健康保険、厚生年金保険は加入せず雇用保険だけ加入は出来る?

今年の4月、正社員からアルバイトに契約変更をする者がいます。本人から「健康保険や厚生年金保険は抜けたいが、雇用保険は入り続けていたいのでそういった契約内容にしてほしい」という要望がありました。そのような契約というのは具体的にどのような条件にすればよいのでしょうか?

回答

(回答注:質問された会社は特定適用事業所に該当する会社です)

健康保険、厚生年金保険と雇用保険のそれぞれ加入要件を記載します。
健康保険、厚生年金保険
①週の所定労働時間が20時間以上あること
②所定内賃金が月額8.8万円以上であること
③学生でないこと
④常用的に使用される者(2か月以上の雇用見込みがある事)
※日々雇い入れられる者や季節的業務、臨時的事業に使用される者についてはこちらの回答からは省略します。

雇用保険
A.1週間の所定労働時間が20時間以上であること
B.31日以上の雇用見込みがあること

①の条件とAの条件は同一ですのでBを満たし、尚且つ②か③か④の条件を満たさない場合に雇用保険のみ加入する事となります。
今回のご質問内容で今まで正社員として働かれていたという事から③の学生でない事、という条件は満たしているかと思われますので実際は②か④のいずれかを考える事になるかと存じます。
・所定内賃金を月額8.8万円未満とする
年52週間で12か月とし1月辺り4.3週として計算をしますと時給×週の所定労働時間×4.3週が8.8万円未満になる必要があります。週の所定労働時間を加入要件である20時間ギリギリとした場合は時給×86が8.8万円未満、つまり時給が1,023円以下であれば条件を満たすことになります。
直近、2024年10月に最低賃金が改定されており、例えば東京ですと最低時給は1,163円となっています。つまり東京であれば週20時間の契約をすればどんな方でも②の要件は満たしてしまう事になります。この辺りは地域差がありますので、今現状で最低賃金がいくらであるかにも寄りますし今回のケースですと正社員からアルバイトに契約変更をされるとのことで、アルバイトになったから最低賃金(もしくはそれに近しい賃金)の契約にする、というのも問題になりかねません。過去の給与やアルバイトに変更された際の業務内容を考えて適切な時給を設定する必要があります。
・2か月未満の雇用契約にする
Bを満たしたうえで2か月未満の雇用契約にする、という事になりますので限定的な期間の契約となります。また、2か月未満の雇用契約を結んだとしても、またその次の期間の契約を結ぶのであればそれは2か月以上の雇用見込みがある、という事になりますので④の要件を満たすことになります。退職が決まっている場合などはこういった要件での契約を結ぶこともあり得るとは思われますが、アルバイトに移行してまだ長く勤務をされるという事であれば2か月未満の契約とするのも出来ない事になります。

上記の事から、現実的には最低賃金がまだ900円~1000円台の地域で週20時間以上の契約で尚且つ所定内賃金を8.8万円未満に抑える、という内容の契約が結ぶことが出来るのであれば雇用保険のみ加入する、という要望を満たすことが出来るという回答になるかと存じます。
ただ、今後それぞれの加入要件については変わることがあります。
例えば雇用保険ですとA.1週間の所定労働時間が20時間以上であること、の20時間が10時間に変更されます。(令和10年10月1日以降)
健康保険、厚生年金保険も今後法改正等により①や②の条件が引き下がる(時間が20時間未満でも加入するようになり、8.8万円という金額も引き下がる)ことが予想されます。今の時点では上記の回答通りになりますが、今後時期によって様々条件が変わる事もあるかと存じます。この辺りの法改正や報道される内容などには常に注視し社員、従業員の皆様に適切な内容の案内が出来るように努める必要があります。
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