【厚生年金保険】マイナンバーの提出が義務となる手続きを確認しよう【雇用保険】

 

 

じわりじわりと本格化しつつある社会保険とマイナンバーの連携。
平成30年に入り、移行期間にあるものから法的義務となっているものまで、新しい取り組みが種々始まっております。

 

今回は人事担当なら(人事担当でなくても!)おさえておきたい、社会保険手続きにおけるマイナンバー運用について、いくつかご紹介いたします。

 

 

1. マイナンバーによって、日本年金機構への住所変更の届け出が不要となる!

 

 

平成30年3月5日より、今まで日本年金機構に届け出ていた手続きのうちいくつかが、マイナンバーとの紐づけにより省略できることとなりました。
省略できる届出は、具体的には以下のようなものが挙げられます。

 

① 住所変更届
② 氏名変更届
③ 死亡届

 

*但し③死亡届に関しては、省略できるのは国民年金の第一号被保険者と第三号被保険者のみです。

第ニ号被保険者(厚生年金被保険者)が死亡した場合はマイナンバーを紐づけしていたとしても手続きの省略はできず、従来通り資格喪失届の提出が必要になります。

 

例えば引っ越しをした時、今までは従業員が役所で転出、転入手続きをする一方、事業主に住所変更を申し出て、事業主が日本年金機構の事務センター等に住所変更届を提出して手続きをしなければなりませんでした。

 

 

(1)従業員が役所で転出、転入手続きを行う

(2)従業員が事業主に住所変更の旨を申し出る

(3)事業主が当該従業員の住所変更届を日本年金機構に届け出る

 

 

しかし、今後は従業員が役所で手続きをすると、住基ネットを用いて日本年金機構が住民票の異動を把握することが可能となるため、事業主が住所変更届を提出する必要がなくなるのです。

 

(1)従業員が役所で転出、転入手続きを行う

(2)従業員が事業主に住所変更の旨を届け出る

(3)事業主が当該従業員の住所変更届を年金事務所に届け出る ⇒不要となります

 

 

事業主として従業員の住所変更を把握することは必要ですが、その後の日本年金機構への手続きの一切が不要となるのですから、従業員数が多ければ多いほど、かなりの業務量が削減できるようになることがわかります。

これが、住所変更のみならず氏名変更、国民年金第3号被保険者住所変更等も対象となりますので、ぜひ活用したいところです。

 

2. 基礎年金番号、マイナンバー、住民票住所の紐づけの仕組み

 

 

 

先述の手続きを省略するにあたって必要なのは、基礎年金番号とマイナンバー、住民票住所が正しく紐づいているということ。

 

現在、役所での転出、転入手続きの際にはマイナンバーが必要ですよね。
この時点で住民票住所とマイナンバーは既に紐づいていることになります。

そのうえで更に基礎年金番号とマイナンバーが紐づくことで、住民票住所の変更を日本年金機構が把握できるようになる、ということになります。

 

 

それでは、基礎年金番号とマイナンバーを紐づけるために、会社で集めたマイナンバーを改めて日本年金機構に連絡しなければならないのでしょうか。

 

 

実は、おおよその厚生年金の被保険者の基礎年金番号とマイナンバーは既に紐づいております。

ですので、原則は改めてマイナンバーの提出は必要ないということになります。

 

いつの間に、と感じるかもしれませんが、筆者が年金事務所に確認をしたところ、全く確認のとれない一部のイレギュラーを除き、日本年金機構は既に住基ネットを用いておおよその調査を終了しているとの回答でした。

 

ですので、現在基礎年金番号とマイナンバーが紐づいている被保険者に関しては、各種変更届の日本年金機構への提出が不要になります。

 

 

因みに、今まで基礎年金番号を記載していた取得手続き等では、基礎年金番号の代わりにマイナンバーを記載することが望ましいとされております。
(2018年3月現在は基礎年金番号を記載することで返戻を受けることはございません。)

 

また、今後、マイナンバーによる行政機関間の情報連携の仕組みを活用し、これまで各種申請時に必要としていた住民票などの添付書類提出の省略も予定されているとのことです。

 

 

詳しくは日本年金機構の【日本年金機構におけるマイナンバーへの対応】のページをご覧ください。

 

 

3. そもそも住民票住所で届出ていない場合は要注意!

