目標達成に取り組む仕組みづくり

年間の目標設定が、どうしても「やらされ感」が強く、社員の主体的な行動や成長に繋がっていないように感じます。評価のためだけの形式的なものになってしまっている現状を、どうすれば改善できるでしょうか?社員がもっと前向きに、意欲を持って目標達成に取り組めるような仕組み作りのヒントが欲しいです。

回答

目標設定が形骸化し、社員の皆様の主体性や成長実感に繋がりにくいというお悩み、多くの企業で聞かれる課題ですね。
評価のためという側面も重要ですが、それ以上に、目標設定は社員一人ひとりの成長を促し、組織全体の活力を高めるための重要な機会です。形骸化を防ぎ、より意義のあるものにするためのポイントをいくつかご紹介します。

1.目標の「解像度」を上げる
 まず大切なのは、設定する目標の具体性です。
 「売上を向上させる」「スキルアップする」といった抽象的な目標だけでは、日々の業務の中で「具体的に何をすれば良いのか」が不明確になりがちです。これでは行動に移しにくく、達成感も得られません。
目標は、「何を」「いつまでに」「どのレベルまで」達成するのか、可能な限り具体的かつ測定可能な形で設定することが重要です。「何をすべきか(What)」が明確になることで、社員は迷わず行動を起こしやすくなります。

2.「成長」への意欲を引き出す
 目標設定の際に、「自分の能力を証明する(Be-Good)」ことばかりに焦点が当たると、失敗を過度に恐れたり、困難な課題を避けたりする傾向が出やすくなります。
 むしろ、「新しいスキルを習得する」「未経験の業務に挑戦してできることを増やす」といった「成長すること(Get-Better)」自体に価値を置くような目標設定を意識的に促しましょう。このような「成長マインドセット」は、困難な状況に直面した際にも、それを学びの機会と捉え、粘り強く取り組む姿勢を育みます。失敗を責めるのではなく、挑戦を奨励する文化も重要です。

3.行動計画を「予約」する
 目標を設定しただけで満足せず、達成までの具体的な行動計画に落とし込むプロセスを重視しましょう。特に効果的なのは、「もし(If)こういう状況になったら、そのとき(Then)この行動をとる」という形式で、あらかじめ行動を具体的に決めておくことです。
 例えば、「もし水曜日の午後になったら、〇〇の資料作成に着手する」「もし集中力が途切れたら、5分間席を立ってストレッチをする」といった形です。このように行動を事前に「予約」しておくことで、意志力に頼らなくても、目標達成に向けた行動が習慣化しやすくなります。これは「実行意図」と呼ばれるアプローチに近い考え方です。

4.壁にぶつかった時の「捉え方」をサポートする
 目標達成の道のりには、予期せぬ困難やプレッシャーがつきものです。そうした壁にぶつかった時、ネガティブな感情にとらわれてしまうと、前進するエネルギーが削がれてしまいます。
 ここで重要になるのが、出来事に対する「捉え方」を意識的に変えるスキルです。
 例えば、「計画通りに進まない」という状況に対し、「もうダメだ」と考えるのではなく、「計画を見直す良い機会だ」「別の方法を試してみよう」と捉え直す。このような認知的な再評価(Cognitive Reappraisal)を行うことで、ストレスを軽減し、建設的な次のアクションに繋げることができます。面談などを通じて、こうした思考の転換をサポートすることも有効でしょう。困難を乗り越える力、すなわちレジリエンスを高める支援にもなります。

5.進捗の「見える化」と定期的な対話
 目標を設定したら終わりではなく、定期的に進捗状況を確認し、客観的なフィードバックを行う機会を設けましょう。順調な点、課題となっている点を共有し、必要であれば軌道修正を行います。このプロセスを通じて、社員は自分の現在地を把握でき、モチベーションを維持しやすくなります。また、上司や同僚との対話は、新たな視点や解決策を得るきっかけにもなります。

まとめ
目標設定を単なる評価制度の一部として捉えるのではなく、社員の皆様の「成長意欲」を引き出し、「具体的な行動」を促し、「困難への対処能力」を高めるためのコミュニケーション・ツールとして活用していくことが重要です。今回ご紹介した視点を取り入れ、貴社ならではの工夫を加えていただくことで、形骸化を防ぎ、社員と組織双方にとって実りある目標設定・運用プロセスを構築できるはずです。
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公開日: 人事制度設計

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