「算定基礎届」が間違っていると、社会保険料を正しく払えません!
社会保険料を支払うには、社員の給与をもとに計算をします。
しかし、健康保険料と厚生年金保険料には、「標準報酬月額」というものが設定されており、理解しておかないと適切な保険料を支払うことができないかもしれません。
標準報酬月額とは?
社会保険料は、毎月支払われる給与や賞与によってその金額が変化します。
毎月労働者に支払われる給与が常に一定であれば、社会保険料の計算はそれほど苦労しませんが、実際には毎月の給与が変動しないことはほとんどありません。
そこで、社会保険のうち、「健康保険」と「厚生年金保険」では、毎月計算をしなくて済むように、「標準報酬月額」を設定しています。
標準報酬月額とは、「報酬の月額を等級で表し、社会保険料や保険給付額を決めるための基準になる金額」を指しています。
報酬月額の算出方法
標準報酬月額は、「算定基礎届」を毎年7月1日から7月10日までに管轄の年金事務所へ提出することで決定されます。
算定基礎届を提出するには、被保険者の「報酬月額」を算出しなければなりません。
算定基礎届提出の対象となるのは、被保険者のうち7月1日時点の全ての労働者です。
報酬月額は、毎年4月、5月、6月に支払った賃金総額の平均額です。
ただし、4~6月のいずれかで、報酬の支払基礎日数が17日に満たない月があった場合は、その月を除いて計算します。
また、パートタイマーの標準報酬月額の計算は、以下のようになっています。
(参照 全国健康保険協会 協会けんぽ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/sbb3165/1963-232)
「報酬」の範囲
標準報酬月額を決める場合の「報酬」とは、賃金、給料、手当、賞与など、「被保険者が労働の対償として受けるものすべて」を指しています。
標準報酬月額の等級
標準報酬月額は、健康保険では第1級から第50級、厚生年金保険では第1級から第31級と区分されています。
この区分と照らし合わせることで、各被保険者の標準報酬月額が決定されます。
例として、東京都の等級区分を示します。
東京都[( )内は厚生年金保険の標準報酬月額等級]
(平成29年9月分[10月納付分]からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表[東京都] より一部抜粋)
この表から、例えば報酬月額が153,000円である労働者の標準報酬月額は150,000円、報酬月額が325,000円である労働者の標準報酬月額は320,000円であることが分かります。
算定基礎届と定時決定
事業主から提出された算定基礎届をもとに、厚生労働大臣(日本年金機構、年金事務所)は毎年1回標準報酬月額を決定します。
これを「定時決定」といいます。
標準報酬月額は、9月から翌年8月の1年間適用され続けるので、保険料の計算にとって非常に重要です。
算定基礎届の提出方法
事業主は、毎年7月10日までに算定基礎届を郵送で日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所に提出する必要があります。
提出は届出用紙だけではなく、CDやDVDなどの電子媒体で行うことも可能です。
なお、電子媒体で提出するには、日本年金機構ホームページで「磁気媒体届書作成プログラム」をダウンロードしなければなりません。(http://www.nenkin.go.jp/denshibenri/denshibaitai.html)
標準報酬月額の決定方法
標準報酬月額は日本年金機構、年金事務所が決定します。この決定は大きく分けて4種類あります。
・定時決定
毎年7月の算定基礎届による決定です。
標準報酬月額は9月から翌年8月まで適用されます。
・随時改定
被保険者の報酬のうち、昇給や降給などによって固定的な手当が大幅に変更されたときは、毎年1回の定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。
これを随時改定といいます。
昇給、降給などにより固定的賃金が変更され、変動があった月から3ヶ月間の平均報酬と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差がある場合、事業主は被保険者月額変更届を提出しなければなりません。
7月以降に変更した場合、変更後の標準報酬月額を翌年8月まで使用します。
・資格取得時の決定
新しく被保険者の資格を取得した人の標準報酬月額は、事業主が雇用契約によった報酬月額を届け出ることで決定されます。
これを資格取得時の決定といいます。
・育児休業等を終了した際の改定
育児休業終了日において3歳未満の子を養育する場合に限り、育児休業等を終了した後、育児を理由に報酬が低下していたとき、その報酬と標準報酬月額の差が大きい場合があります。
このため、被保険者は事業主を通じて、標準報酬月額を低下後の報酬に合わせたものへ改定することができます。
これを、育児休業等を終了した際の改定といいます。
事業主は被保険者の申出があった際、「健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出しなければなりません。
育児休業等終了月以後3ヶ月間に受けた報酬の平均額を等級区分に当てはめ、1等級でも差が生じた場合には改定します。
保険者決定
通常の方法で報酬月額を算定することが困難な場合や、著しく不当である場合は、厚生労働大臣(日本年金機構、年金事務所)が報酬月額を算出し、標準報酬月額を決定します。
これを保険者決定といいます。
1.算定が困難な場合
- 病欠等で4~6月の報酬を受けない場合
- 4~6月の報酬支払基礎日数が17日に満たない場合
これらの場合には、従前の標準報酬月額で決定します。
2.著しく不当である場合
- 4~6月の間に、さかのぼった昇給によって数ヶ月分の差額を一括して受けるなど、通常受けるべき報酬以外の報酬を受けた場合、差額を引いて報酬月額を算出します。
- 4~6月のいずれかの月で低額の休職給を受けた場合、その月を除いて報酬月額を算出します。
- 4~6月のいずれかの月でストライキによる賃金カットがあった場合、その月を除いて報酬月額を算出します。
- 年平均によって算出された標準報酬月額と、前年の標準報酬月額との間に2等級以上の差があった場合、前年の標準報酬月額で決定します。
まとめ
標準報酬月額が正しく決定されるためには、誤りのない算定基礎届を提出しなければなりません。
間違いのある算定基礎届が提出されてしまうと、労働者の社会保険料の支払いが上手くいかなくなってしまうので、作成の際には細心の注意を心がけましょう。
(参照 日本年金機構「厚生年金保険」 http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/index.html)
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