法改正に伴う同一労働同一賃金についてのまとめ

平成30年6月の国会において、働き方改革関連法が成立しました。

この法律は、育児と介護の両立など、労働者の多様性を尊重し、各人の能力やライフスタイルに応じた働き方を認めることで、雇用の安定と職業生活の充実、労働生産性の向上等を促進し、労働者が能力を有効に発揮できるようになることを目指して制定されました。

 

今回は数ある改正点のなかで、同一労働同一賃金についてご紹介いたします。

 

同一労働同一賃金とは?

労働の内容が同じ、もしくは同等の労働者には同一の賃金が支払われるべきであるという原則です。

この原則は単に基本給のみならず、賞与や休暇、福利厚生施設の利用など、労働者に対するさまざまな待遇に対して適用されるものです。

 

2018年の時点で、我が国における非正規労働者は2,000万人を超え、労働者全体における非正規労働者の割合は37%と年々増加傾向にあります。

そのため今回の法改正は、多様化していく働き方に伴う人事、給与制度の見直しをするうえで非常に重要なものとなるでしょう。

 

施行日

大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用されます。

 

法改正のポイント

今回の改正内容として、3つの重要なポイントがあります。

 

①不合理な待遇差の禁止

同一企業・団体における正社員(無期雇用フルタイム労働者) と非正規社員(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。

しかしどのような場合に「不合理である」とされるのでしょうか。改正パートタイム・有期雇用労働法8条では、

 

「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」

 

としています。

今回の改正によって不合理性の判断がされる待遇の内容がより具体的になり、またその判断に際して、給付の趣旨・性格に応じて判断するという点が明文化されました。

すなわち、

 

「なぜその賃金が支払われているのか(いないのか)」

「給付の目的を鑑みて、どのようにしてその額が決定されているのか」

 

という点が考慮されることが明確になりました。

 

わかりやすい例として、厚生労働省が作成した「同一労働同一賃金ガイドライン」では、待遇格差が問題になる場合と、問題にならない場合の典型例が挙げられています。

 

【基本給】

≪問題となる場合≫

・基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXが有期雇用労働者であるYに比べて多くの経験を有することを理由として、Xに対し、Yよりも基本給を高く支給しているが、Xのこれまでの経験はXの現在の業務に関連性を持たない。

・基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給(出来高制)しているA社において、通常の労働者が販売目標を達成した場合に行っている支給を、短時間労働者であるXについて通常の労働者と同一の販売目標を設定し、それを達成しない場合には行っていない。

 

≪問題とならない場合≫

・A社においては、定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある通常の労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務の内容及び配置に変更のない短時間労働者であるYの助言を受けながら、Yと同様の定型的な業務に従事している。A社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく、Yに比べ基本給を高く支給している。

 

【賞与】

≪問題となる場合≫

賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社においては、通常の労働者には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。

 

≪問題とならない場合≫

・賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXと同一の会社の業績等への貢献がある有期雇用労働者であるYに対し、Xと同一の賞与を支給している。

 

②労働者に対する、待遇に関する説明義務の強化

非正規社員は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるようになります。

事業主は、非正規社員からその求めがあった場合は説明をしなければなりません。

まとめると、以下のようになります。

・雇い入れ時における雇用管理上の措置の内容(賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用など)の説明義務

・求めがあった場合における、待遇決定に際しての考慮事項の説明義務

・求めがあった場合における、正社員との間の待遇差の内容・理由の説明義務

・説明を求めた労働者に対する不利益取り扱いの禁止

以上の4点が新たに創設されました。

 

③行政による事業主への助言・指導等や、裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の整備

各都道府県の労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行うことができるようになりました。現行法下では、待遇が不合理であるか否かの判断は裁判によってなされてきました。

 

しかし裁判は手続きが煩雑であることや、解決までに長い時間を要するので、お互いに多大な労力を強いられるものでした。

そのため、今回の改正で新たに行政ADRが利用できるようになりました。

「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、行政ADRの対象となります。

 

具体的には、労働者または企業から労働局に求めがあった場合、都道府県労働局長から紛争解決のための指導や勧告を得ることができます。

また労働局長は調停の申請があった場合に、必要と認めるときは紛争調整委員会に調停を行わせることができるようになりました。

 

※裁判外紛争解決手続き(行政ADR)とは?

訴訟手続きによらない紛争解決方法のこと。ADRは民事訴訟と比べて費用が安く済む、時間がかからない、手続きが簡素であるなどといったメリットがある。

 

改正後の注意点

同一労働同一賃金は、同じ職務を担当している社員については正社員であっても非正規社員であっても、報酬の水準は同じであるべきという原則です。

しかし、同じ職務を担当している場合であっても、研修の有無や勤務地の異動の可能性の有無等、担当している職務以外の面において、各社員への「将来に対する期待」が異なっていることが認識できる場合には、それが賞与や手当などの報酬の水準に差を設ける根拠であるとして、待遇の差異が許容できるものだと判断されることになります。

 

各企業に求められる対応

今回の法改正に伴い、企業には就業規則や賃金規定の作成・見直しが求められます。確認する点としては、以下の3点になります。

 

① 社内にどのような就業形態の社員がいるか(非正規社員を雇っているか)

② 正社員と非正規社員の待遇に差はないか

③ 差がある場合に、その合理的な理由を説明することができるか

 

まとめ

改正法の施行後においても上記の例で挙げたような待遇の差がある場合は、法令違反にあたります。

その場合、正社員との待遇の差に合理的な理由がないとして訴えられた時、過去にさかのぼって差額分の支払いを命じられるなどのリスクがあります。

 

社員が納得して働ける仕組みを作ることで、離職防止や仕事の質の向上にもつながるため、改正法が施行される前にぜひ一度、社内規則や賃金規定を見直してみてはいかがでしょうか。

 

もし就業規則や賃金規定、その他社内制度に不安などございましたら、下記ホームページの問い合わせフォームより、お気軽にご相談下さい。

 

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