所得税の定額減税にむけて必要なことは?
本年6月より所得税の定額減税が実施されますが、実際の処理にあたり、どのように準備していけば良いでしょうか。
回答
お問い合わせの件につきまして、所得税の定額減税につきましては、大きく分けて以下の2つの事務処理が発生します。
1.月次減税事務:毎月の給与・賞与での減税処理
2.年調減税事務:年末調整で行う減税処理
まずご留意頂きたいのは、上記の2つの処理は別物であるということです。
例えば、以下に説明する月次減税事務で3万円の定額減税の控除があったとして、これを毎月の給与で引ききれなかった場合に、残った控除額を年末調整で使用することはございません。
年末調整では別途で定額減税額を算出し、それを使用します。月次処理で使用するものと年末調整で使用するものを混同しないようにして下さい。
年末調整の詳細な事務処理につきましては令和6年9月以降に順次公開される予定であるため、ここでは6月以降に実施する月次減税事務についてご説明します。
月次減税事務では、定額減税の対象者(控除対象者)に対して個々の定額減税額を算出し、毎月の給与・賞与で減税処理を行ってまいります。
具体的な手順を以下にご説明いたします。
1.控除対象者の確認
控除対象者となるのは以下の条件にあてはまる方です。
①6月1日現在に在籍している
②扶養控除等異動申告書提出者(甲欄の方)
③国内居住者
なお、6月1日にご退職される場合でも、6月1日時点で在籍している場合は対象となります。また、6月2日以降にご入社された方は月次減税では対象外となり、年調減税のみ対象となります。
2.同一生計配偶者の確認
国内に居住し、生計を一にする配偶者のうち、年間の所得金額が48万円以下の方を控除の対象とすることが出来るため、これを確認します。
この時、扶養控除等異動申告書に記載されている配偶者が必ずしも定額減税の対象となる配偶者と一致しない場合があることにご注意下さい。
【扶養控除等異動申告書の記載と異なる場合】
①配偶者の所得が48万円超~95万円以下である場合
源泉控除対象配偶者ではありますが同一生計配偶者ではないため、定額減税の対象外となります。
②給与所得者の所得が900万円超の場合
源泉控除対象配偶者ではないため扶養控除等申告書には記載できませんが、配偶者が同一生計配偶者であれば、定額減税の対象となります。
3.その他扶養親族の確認
扶養控除等異動申告書に記載されている扶養者のうち、国内居住者の方を控除の対象とすることが出来るため、これを確認します。
この際、定額減税においては16未満の年少扶養者も対象者となりますので、人数に含め忘れることがないようにして下さい。。
また、扶養控除等異動申告書のD欄「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」に記載がある場合はご注意下さい。定額控除は2重に申告することは出来ません。
誤って他の所得者と重複して控除することが無いようにご確認下さい。
上記の2や3において、扶養控除等異動申告書に記載されていないが定額減税の対象となる方がいる場合は、6月の減税事務が行われるまでに「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を提出することで定額減税の適用対象者とすることが出来ます。
4定額減税額の算出
定額減税の対象者が確認できましたら、以下の方法で定額減税額を算出して下さい。
定額減税額=「本人30,000円」+「同一生計配偶者とその他扶養者数の合計」×30,000円
【例】
配偶者と子供2人(合計3人)がいる場合
本人 : 30,000円
配偶者と子供: 90,000円(3人×30,000円)
合計 :120,000円
上記の計算により算出された定額減税額は、その後扶養者の異動があったとしても、年の途中で金額が変わることはございません。
年末調整まではこの金額で月次減税事務を行ってください。
5.給与計算処理
定額減税は本来復興特別所得税の適用前の税額から控除する必要がございますが、月次給与時はその合計額から控除して問題ございません。
通常の給与(賞与)計算を行い所得税額を算出し、その税額から定額減税額をマイナスします。残った金額が実際に控除する所得税額となります。
この時、給与(賞与)の所得税額から定額減税額を引ききれれば月次減税はそれで終了します。
引ききれない場合は、所得税額は0円で計算した上で、残った定額減税額を次月以降に繰り越し、定額減税額が0円になるまで月次減税事務を継続します。
【例】
給与の所得税額が10,000円、定額減税額が30,000円の場合
10,000円-30,000円=-20,000円 →所得税額を0円として計算
20,000円は次月に繰り越し。次月給与(賞与)で月次減税事務を継続
6.給与明細書への記載
給与明細書には、減税した金額を記載する必要がございます。記載の方法に指定は無いので、給与明細に記載項目を追加する、備考欄に記載する等、減税した額が分かるような形で記載して下さい。
7.源泉徴収票への記載
もし年の途中で退職された場合、通常は源泉徴収票に定額減税額を記載する必要はございません。ただし、死亡退職等の理由により年末調整を行った場合は実際に減税した金額および引ききれなかった金額を記載する必要がございますのでご注意下さい。
以上が所得税の定額減税月次減税事務の概要となります。
なお、定額減税は個々人様で適用をうけるかどうかの選択をすることは出来ず、該当者は全員定額減税の適用対象となります。
また、年間の収入が2,000万円を超えることが見込まれる方につきましても、6月1日時点で適用要件に該当する場合は、月次減税の対象となりますのでご注意下さい。
定額減税はその算出にあたり、対象となる方が通常の所得税計算時の扶養者とは異なるため誤りやすい部分もございますが、対象者の確認等について上記を参考にしていただければ幸いです。
