会社の成長と社員の成長をつなぐ人事制度のつくり方

事業が少しずつ大きくなってきた一方で、社員に求める役割や評価の基準があいまいになってきたと感じています。若手、中堅、管理職で期待することも違うはずなのですが、今の制度ではその違いをうまく伝えられていません。会社の成長と社員一人ひとりの成長をつなげるには、人事制度をどのように見直せばよいのでしょうか?

回答

人事制度を見直すときに大切なのは、「今いる社員をどう評価するか」だけでなく、「これから会社が成長していくために、社員にどのような成長を期待するのか」を整理することです。

会社が小さいうちは、個人の頑張りや経験で仕事が回ることも多くあります。しかし、事業が広がり、社員数が増えてくると、それだけでは組織がうまく動きにくくなります。若手には基本を身につけてほしい。中堅には自分の仕事だけでなく周囲にも良い影響を与えてほしい。管理職には成果を出すだけでなく、人を育て、組織をまとめてほしい。こうした期待を制度の中で分かりやすく示すことが重要です。

人事制度は、社員に対する会社からのメッセージでもあります。
「何を大切にしているのか」「どのように成長してほしいのか」「次の段階に進むには何が必要なのか」が伝わる制度であれば、社員は自分の成長の方向を考えやすくなります。
見直しは、次の順番で考えると整理しやすくなります。

1. まず、会社のこれからの姿を確認する
最初に考えたいのは、会社がこれからどのような方向に進むのかです。新しい事業を増やすのか、既存事業を強くするのか、管理職を増やす必要があるのか、若手を早く育てたいのか。事業の方向によって、必要な人材像は変わります。
ここがあいまいなまま制度を作ると、評価項目や等級基準もぼんやりしてしまいます。

2. 階層ごとに期待する役割を分ける
次に、若手、中堅、リーダー、管理職など、階層ごとに期待する役割を整理します。
たとえば、若手には「基本業務を正確に行い、分からないことを確認しながら成長すること」が期待されます。中堅には「自分の担当領域で成果を出し、後輩や周囲にも良い影響を与えること」が求められます。管理職には「チーム全体の成果を高め、人材育成にも責任を持つこと」が期待されます。
このように段階ごとの期待を明確にすると、社員は「次に何を伸ばせばよいのか」を理解しやすくなります。

3. 評価項目を具体的な行動にする
制度の現場でよく起きるのが、「主体性」「責任感」「リーダーシップ」といった言葉はあるものの、実際に何を見ればよいのか分からないという問題です。
そのため、評価項目はできるだけ行動で表すことが大切です。
たとえば、「主体性がある」ではなく、「指示を待つだけでなく、自分で課題を見つけて相談・提案している」と表現します。「リーダーシップがある」ではなく、「メンバーの状況を見ながら、必要な声かけや支援をしている」と表現します。
行動で示すことで、社員にも管理職にも分かりやすい基準になります。
また、KSAOsを意識しながら、評価項目を検討することもポイントです。

4. 評価と育成をつなげる
評価は、結果を決めるためだけのものではありません。社員が自分の現在地を知り、次の成長に向けて行動を変えるきっかけにもなります。
そのため、評価面談では「なぜこの評価なのか」だけでなく、「次に何を伸ばすとよいのか」を話し合うことが大切です。評価結果を伝えて終わりにするのではなく、次の仕事や目標につなげることで、制度が育成の仕組みとして機能しやすくなります。
この時、セルフアウェアネスと階層別に1次、2次、3次フィードバックループを促していくこともポイントとなります。

5. 管理職が運用できる形にする
どれだけ良い制度を作っても、管理職が使いこなせなければ現場には定着しません。評価基準の説明、面談の進め方、評価のすり合わせなど、管理職が迷わず運用できる準備が必要です。
人事制度の見直しの現場では、「制度そのものが悪い」というより、「制度の意味が十分に伝わっていない」「管理職がどう使えばよいか分からない」というケースも少なくありません。制度を作ることと同じくらい、説明し、使い、振り返ることが大切です。

会社の成長と社員の成長をつなぐ人事制度とは、単に処遇を決める仕組みではありません。会社が目指す方向を示し、社員が自分の成長を考え、管理職が日々の育成に活用できる仕組みです。
制度を見直す際には、「社員に何を求めるか」だけでなく、「社員がどう成長すれば、会社の成長につながるのか」という視点を持つことが大切です。
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公開日: 人事制度設計

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