保育の実施が行われない等の場合は1歳6か月又は2歳)未満の子を養育するために休業している場合、一定の要件を満たした場合に受給できます。
② 社会保険料免除(健康保険・厚生年金保険)
事業主が年金事務所又は健康保険組合に申し出ることで、育児休業中の社会保険料が被保険者本人負担分及び事業主負担分ともに免除となります。
③ 育児休業終了後の社会保険料の特例(健康保険・厚生年金保険)
育児休業終了した後に、育児等により報酬が下がった場合、被保険者の申し出により事業主を経由して届け出ることで、終了後の3カ⽉間の報酬額をもとに、新しい標準報酬⽉額を決定し、その翌⽉から改定をすることができます。
④ 3歳未満の子を養育する期間の年金額計算の特例(厚生年金保険)
子どもが3歳までの間、勤務時間短縮等の措置を受けて働き、それにともなって標準報酬月額が低下した場合、被保険者が事業主を経由して申し出ることで子どもが生まれる前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができます。
以上が育児休業者に関する手続きの主なものとなります。その中でも特に判断に迷われる育児休業給付金について詳しく説明させていただきます。
2.育児休業給付金の概要
受給資格
1歳(いわゆるパパママ育休プラス制度を利用して育児休業を取得する場合は1歳2か月、保育所における保育の実施が行われない等の場合は1歳6か月又は2歳)未満の子を養育する被保険者で次のいずれにも該当する場合。
① 1歳未満の子を養育するために「育児休業」を取得した被保険者であること
・「育児休業」とは、職場復帰を前提に取得するものをいい、休業取得時に退職が確定(予定)している休業は支給の対象となりません。
・育児休業対象者は男女を問いません。
・育児をする子は実子・養子を問いません。
・期間雇用者も支給対象となります。
② 育児休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヶ月以上あること
支給要件
① 支給単位期間(育児休業開始日から1ヶ月ごとに区切った期間)の初日から末日まで継続して被保険者資格を有していること。
②支給単位期間において、就業していると認められる日数が10日以下であること。
※10日を超える場合は、就業していると認められる時間が80時間以下であること。
③ 支給単位期間に支給された賃金額が、休業開始時の賃金月額の80%未満であること。
支給金額
休業期間中に賃金が支払われていない場合
休業開始時賃金日額×支給日数×67%(ただし、育児休業開始から180日経過後は50%)
(賃金月額)
※休業開始時賃金日額とは、育児休業開始前6ヶ月の賃金を180で除した額です。
※支給日数とは、30日です(休業終了日を含む支給単位期間は暦の日数)。
例えば…
1ヶ月の賃金が18万円の場合
休業開始時賃金日額=18万円×6ヶ月÷180=6,000円
支給額=6,000円×30日×67%=120,600円(180日経過後は90,000円)
休業期間中に賃金が支払われている場合
- 支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の13%(180日経過後は30%)以下の場合
休業開始時賃金日額×支給日数×50%
- 支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の13%(30%)超~80%未満の場合
休業開始時賃金日額×支給日数の80%相当額と賃金の差額
- 支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の80%以上の場合
支給されません
休業開始時賃金月額について、6ヶ月分の賃金は賃金支払対象期間(賃金締切日の翌日から次の賃金締切日)の基礎日数が11日以上の月となりますので、体調不良でほとんど休んでしまった、という期間についてはこの計算に含まれないことになります。
3.実際にあった事例と手続き方法
Q.入社1年未満のため育児休業が取得できないが、休業(無給)をしている社員は育児休業給付金を受給できますか?
A.育児休業給付金を受給できる可能性があります。
会社が育児休業と認めていなくても、育児のために休業をしており、前職と通算して被保険者資格が満たせる(賃金支払基礎日数が11日以上の月が12カ月以上ある)場合については育児給付金を受給できる可能性があります。なお、社会保険料の免除については会社が育児休業と認めていないため、免除されませんのでご注意ください。
Q.養育する子が養子の場合、いつから育児休業給付金を受給できますか?
A.養子縁組が成立するまでの監護期間から受給することができます。
育児・介護休業法がH29の改正により、以下の関係にある子についても育児休業の対象となりました。
① 特別養子縁組のための試験的な養育期間にある子を養育している場合
② 養子縁組里親に委託されている子を養育している場合
③ 当該労働者を養子縁組里親として委託することが適当と認められるにもかかわらず、実親等が 反対したことにより、当該労働者を養育里親として委託された子を養育する場合
また、育児休業ですので、社会保険料は免除となります。
育児休業給付金の申請には、子の住民票、ご自身の住民票、監護期間のわかる書類(裁判所が発行した書類等)が必要となりますが、必要となる書類については管轄のハローワークにお問い合わせください。
Q在宅でできる副業により収入がある場合、育児休業給付金を受給できますか?
A.就業時間によっては受給できます。
育児休業中に本業で就業した場合と同様に、10日以下もしくは80時間未満であれば育児休業給付金を受給することができます。就業日数及び就業時間についてはご本人様に確認し、本業の事業主が給付金の申請を行うことになります。
その際、添付する書類等は管轄のハローワークにご確認ください。
4.まとめ
育児休業を取得された社員の方は、収入がなくなることでご自身の生活について不安に感じているかもしれません。育児休業中の方には様々な経済支援制度がありますので、安心して子育てをしていただくようこちらを参考にしていただければ幸いです。
なお、今回ご紹介した事案につきましては一例ですので、実際にお手続きする際は管轄のハローワークにご相談ください。
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