 

 

しかしここで注意したいのが、住民票住所と現住所が異なる従業員に関して、現住所にて日本年金機構への登録をしている場合です。

この場合は従来通り住所変更届の手続きが必要となります。

 

最近、日本年金機構より従業員の住所の問い合わせがあったという事業主様もいるのではないでしょうか。

これは住基ネットに登録されている住所(住民票住所)と日本年金機構に登録されている住所(現住所)が異なる場合の本人確認です。

 

日本年金機構としては、住民票住所の変更がわかれば厚生年金の登録住所も同一のものに変更することが可能なのですが、あえて現住所で登録をしているという従業員(あるいは事業所)の場合には、届出があるまで住民票住所への変更をしません

 

 

ここで一つ注意が必要なのは、日本年金機構には現住所で登録しているにも関わらず、その後に住民票の移動などを行った場合です。

現段階では現住所のままの登録であったとしても、その後の住民票住所の変更に際して日本年金機構が住基ネットと紐づけを行うことにより、自動的に住民票住所の登録に更新がされてしまいます。

 

ですので、今後も現住所で登録を続けるという場合は、従来と同様に現住所が変わるたびに、また住民票住所が変わる際にも年金事務所への住所変更届の提出が必要となります。

 

 

また、今後は住民票住所での登録をして手続きをなくしたいという場合は、現住所の登録から住民票住所の登録に変更する住所変更届の提出が必要になります。

 

日本年金機構からの通知等は現住所に届いてほしい、忙しくて住民票を移す暇がない、中期の出張など一時的な住所だから住民票は移さない、など個別に事情がおありかと思います。

原則は住民票住所に紐づいてしまうところ、それでは都合が悪いという場合には届出をするということを忘れないようにしてください。

 

 

4. 雇用保険の手続きはマイナンバー提出「義務」!健康保険は?

 

 

 

年金以外にも社会保険の手続きに関して、大きな動きがありました。

その一つが、平成30年5月以降、雇用保険手続きの際にマイナンバーの記載が必須となるというもの。

 

具体的には以下の手続きに関して、マイナンバーの記載のないものに関しては返戻の可能性がございます。

 

 

① 雇用保険被保険者資格取得届
② 雇用保険被保険者資格喪失届
③ 高年齢雇用継続給付支給申請
④ 育児休業給付支給申請
⑤ 介護休業給付支給申請

 

 

③④は初回申請時に申請書へのマイナンバーの記載が必要となります。
(平成28年1月以降に初回申請を行った際にマイナンバーの届出を行っていない場合は、2回目以降の申請時等に個人番号登録・変更届をあわせて提出が必要です。)

 

こちらは年金事務所の

「取得手続きの際には基礎年金番号かマイナンバーのいずれかを記載」

「住民票住所とマイナンバーが紐づけられる」

というようなものではなく、マイナンバーの提出が義務となります。

 

厚生労働省のリーフレットでも「必要なマイナンバーを記載しないことは法令違反に当たる」とかなり強い文言で書かれていることが印象的です。

マイナンバーを提出することに関して抵抗感を持つ従業員もいるかとは存じますが、こちら周知徹底することで円滑な手続きを行ってください。

 

 

従業員の入退社に迅速に対応しなければならない①②に関しては、特に注意が必要です。
因みに、事業主のマイナンバー提出義務を知ってなお従業員がマイナンバー提出に応じない、というような場合は未記載でも手続きが可能とのことです。

詳しくは厚生労働省の各種リーフレットをご確認ください。

 

 

 

健康保険は利用団体によって運用方法も細かい部分では異なりますが、既にマイナンバーによる情報連携そのものは始まっております。
例として、協会けんぽでは以下の手続きについて、税情報の照会により(非)課税証明書の添付書類の省略が可能となります。

 

 

① 高額療養費
② 高額介護合算療養費

③ 食事療養標準負担額の減額申請

④ 生活療養標準負担額の減額申請
⑤ 基準収入額適用申請
⑥ 限度額適用・標準負担額減額認定申請

 

 

①~④のうち、70歳以上の方が対象となる低所得者Ⅰの申請をする場合、及び⑥については、平成30年6月まで、引き続き(非)課税証明書等の添付書類が必要です。

また、①~④のうち、診療月(②は基準日)が平成29年7月以前の申請については、今後も引き続き、被保険者の(非)課税証明書等の添付が必要となりますのでご注意ください。

 

どれも「但し書き」の多いものになりますので、リーフレットに即して漏れのない運用を行っていただければと思います。

(協会けんぽ【情報連携の本格運用の実施】でご検索下さい。)

 

 

5. おわりに

 

 

いかがでしたか。
ついに動き出したようにも感じるマイナンバーの運用。

まだ部分的ではありますが、手続きが省略可能となったものもあり、今後更なる連携が始まっていくことも想像に難くありません。

 

最新情報を追って慎重に取り扱っていきましょう。

 

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Ari

大小様々な規模の企業の社会保険手続きや給与計算業務に携わりながら、主に自分が知りたいことを記事にしている。業務効率化のためのツールも開発中。趣味は読書。某小さくなった名探偵マンガの主人公の書斎を再現することが夢。

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