1.月次減税事務:毎月の給与・賞与での減税処理
2.年調減税事務:年末調整で行う減税処理
まずご留意頂きたいのは、上記の2つの処理は別物であるということです。
例えば、以下に説明する月次減税事務で3万円の定額減税の控除があったとして、これを毎月の給与で引ききれなかった場合に、残った控除額を年末調整で使用することはございません。
年末調整では別途で定額減税額を算出し、それを使用します。月次処理で使用するものと年末調整で使用するものを混同しないようにして下さい。
年末調整の詳細な事務処理につきましては令和6年9月以降に順次公開される予定であるため、ここでは6月以降に実施する月次減税事務についてご説明します。
月次減税事務では、定額減税の対象者(控除対象者)に対して個々の定額減税額を算出し、毎月の給与・賞与で減税処理を行ってまいります。
具体的な手順を以下にご説明いたします。
1.控除対象者の確認
控除対象者となるのは以下の条件にあてはまる方です。
①6月1日現在に在籍している
②扶養控除等異動申告書提出者(甲欄の方)
③国内居住者
なお、6月1日にご退職される場合でも、6月1日時点で在籍している場合は対象となります。また、6月2日以降にご入社された方は月次減税では対象外となり、年調減税のみ対象となります。
2.同一生計配偶者の確認
国内に居住し、生計を一にする配偶者のうち、年間の所得金額が48万円以下の方を控除の対象とすることが出来るため、これを確認します。
この時、扶養控除等異動申告書に記載されている配偶者が必ずしも定額減税の対象となる配偶者と一致しない場合があることにご注意下さい。
【扶養控除等異動申告書の記載と異なる場合】
①配偶者の所得が48万円超~95万円以下である場合
源泉控除対象配偶者ではありますが同一生計配偶者ではないため、定額減税の対象外となります。
②給与所得者の所得が900万円超の場合
源泉控除対象配偶者ではないため扶養控除等申告書には記載できませんが、配偶者が同一生計配偶者であれば、定額減税の対象となります。
3.その他扶養親族の確認
扶養控除等異動申告書に記載されている扶養者のうち、国内居住者の方を控除の対象とすることが出来るため、これを確認します。
この際、定額減税においては16未満の年少扶養者も対象者となりますので、人数に含め忘れることがないようにして下さい。。
また、扶養控除等異動申告書のD欄「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」に記載がある場合はご注意下さい。定額控除は2重に申告することは出来ません。
誤って他の所得者と重複して控除することが無いようにご確認下さい。
上記の2や3において、扶養控除等異動申告書に記載されていないが定額減税の対象となる方がいる場合は、6月の減税事務が行われるまでに「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を提出することで定額減税の適用対象者とすることが出来ます。
4定額減税額の算出
定額減税の対象者が確認できましたら、以下の方法で定額減税額を算出して下さい。
定額減税額=「本人30,000円」+「同一生計配偶者とその他扶養者数の合計」×30,000円
【例】
配偶者と子供2人(合計3人)がいる場合
本人 : 30,000円
配偶者と子供: 90,000円(3人×30,000円)
合計 :120,000円
上記の計算により算出された定額減税額は、その後扶養者の異動があったとしても、年の途中で金額が変わることはございません。
年末調整まではこの金額で月次減税事務を行ってください。
5.給与計算処理
定額減税は本来復興特別所得税の適用前の税額から控除する必要がございますが、月次給与時はその合計額から控除して問題ございません。
通常の給与(賞与)計算を行い所得税額を算出し、その税額から定額減税額をマイナスします。残った金額が実際に控除する所得税額となります。
この時、給与(賞与)の所得税額から定額減税額を引ききれれば月次減税はそれで終了します。
引ききれない場合は、所得税額は0円で計算した上で、残った定額減税額を次月以降に繰り越し、定額減税額が0円になるまで月次減税事務を継続します。
【例】
給与の所得税額が10,000円、定額減税額が30,000円の場合
10,000円-30,000円=-20,000円 →所得税額を0円として計算
20,000円は次月に繰り越し。次月給与(賞与)で月次減税事務を継続
6.給与明細書への記載
給与明細書には、減税した金額を記載する必要がございます。記載の方法に指定は無いので、給与明細に記載項目を追加する、備考欄に記載する等、減税した額が分かるような形で記載して下さい。
7.源泉徴収票への記載
もし年の途中で退職された場合、通常は源泉徴収票に定額減税額を記載する必要はございません。ただし、死亡退職等の理由により年末調整を行った場合は実際に減税した金額および引ききれなかった金額を記載する必要がございますのでご注意下さい。
以上が所得税の定額減税月次減税事務の概要となります。
なお、定額減税は個々人様で適用をうけるかどうかの選択をすることは出来ず、該当者は全員定額減税の適用対象となります。
また、年間の収入が2,000万円を超えることが見込まれる方につきましても、6月1日時点で適用要件に該当する場合は、月次減税の対象となりますのでご注意下さい。
定額減税はその算出にあたり、対象となる方が通常の所得税計算時の扶養者とは異なるため誤りやすい部分もございますが、対象者の確認等について上記を参考にしていただければ幸いです。
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公開日:
税務・税法