2か所以上の勤務先で社会保険加入要件を満たした場合の対応

弊社で週30時間勤務しているパートナー社員が、ダブルワーク先でも週20時間以上勤務しているとのことで、そちらでも社会保険に加入するように言われていると相談を受けました。昨年の適用拡大に伴い、こういうケースは今後出てくるかと思いますので、一通り整理するためにも、下記について御教示いただけますでしょうか。

 

1.
そもそも、弊社で週30時間勤務の契約をしているパートナー社員が、別の会社で、2社合算すると法定週40時間を超えてしまうような労働契約をすることは可能なのでしょうか?ちなみに、契約の時期としては、当社のほうが先です。

 

2.
このような場合、本人の労働時間40時間超の部分は割増にしなければならないかと思いますが、当社としては先に労働契約を締結しているので、基本的に当社は割増賃金を一切払わないというスタンスで行きたいのですが、それでよいでしょうか。
(もちろん、当社単独で週40時間を超えない範囲での話です。)

 

3.
このケースのように、当社ともう1社で社会保険に加入する場合、具体的に当社は何をすればいいか、ご教示いただけますでしょうか。
また、その場合は、どちらかの社会保険を「主」とするのか決めなければならないとネットで見たのですが、当社が「主」となった場合、及び「主」とならない場合、両方のケースについてご教示いただけますと幸いです。

 

4.
上記のほか、当社が気を付けるべき点がありましたら、併せて教えてください。
一過性の手続きのみの話であるのならば良いのですが、双方の会社同士常態的にやり取りをしなければならないようなことは、できるだけ避けたいと考えています。

回答

ご相談頂きました件につきまして、労働局から確認した事項も含め、以下のとおり回答いたします。

1.
労働基準法32条にて、労働時間を1日8時間以内、週40時間以内に定める必要があると規定されていますが、36条にて三六協定の届出+割増賃金の支払いをすることで、週40時間を超える雇用契約が可能となります。

2.
以下の【兼業・副業Q&A】のP8~10に記載があるとおり、労働時間の通算方法の順番は、①契約上の所定労働時間を足す、②所定外労働が発生した場合、時刻の早い方から足す、ということになります。貴社の場合、シフトによる勤務体系が多いと存じますので、労働局に確認したところ、シフトに関する通算方法の決めは無いのですが、契約が先に行われた方の労働時間から通算で良いと考えるという回答です。
そのため、貴社は基本的に自社の労働時間のみの管理で良いと考えます。
また、基本的に、兼業先のみで通算の時間管理を行ってもらうために(兼業先に貴社の労働時間を周知し割増賃金を支払ってもらう)、【管理モデル】という厚労省案があり、その中で、こちらの労働時間を超える時間は残業代を払ってください、といった通知書を、労働者から兼業先に提出してもらうという方法です。詳しくは、以下【管理モデル】をご確認ください。

【兼業・副業Q&A】
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000964082.pdf
【管理モデル】
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001086159.pdf

3.
雇用保険は主たる事業所で加入なので貴社にて加入すればOKですが、社会保険については本人がどちらを選択するか届出する必要があります。以下に年金機構のURLを添付いたします。
貴社の場合、健保組合に加入であれば、年金と健保とで別々に提出が必要です。会社が行うというより、被保険者の申出になります。保険料は、申出したそれぞれの報酬額を合算して総額を出し、報酬に応じた割合で按分した結果の通知が会社に送付されます。その保険料を該当月の翌月から控除していただく形となります。
「主」となった場合も「副」となった場合も同様です。資格喪失するわけではないので特に会社側の手続きはなく上記を被保険者本人が提出となります。ただ、提出されないと困るので、「主」の会社から提出をするケースが多いようです(兼業先での資格取得届の提出後)。
「2以上勤務者」は算定基礎届や月額変更届の方法も特殊(2以上該当に〇、自社の給料のみ記載)となりますし、役所側も管理が大変なので「2以上勤務」専門のグループがあり「整理番号」が新しくなります。そのため、届が役所に届いた後、「整理番号」の振出を電話で確認されます。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20131022.html

4.
上記2で記載いたしました「管理モデル」例に従い、「労働時間に関する通知書」を従業員を通じて交付しておくと、貴社としては兼業先に貴社の労働時間を通知したという結果が残りますので、割増賃金を支払うか支払わないかは兼業先の問題ということになるかと存じます。
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公開日: 労務管理

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