終業時刻後も自己判断で仕事を続けている社員への対応は?

入社日以降、ほぼ毎日終業時刻後も会社に残って仕事をしている社員がいます。

所属長の指示命令ではなく、あくまで本人の意思で仕事をしているのですが、このような場合でも、残業時間として必ず認めなければならないのでしょうか。

回答

結論から申し上げますと、本人の自主的な意思であったとしても、会社側がそれを把握しながら放置している場合は、原則として「残業(労働時間)」とみなされる可能性が極めて高いです。
日本の労働法では、「上司の指示がなかった」という事実だけでは不十分で、「黙示の指示(暗黙の了解)」があったかどうかが重要視されるからです。
現状のまま放置すると、将来的な未払い残業代の請求や、長時間労働による健康障害が発生した際の安全配慮義務違反に問われるリスクがあります。

● なぜ「自主的」でも労働時間になるのか
裁判例や通達では、労働時間は「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されています。以下の状態にある場合、たとえ本人が「勝手にやっている」と言っても労働時間と判断されます。

・ 黙示の指示:上司が残業していることを知りつつ、帰宅を命じない場合。
・ 業務の必要性:割り当てられた業務量が定時内に終わらない客観的な状況がある場合。
・ 事業所内での滞在:終業後もオフィスに残り、業務に関わる作業(メールチェックや資料作成など)を行っている場合。

● 会社が取るべき4つの対応ステップ
放置することは会社・社員双方にとってリスクでしかありません。以下の手順で早急に対応することをお勧めします。

1. ヒアリングの実施(理由の特定)
まずは本人と所属長で面談を行い、なぜ残っているのかを確認してください。
・ 仕事量が多いのか:業務分担の見直しが必要です。
・ スキル不足か:教育やフォローが必要です。
・ 「帰りづらい」雰囲気か:職場環境の改善が必要です。
・ 単なる居残り(生活残業など):厳重な注意が必要です。

2. 残業許可制の徹底
「残業は上司の事前承認がない限り認めない」というルールを改めて周知し、徹底させます。
ポイント:ルールがあるのに勝手に残っている場合は、その都度「早く帰りなさい」と明確な「帰宅命令」を出すことが重要です。これを記録に残しておくことで、会社としての管理責任を果たしている証拠になります。

3. 労働時間の客観的な把握
PCのログ、出退勤記録、打刻時間を照合します。自己申告の労働時間と、実際の滞在時間に乖離(かいり)がある状態を放置してはいけません。

4. 業務命令としての帰宅指示
もし業務上の必要性がないにもかかわらず居残りを続ける場合は、職務規定に基づき、業務命令として退社を命じます。それに従わない場合は、懲戒処分の対象となり得ることを説明し、是正を促します。

まとめ:リスク回避のために
「本人が好きでやっているから」という善意(あるいは見逃し)は、労働基準監督署の調査や紛争時には通用しません。
・ 労働時間として認める場合:適切に残業代を支払う。
・ 労働時間として認めない場合:物理的に退社させ、業務を行わせない。
この二択を徹底することが、結果として社員の健康と会社を守ることにつながります。
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