アウトソーシングしても業務負荷が減らない3つの理由
先日、ある大手上場企業より相談を受けました。それは、給与計算を外部にアウトソースしているにもかかわらず、人事部スタッフの残業があまり減らないという悩みでした。日本を代表する大企業でも聞いたことがありますが、実は人事部門の残業問題、生産性向上の相談がいま非常に増えています。
先進34ヵ国で構成されるOECD(経済協力開発機構)加盟国の2012年の労働生産性を見ると、日本の労働生産性は7万1619ドルで、就業1時間当たりで見た日本の労働生産性は40.1ドル(4250円)で、主要先進7ヵ国では1994年から19年連続で最下位となっています。(「日本の生産性の動向2013年版」参照)これは一つには「アウトソーサーの使い方の優劣」にあるのと私は考えております。
まだまだ低い日本のアウトソーサー活用率
給与計算業務でいうと、業務をアウトソースしている企業の割合は、一説では米国で7割、欧州では5割と言われているのに対し、日本ではまだ1割強くらいではないか、と言われています。実際に弊社のクライアントの半分程度は外資系企業です。一つには「ヘッドカウント=組織の人数」といって、日本法人で雇用できる人員の数が海外本社で予算が決められている場合が多いのが理由です。特にコストセンターである人事部門スタッフは業務に比して雇えるヘッドカウントが少ないため、アウトソーサーに業務委託せざるを得ない、という事情があるようです。
アウトソーサーを使いこなせない3つの理由
上記以上に日本企業では、付加価値の低いオペレーション業務から高付加価値の企画業務まで全て自社で内製化する傾向がいまだに根強い。それだけ彼らは「アウトソース慣れ」していないため、外部企業を徹底的に使いこなす方法に習熟していないのではないかと感じます。
給与計算で言うと、アウトソースしても社内の業務負荷が減らない原因の代表的なものは下記になります。
- アウトソーサーの指定するフロー、ファイルのフォーマットに自社業務を合わせなければならず、その分の負荷が増大している
- アウトソーサーの業務品質が良くなく、結局自社でチェックを何度もするため、負荷が増えている
- そもそもの業務フロー自体に非合理な部分や標準化されていない部分があり、一番手間がかかる部分がアウトソースできない
1については、「勤怠確定した後のフローからしかアウトソースを受けない」というアウトソーサーも多いですし、勤怠データのフォーマットを指定してくる会社も多いです。しかし、実際給与計算の手間の7割は「勤怠確定するところまで」ですからそこからアウトソースできる会社でないと、あまり意味が無いのです。
2については、まさに本末転倒です。アウトソーサー選定の際に、クオリティ確保のための業務フローがどうなっているかを精査するべきですし、実際に彼らの現場に赴いてどのような場所で行っているか、どんなスタッフが業務を行っているか、訪問してみるべきでしょう。きちんと挨拶ができるか、オフィスが雑然としていないか、スタッフの表情が生き生きしているか、そんなことも実はクオリティに直結するのです。とはいえ、人間のやることですから、ミスが起こる事も有ります。その際は、アウトソーサーの業務フローにまで踏み込んで改善を要望すること。オフィスへの視察を拒んだり、こうした業務フローの改善の要望を聞かないような会社は選定からはじいたほうがよいでしょう。
3については、どんな大企業の人事部でもなかなか出来ていない場合が多いです。今月、来月の給与を誤りなくオペレーションすることが優先され、立ち止まってマニュアル化したり、改善をはかったりする余裕が無い場合が多いからです。この点については、こうした業務改善コンサル的な視点や経験を持ち、業務標準化ができるようなアウトソーサーを選定するのが大事だと思います。
いかがでしょうか?アウトソーサーを選ぶ際には単なる「事務代行業」ではなく、「人事実務家」としての視点と他社事例を持った会社と、パートナーとして喧々諤々の議論ができるような関係を築いて行くのが正解だと思います。
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