病気になって、就労不能の場合、賃金はどうしますか。

仕事をするとき、病気になったり怪我をしたりして、休まなければならない場合はどうしますか。普段一生懸命頑張って、働いているのに、欠勤で給与がなくなってしまっては悔しいではありませんか。

実は就労不能の場合は、健康保険の傷病手当金を申請することができます。これから、傷病手当金について、紹介します。

1.支給要件

傷病手当金は被保険者が疾病又は負傷により療養のため労務不能となり、報酬を得ることができない場合に、療養中の所得保証を目的とする保険給付です

次のいずれにも該当している場合に支給されます。

  • 療養のためであること
  • 労務に服することができないこと(労務不能)
  • 労務不能の日が継続して3日間あること
  • 労務不能により報酬の支払がないこと

2.支給額

従来の傷病手当金は、休業前の標準報酬日額を基礎として支給額が決定される仕組みであり、休業直前に標準報酬を高額に改定すれば、高額な傷病手当金を受給することが可能でした。これを防止するため、平成28年4月1日から、原則として、直近1年間の報酬を基礎として支給額が決定されることになりました。

傷病手当金の額は、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額とします。

ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が12月に満たない場合にあっては、月の①②に掲げる額のうちいずれかすくない額の3分の2に相当する金額とします。

  • 傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額
  • 傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の9月30日における前被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額の30分の1に相当する額

3.支給期間

傷病手当金は、支給を始めた日から起算して1年6月を限度として支給します。傷病手当金の支給を受けている期間中に疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき傷病手当金の支給を受けることができるときは、それぞれの疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に係る傷病手当金について算定される額のいずれか多い額を支給します。

4.報酬等との調整

  • 報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、傷病手当金を支給しません。ただし、受けることができる報酬の額が、傷病手当金の額より少ないときは、その差額を支給します。
  • 同一の傷病につき障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金は支給しません。ただし、その受けることができる障害厚生年金の額につき厚生労働省令で定めるところにより算定した額が、傷病手当金の額より少ないときは、当該傷病手当金の額と次の表の場合に応じてそれぞれに定める額との差額を支給します。
  • 同一の傷病につき障害手当金の支給を受けることができるときは、当該障害手当金の支給を受けることとなった日から、その者がその日以後に傷病手当金の支給を受けるとする場合の傷病手当金の額の合計額が、当該障害手当金の額に達する日までの間、傷病手当金は支給しません。ただし、当該合計額が障害手当金の額に達するに至った日において当該合計額が障害手当金の額を超える場合において、報酬の全部若しくは一部又は出産手当金の支給を受けることができるとき、その他の政令で定めるときは、当該合計額と当該障害手当金の額との差額その他の政令で定める差額については、この限りではありません。
  • 労災保険の休業補償給付を受けている間は、傷病手当金を支給しません。ただし、傷病手当金の額の方が多い場合には、その差額が支給されます。

5.受給手続き

傷病手当金申請書を保険者に提出します。

 

6.特別な処理や考え方が必要な例

<1>傷病手当金と出産手当金を両方とも受給できるか?

傷病手当金と出産手当金の支給期間がかさなったときは、出産手当金のみが支給されます。出産手当金の受給期間が終了したところで、傷病手当金の受給開始となります。

<2>退職後の傷病手当金の受給

次の2点を満たしている場合、引き続き残りの期間について受けることができます。

・被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間 (健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。

・資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
(なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません。)

<3>傷病手当金と失業給付は同時に受給することができません。

失業給付は、ハローワークで求職の届出を出すことでもらえるようになりますが、傷病手当金を受給している状態はすなわち働けない状態となります。そのため、失業給付は傷病手当金の受給期間が終わってから(傷病が治ってから)もらえるように、予めハローワークへ期限延長の申請が必要となります。

7.まとめ

傷病手当金を申請する場合は、欠勤確認ができる出勤簿と賃金台帳の提出が必要です。また、医者の診断証明も申請書に記入する必要があります。

傷病手当金の給付があれば、労働者の生活や、病気治療期間に賃金が保証されます。たとえ体調を崩してしまって就労不能になっても、安心して治療に専念できます。

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